※この作品は生成AI「ChatGPT4o」を利用して製作しています
上履きに履き替えようとしていたところに、聞き慣れた声が響いた。
「おはよーっ、澪ちゃん!」
弾けるような声と一緒に、小さな足音が近づいてくる。
顔を上げると、ピンク色の髪を揺らしながら、ひまりが笑顔で手を振っていた。
「あ……おはよう、ひまりちゃん」
自然と笑みがこぼれる。ひまりの元気な挨拶は、いつだって一日の始まりを明るくしてくれる。
――いつも通り。そう、いつも通りの朝のはずだった。
(……でも、なんか……)
ほんの少し、胸の奥がきゅっとした。
髪に差したヘアピン。スカートの裾の揺れ。笑顔の隙間から覗く白い歯。
どれもいつものひまりなのに、今日だけはそれが、やけに目を引いた。
(なんだろう……いつもより、ちょっと……可愛い……?)
ひまりの笑顔を見て、鼓動がトン、と跳ねた。
視線がつい、制服のシャツのラインに滑る。
胸のふくらみを感じ取ってしまった自分に気づいて、そっと目をそらす。
(なに考えてるの、私……)
でも、どこかで「このくらいなら、まあ……普通、だよね」と思ってしまっていた。
ひまりは私にとって、大切な友達。可愛くて、明るくて、甘えてくれる子。
ずっと、特別な存在。そう、ずっと前から、好きだった。
だからきっと、今日たまたま、ちょっといつもより可愛く見えただけ――そう思おうとした。
「ねえねえ、澪ちゃんっ」
ひまりが制服の袖をふわっと揺らしながら、嬉しそうに言う。
「今日ね、私日直なの! 出席簿、職員室まで取りに行くんだけど、よかったら一緒に来てくれない?」
少しだけ袖を引っ張られる。
その小さな手の感触に、身体の奥が一瞬だけびくんと反応したのを、自分でも驚いた。
「……うん。いいよ」
どうしても断れなかった――いや、むしろ断りたくなかった。
「ありがとーっ! じゃ、行こっ!」
ひまりはスキップみたいな足取りで、くるっと先に立つ。
私はその背中を追いかける。
なぜだか、今日のその歩き方すら、目が離せなかった。
「先に行ってるね~!」
ひまりちゃんがスカートの裾をふわっと揺らしながら、軽やかに階段を駆け上がる。
私はその少し後ろを、いつものように静かに歩いていた。
それなのに――今日は、何かがおかしかった。
ふと目に入ったのは、彼女のスカートの内側。
ほんの一瞬、ひらりとめくれたそのすき間から――
(……っ)
ピンクの下着。リボンがひとつ、ちょこんとついていた。
それだけのことなのに――
強烈に、目に焼きついた。
心臓がどくん、と跳ねた。
足元がふらつくほどの衝撃。思わず階段の手すりに触れた指が、ほんの少し汗ばんでいた。
(かわいい……)
最初に浮かんだ感想は、それだった。
けれど、すぐにその「かわいい」は、どこか別の感覚に変わっていった。
(……もっと見たい)
心の奥で、そんな言葉がささやかれた気がした。
そして同時に――下腹部が、きゅっと熱を帯びるように引き締まった。
(……え……?)
あたたかく、くすぐったいような感覚が、じんわりと広がっていく。
制服の内側、肌の奥が、見られないところでそっと反応しているのがわかる。
(私……ひまりちゃんに、こんなふうに……?)
たしかに、ずっと好きだった。
でもそれは、友情だと思っていた――そう思っていた。
それが今、目の前を歩くスカートの奥を見ただけで、
**“もっと見たい”“触れてみたい”**とまで思ってしまった自分に、私はどうしていいかわからなかった。
どこか締めつけられるような息苦しさと、
その奥にじわじわと溶けて広がっていく、甘くて熱い感覚。
逃げたいのに、逃げたくない。
知らなかった感情が、身体の底でうごめいていた。
ひまりちゃんはそんな私に気づくこともなく、
「あとちょっとー!」と笑いながら、2階の踊り場へと上がっていく。
その背中を、私はまるで宝物でも見るように、目で追いかけてしまっていた。
「春野、次の問題。答えてみろ」
先生の声に、私も一瞬反応した――けれど、呼ばれたのは、ひまりちゃんだった。
ガタッと音がして、ひまりが机から上体を起こす。
振り向いたわけじゃないのに、なんとなく私の視界の中で彼女が動いたのが分かった。
(……大丈夫かな、さっき眠そうだったし)
そう思いながらちらりと目を向けた、そのとき。
「はいっ……えっ……?」
その声に、私は違和感を覚えた。
明るいひまりの声が、急にしぼんだみたいな、変な音だった。
立ち上がった彼女が、スカートの前をぎゅっと押さえているのが見えた。
(……?)
