催眠事件簿 第2話

第2話

 20XX年
 超能力の存在が確認され、地球人口の1割が何らかの超能力を持つ世界
 そしてある日降ってわいたように身につけたその能力を悪用する人間も現れ始めた。
 各国は法律などでそれに対処してきたがそれにも限界があった。
 そして今日も誰かが自らに宿った力で人々を弄んでいる・・・・

 某県某市
 この地方周辺では最大の都市であり、交通の大動脈である○○駅の8番線ホーム、そろそろ夏本番といったところで早朝でありながら汗ばむ暑さであった。
 それは○○駅発の電車がホームに入線した際に起こった。電車が入線し、車両の扉が開いたとき、それを見た乗客らは目を疑った。
 彼らが見たのは吊革に両腕を固定され、両足を開いたまま吊るされている数名の女性たちだった。
 すぐさま県警に通報がなされ、駆け付けた警察官らも、あまりの光景に言葉を失った。吊るされた女性たちは多数の人間に性的暴行を受けたのは見るまでもない。
 彼女らは警察病院で精密検査を受けた結果、催眠能力者による催眠、認識阻害、記憶消去を施されていたことが判明した。
 県警本部の超能力犯罪を担当する部署が中心になって捜査本部が立ち上げられたが、催眠能力者による犯罪はそもそも事件化しにくく、摘発率も低い。
 捜査も暗礁に乗り上げていたところにあるビデオがネット上に公開された。その内容は世間を震撼させ、捜査員を戦慄させた。

 時は警察が事態を把握する22時間ほど前までさかのぼる。

 ○○線の車内、この車両はいわゆる女性専用車両なのだが朝夕のラッシュ中は通常の車両と同じく男女ともに乗車可能で、この日も通勤通学客でごったがえしていた。
 その車内で私は人混みにもまれながら職場に向かっていた。いつもの憂鬱な通勤時間だ。どうにも満員電車というモノには慣れない。
 吊革に捕まってスマホをいじっていると隣からくぐもった声が聞こえてきた。不審に思って周りを見回すと、隣に立っている学生らしき女の子を見た。
 なんだか様子がおかしい。声を押し殺しているがその声は嬌声のそれだった。後ろに立つ男と同じリズムで体を揺らしている。

「えっ、ちょっと、あなた! ちか・・・何してるの!?」

 痴漢とも違うよく見ると二人は性行為・・・セックスをしていた。その後ろに立つ不審な身なりの男と震える女学生。常識のない盛りのついたバカなカップルにも見えない。
 警察に突き出さないと、そう思った時男の方から声をかけてきた。

『いやぁ、実は電車の中でふと催しちゃって勃起が収まらないもんだから電車のトイレで抜いてたんですよ』

 最初は「何言ってんだこいつ」と思った。思ったと思う。思ったはずだ。でもその言葉を聞いた後、なぜかそれを否定する言葉を紡ぐことができない。
 何かがおかしい。あれ・・・? でもまぁこの路線の電車にはトイレが備え付けられてた記憶がある。私も使ったことがある。
 男の人のことはわからないが勃起が収まらないというのは確かに困るだろうし、我慢は良くないし・・・ああ、そういえば・・・

「あら、そうだったんですか? ごめんなさい、わたし、てっきりレイプ犯かとばっかり、ごめんなさい!」

 そうだった。この電車では女性客は男の人の便器だった。あれ? なんで今まで知らなかったんだろう? 疑問がもたげるがまずは間違えたことは謝罪しないといけない。
 そう思って目の前の男に頭を下げた。すると男は

「いえいえ、構いませんよ」

 男は景気よく許してくれた。その後私にこう言ってきた。

「あのーすいません、実はまだ勃起が収まんなくってですね、できればおねえさんのおまんこ便所貸してくれませんか?」

 見ると最初に男とセックスしていた女学生は男の後ろにいたサラリーマンに犯されていた。後ろで並んで我慢していたのだろう。
 彼女のことはお構いなしでサラリーマンは自分の肉棒を突き立てている。彼女はうめき声混じりの喘ぎ声をあげてそれを受け入れている。

「まぁ次の駅で降りますんでそれまでには・・・」
「ああ、大丈夫ですよ。すぐ済みますから」
「それだったらいいですよ」

 まぁさっきの負い目もあるし一度くらいなら・・・そう思って相手の性欲処理の要望を受け入れた。
 まぁすぐに済むだろうと思ったからだ。狭い車内で下着を脱ぎ、吊革を持ったままお尻を相手に向ける。
 あれ? そういえばこういうときなんか言わないといけなかったような・・・ああ、そうだそうだ思い出した。