教科書の上に置いた手が、自然と止まる。
ひまりちゃんの脚が、きゅっと閉じられていた。
姿勢が不自然で、まるで……なにか、すごく恥ずかしいことをしてしまったみたいな様子。
(……なに、どうしたの……?)
私の席からだと顔は見えない。でも、背中から伝わってくる。明らかに――おかしい。
もぞもぞとスカートを押さえたまま、目線を泳がせている。
そして、ちらりと横――佐久間くんのほうを見て……
――なぜか、視線が一瞬だけ重なったような気がした。
「春野? 聞いてるのか?」
「ひゃっ!? は、はいっ、ご、ごめんなさい……!」
声が上ずっていた。こんなひまりちゃん、初めてだった。
もしかして、体調でも悪いの? 朝はあんなに元気だったのに……。
でも、答える声はかすかに震えていて。
「い、いえっ! えっと……た、たぶん“下から二、レ点一”だと思いますっ!」
「……まあ、合ってるな。次、佐久間」
先生の声が流れて、ひまりはホッとしたように腰を下ろした。
その瞬間、息をつくように、スカートの前をさらにぎゅっと押さえた。
(なに……があったの……)
理解はできなかった。でも、目が離せなかった。
彼女の動揺、頬の赤み、背筋のこわばり――
そして、それを全部必死で隠そうとする姿が、私にはたまらなく愛おしく映ってしまった。
見てはいけない。
でも、見ているのは私だけ――
その事実が、妙に甘く、強く、胸の奥に突き刺さる。
ひまりちゃんはずっと落ち着きがなかった。
脚をそろえたまま、机に縮こまるようにして座って、
ときどき息を殺すようにスカートの前を押さえている。
(……大丈夫? ほんとに、なんで……?)
心配なのに、それ以上に、目が離せなかった。
そのときだった。
「あっ、ごめん……」
佐久間くんの消しゴムが、ころん、と落ちた。
それだけなら、何も思わなかった――はずだった。
でもそれが、よりによって、ひまりちゃんの脚の間に転がっていって、
彼女がそれを見た瞬間、顔を真っ赤にして叫ぶように言った。
「ま、待って! わ、私が拾うからっ!」
その声に、思わず息を飲んだ。
ひまりちゃんは、スカートの前を両手で押さえながら、机の下に身をかがめる。
体勢はぎこちなくて、でもとにかく必死で。
まるで、その先に“絶対に見られたくない何か”があるみたいに――
(……そこにあるの、知ってる……)
私は、今朝のことを思い出した。
階段を上っていくひまりちゃんの後ろ姿。
ひらりとめくれたスカートのすき間から、ピンク色の下着に小さなリボンがついていたのを、
確かに――私は見てしまっていた。
(……でも今、見えない……)
ひまりちゃんがスカートを押さえて、必死に守っているその中に、
さっき見たあれが、今もそこにあるのを――私は知ってる。確かに、そこに“ある”ことを。
だけど、今は見えない。
見えないのに、隠そうとするひまりちゃんのその仕草が、
まるで自分から「ここを見ないで」と訴えているようで、
逆に、そこに意識がどんどん吸い寄せられていく。
(……だめ……えっちすぎる……)
机の下に差し込まれた腕、揺れる前髪、
ふとももを閉じたままの太ももがかすかに震えてる。
その間に、あれがある。見えてないのに、そこにあるのがわかる。
それだけで、喉が乾いた。
お腹の奥がじんわりと熱くなる。
(どうして……こんなに……)
私は、ひまりちゃんのあのパンツの色も、リボンの形も、今ならはっきり思い出せる。
それを、彼女が必死に隠してる。見えないようにしてる。なのに――
(見えないのに、こんなにドキドキしてるの、なに……?)
鼓動が早くなって、息が浅くなった。
目を逸らさなきゃいけないのに、逸らせなかった。
そして、佐久間くんの「ありがと」という声が聞こえたとき――
私は、自分の中の“見てはいけない感情”が、どうしようもなく膨れ上がってることに気づいた。
(……私……変だ……でも、もう……止まらない……)
チャイムが鳴ったあと、教科書を鞄にしまいながら、私はちょっとだけそわそわしていた。
(次、体育……)
廊下に出ると、制服のまま足早に更衣室へ向かう女子の列ができていた。
私も流れに乗りながら、時々、きょろきょろと周囲を見回してしまう。
(……ひまりちゃん、まだ教室にいた? それとももう着替えに行ったのかな)
そんなの、いつもなら気にしない。
でも今日は――どうしても、先に会いたかった。
少しでも話せたらいい。
笑ってくれたらうれしい。
でも、それだけじゃない。
(……着替えるところ、見たい……かも)
そう思った瞬間、自分の中で何かが引っかかった。
そんなこと考えるなんて、今までなかったのに。
(な、なに考えてるの……?)
顔が熱くなる。
でも、頭のどこかでは、はっきり自覚していた。
制服の下にある、ひまりちゃんの白い肌とか。
細い腰とか、胸の形とか――今、どうしても見たくてたまらなかった。
でも、それが“普通じゃない”ことも、ちゃんと分かっていた。
(ちがう、ちがう……あんなの、見ちゃだめ……っ)
足が早まる。
でも気持ちは落ち着かない。
私はまっすぐ、女子更衣室を目指していた。
ひまりちゃんを探すため――いや、たぶん、それだけじゃない気持ちで。
(ひまりちゃん……居なかったな……)
更衣室の扉を引いて、廊下へ出た瞬間。
ちょうど向かいの男子更衣室から、佐久間くんが出てきた。
「あ、綾瀬さん。春野さんなら、もう先に行ったよ。日直だからって」
彼は、私が何も言っていないのに、そう言ってくれた。
いつもの、落ち着いた声。表情も、変わらない。
「……そうなんだ。ありがとう」
私は小さく会釈をして、そのまま廊下を歩き始めた。
(……会えなかった)
それが、想像していた以上に残念だった。
ひまりちゃんと話したかったのはもちろん、でも……それだけじゃなかった。
(……私……なに考えてたの……?)
更衣室に入る前、私は――ひまりちゃんの着替えが見たいって、少しだけ思っていた。
制服を脱いで、シャツをたくし上げて、
ブラジャーをつけて、体操服に袖を通す……
その一連の動作を、こっそりでいいから、見たい。
彼女の肌、髪の流れ、下着の色――全部を、目に焼き付けたいって。
(そんなの……私、バカじゃないの……?)
頬がじんわり熱くなる。
自分がそんなことを考えていたなんて、信じられない。
でも、そう思ってしまっていた。間違いなく。
ひまりちゃんの今朝見えた下着――ピンク色の、リボンのついたショーツ。
それが、体操服の下にもあるのだと思うと、
そしてきっと、上もおそろいで――と思ってしまうと、
(だめ……また想像しちゃってる……)
下腹がじんわり熱を持つ。
あの布の感触。その奥にある、柔らかい肌。
それが、今――ひまりちゃんの身体に、ぴったり貼りついている。
(見えないのに……全部、わかる気がする……)
体操服を着た彼女が、どんなふうに見えるのか。
胸のふくらみ、シャツ越しの輪郭。揺れるライン。
自分がその一つ一つを“見る”ために、運動場へ向かっているのだと思ったら――
身体の奥が、きゅっと苦しくなるほどに、熱かった。
運動場に出た瞬間、私の目はまっすぐ、ひまりちゃんを探していた。
すぐに見つかった。
白いシャツに濃紺の短パン、髪をひとつに結んで、軽く跳ねながら準備運動をしている。
(……想像してた、より……)
目が、離せなかった。
(ずっと、ずっと……かわいい……)
彼女の体操服姿は、私の想像の何倍も、何十倍もえっちだった。
跳ねるたびに、シャツの中でふわっと上下する胸。
汗がにじんできて、薄くなった布地が肌に張りついて――