「どうぞ、私の肉便器マンコをお使いくださいませ」

 それから数時間が経った。あの後も私は知らない男性に股を開いていた。職場には完全に遅刻だ。だけどあの男とセックスをした後なんだか仕事のことなんてどうでもよくなった。
 私はこの電車に設置された肉便器なのだ。今もトイレがしたくて後ろに並ぶ男の人たちを排泄させてあげなくてはならない。
 気が付けば私の周りには何人かの女性が一緒に吊革に吊るされる形で固定され、乗客たちに犯されている。私は何人のオチンチンを受け入れただろう? 思い出せない。
 老若問わず、一生分のセックスをやりつくした気もする。だけど、肉便器だし、なぜか自分でする以上に気持ちいいし何故かやらなきゃと思えるようになってきた。

 すっかり夜更けになった。疲れてきたけれど、未だ終わりが見えない。酔っぱらいの乗客の酒臭さに辟易しつつもセックスの気持ちよさに比べればなんてことはない。
 すっかり体中は精子でまみれ、オマンコもお尻も犯されて精子が垂れ流しだ。床も体液で滑ってヌルヌルする。
 そんなことを考えてるとあの男が声をかけてきた。

「お疲れ様。もう電車も何往復して今や終電だし僕はそろそろ帰らせてもらうよ。今日はありがとうね、お嬢さん方」
「適当にかわいい子10人ぐらい並べてみたけどなかなか壮観だね。写真も残しとくか」

 そう言いながら汚れた私たちを何枚も写真に収めながら何人もの男に犯されてもはや精液垂れ流しのおまんことお尻に無造作にバイブを差し込んでいく。

「それじゃ、僕がみんなのエッチなおもちゃのスイッチを入れたら今日1日でお嬢さんたちが感じた快感が倍になって押し寄せてくるよー」
「明日の朝までそのまんま続けてもらうから、多分今日の記憶は吹っ飛ぶだろうね。まぁそれが目的なんだけど」
「こんだけやらかしたら証拠隠滅しないとねー」

 証拠隠滅・・・? 何を言ってるのだろう? 特になにかまずいことがあるようにも思えないが
 そう考えてるうちに駅についた。あ、ここ、私が降りる駅だ。もう真っ暗だけど、便所になるのが終わりなら仕事に行かないと

「じゃ、今日は楽しかったよ。じゃあね!」

 男はそう言って電車を降りる。「あの、私も降ります」そう言おうとしたところで頭の中で電流が流れるような快感が押し寄せてくる。
 車内は自分とまわりの女性たちの声にならない叫び声に包まれた。そうしてるうちにブレーカーが落ちるような音が聞こえたと思うと、私の思考は一度停止した。

 時間は戻り、某県警捜査本部
 捜査本部の設置されている会議室ではネット上に公開されたビデオをスクリーンに映されていた。
 事件があった車内で撮影されたとみられる映像が記録されていた。パッと見れば少々特殊な趣味のアダルトビデオに見えるかもしれない。
 だが、そのビデオを見ていた捜査員の大半はその内容に対して劣情を抱く以前に内容の異常性にただ言葉を失っていた。
 そのビデオはあの日、始発列車で吊るされて放置されていた女性たちに対して自分たちは車両に設置された肉便器だと誤認させる催眠を施した瞬間の映像だった。
 そして催眠を施したのは彼女たちだけではない。当日、あの電車に乗り合わせた乗客全員に催眠がかけられていたのだ。
 映像は催眠状態の乗客の男性が吊るされた女性を一心不乱に犯す姿が映し出されている。
 あまりにもおぞましい内容にその場では映像は打ち切られたが、彼女たちは終電までの間、何百人という乗客に犯され続け、嬌声をあげる映像が克明に記録されていた。
 その時間は合計で十数時間にも及んだ。映像は全国に拡散し、今もそれをすべて消すことはできていない。
 それから一週間の間にわかったことは、映像に映る男性たちや、あの日事件のあった車両にかかわっていた乗客や鉄道関係者は全員催眠状態にあったことだけであり、現行法では催眠状態下にあった人間の犯罪行為は犯罪を自ら行ったとは定義されず罰せられないということだけであった。
 長時間、大人数の人間を催眠で支配下に置くほどの能力を持つ犯人の目星はつかず、未だにこの事件の解決の糸口は見えない。

< 続く >

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