それによって、下着のラインが、ほんのかすかに浮かび上がっていた。
(あの下に、今朝見えた……あのピンクの……)
脳裏に、あのリボンがよぎる。
ショーツだけじゃない。きっと、ブラもおそろい。
その形も、大きさも、張りついたシャツの上から想像できてしまう。
(……わかる……すごく、はっきり……)
ひまりちゃんの胸は、他の子たちと比べて明らかに豊かで、
それが体操服によって無防備にさらけ出されていた。
揺れるたびに、呼吸をするたびに、その存在が誇張される。
まるで、「見て」と言われているみたいに。
(だめ……ずっと、見ちゃってる……)
視線を逸らそうとするたびに、また戻ってしまう。
そしてまた、跳ねるたび、シャツがぴたりと肌に貼りついて、曲線を描く。
(えっち……こんな、えっちだったんだ……)
あまりに無防備で、でも本人は全く気づいていない。
だからこそ、その姿がたまらなく可愛くて、愛おしくて、
そして――えっちだった。
運動場の中央で、太陽の光を浴びて、きらきらと汗を浮かべている彼女。
スキップみたいな軽いステップで走り出して、髪が揺れて、胸が揺れて――
私は、呼吸を忘れて、ただただ見つめていた。
(……私……こんなに、ひまりちゃんのこと……)
胸がきゅうっと締めつけられる。
息苦しいほどに、身体が熱くなる。
でも、それを誰にも言えない。ただ、見ていることしかできない。
私は、今日の体育の時間、一秒たりとも目を逸らすことができなかった。
放課後。
気づいたときには、もう階段を上っていた。
(なんで……?)
教室のカバンも持ったまま。部活にも寄らず、まっすぐ旧校舎へ向かっていた。
自分でも理由はわからない。ただ、なぜか――「ここに行かなくちゃいけない」気がしていた。
旧校舎の三階。一番奥の、使われていない教室。
扉を開けると、そこにはひとり、誰かがいた。
佐久間くん。窓際の逆光の中で、静かにこちらを見ていた。
「来てくれたんだね。ありがとう、澪さん」
その声を聞いた瞬間、私の中で何かが……音もなく、ほどけた。
胸の奥が、ふわりと温かくなって、視界が揺れる。
(……あれ……)
次の瞬間、頭の奥に――記憶が、どっとあふれ出した。
図書室で交わした他愛ない会話。
「催眠に興味ある?」と笑っていた彼の顔。
「ひまりちゃんのこと、好きなんだよね?」と囁かれて、こくりとうなずいた自分。
そのあとに続く、落ち着いた声と、やさしい暗示。
「君は友達のひまりちゃんのことが大好きだよね……その気持ちは本当はとっても大きい……」
(あ……全部、思い出した……)
ひまりを目で追って、息苦しくなって、夜に思い出してドキドキして――
胸が苦しくて、目をそらせなくて、それでも幸せで。
全部、催眠だった。
本当は、私は……ひまりちゃんのことを、ただの仲のいい友達だと思ってたのに。
「……ひどい」
声が震えた。頬が熱かった。
恥ずかしくて、くやしくて、情けなくて……でもそれ以上に。
(……楽しかった……)
胸の奥が、じわっと甘く満たされていく。
ひまりちゃんを好きだったあの時間。
目で追っていたときの、ときめきや、熱や、苦しさすらも――
全部、たまらなく楽しかったって、心が覚えていた。
「……消えちゃうの、ちょっともったいないかも……」
ぽつりと、つぶやいたその言葉に、
蒼真くんが、ふっと笑った。
「じゃあ、もし君が望むなら――」
彼の声が、甘く、静かに重なった。
「自分の部屋のベッドの中でだけ、あの気持ちを思い出すことができるようにしておこうか」
「……っ! バカじゃないの!? なに言ってるの!?」
思わず怒鳴った。顔が熱くなる。
そんなの、絶対に、絶対に――
でも、胸の奥が、ふっと跳ねた。
さっきまで消えていたはずの、ひまりちゃんへのドキドキが――なぜか、もう一度ぽつんと灯った気がした。
蒼真くんは、何事もなかったように肩をすくめる。
「それとも、写真、いる?」
「……は!? な、なにそれ、最低っ!! そ、それは……っ」
(……い、いらない……って言えない……!?)
口を噤んだまま、私はどうにかして言葉を探そうとした。
でも、目の前の彼はただ、やさしく笑っていた。
催眠のことも、私の全部も、すっかり見透かしたような顔で。
「ひまりちゃんの、写真……?」
蒼真くんが、スマホを軽く持ち上げる。
画面は見せてこない。ただ、やさしい声で静かに言う。
「この教室で、彼女に催眠をかけたときの写真。トランス状態のね」
――トランス。
その単語を聞いた瞬間、
朝からのひまりちゃんの姿が、フラッシュバックする。
授業中、震えながらスカートを押さえていたこと。
消しゴムが落ちたとき、過剰なほど取り乱していたこと。
体育の時間も、どこか妙に動きが硬くて、それでも笑顔を取り繕っていたこと。
(……もしかして……)
「……ひまりちゃんも……催眠、かけられてた……?」
ぽつりと、呟くように口から漏れた。
蒼真くんは答えなかった。ただ、どこか愉しげな笑みを浮かべていた。
(やっぱり……そうだよね……)
私だけじゃなかったんだ――
彼女の今日の挙動の、すべてがつながっていく気がした。
でも、その中身がなんだったのかまではわからない。
ただ……その“とろけていた”瞬間を、彼は写真に残しているということだけは、理解してしまった。
「……見てみる?」
彼が、何気ない声で提案する。
私はとっさに――
「や、やめてっ!! ひまりちゃんが……かわいそうでしょ……!」
叫ぶように遮ってしまっていた。
自分でも、なぜこんなに反応してしまったのか分からない。
だけど、胸の奥がズキズキしていた。
写真の中の“知らないひまりちゃん”を、見たいと思ってしまった自分が、怖かった。
蒼真くんはスマホを伏せたまま、静かに言った。
「ちゃんと断ってくれて、よかった」
その声があまりにも普通で、逆に腹が立った。
「……最低」
それでも、言い返す声は弱かった。
だって今でも、頭の中では“写真の中のひまりちゃん”が、どんな顔をしているのか、想像してしまっていたから。
でもその直後――彼が、さらりとした声で言った。
「じゃあ、もうひとつ。
これから君は、僕が指を鳴らすたびに、本当の気持ちを口にしてしまう。嘘は、つけなくなるよ」
「……は?」
反射的に目を見開いた次の瞬間、
パチンッと、指の鳴る音が教室に響いた。
「……っ! ちょっとだけ見たいとは思ったけど、別にやましい意味は……なかった、とは言えない……っ!」
喋ってる!? わたし今、喋ってた!? 言った!? ほんとに!?
「な、なにこれ!? なんで口が勝手に――」
「うん。そういう暗示だから」
サラッと言うな!! っていうか、もう!
もう絶対喋らない、口を閉じてれば問題ない――
そう思った、その瞬間。
パチンッ
「ひまりちゃんの……胸……ずっと見てた……」
「~~~っ!!??」
ぎゅっと口を押さえた。
全身が爆発しそう。頭から足先まで、ぜんぶが熱い。
「や、やめて、ほんとにやめて……っ!」
「やめないよ。まだ出てくると思うから」
蒼真くんの指が、もう一度――
パチンッ
「走るたびに揺れてて、すごく……柔らかそうで……おそろいのブラも……たぶん、えっちなんだろうなって……っ!!」
「言ってない!! それ私じゃない!! 催眠のせい!! 催眠のせいだから!!」
叫んでも、叫んでも、蒼真くんはただ笑ってる。
指がまた上がる。私はもうパニックだった。
「ま、まってっ、ほんとに、これ以上はっ……!!」
パチンッ
「階段で見えたパンツ、頭からずっと離れなくて……スカートめくりたくなったの……っ!!」
「~~~~~~~~~っ!!!!!!!!!」
全身真っ赤だった。
恥ずかしすぎて、言葉なんてもう何も出てこなかった。
でも――なぜか、心のどこかが、ほんの少しだけ……すっきりしていた。
教室の中には、もう私の悲鳴と、蒼真くんの指の音しか響いていなかった。
全部喋らされた。
見てたことも、考えてたことも、全部、ぜんぶ――
口が勝手に暴露して、私はどうしようもなくぐしゃぐしゃだった。
「……もう、いいでしょ……」
声もかすれていた。涙が出るかと思った。
でも、彼はまだ終わらせてくれなかった。
「じゃあ最後に――」
蒼真くんが、スマホを持ち上げる。
そして、にこりと笑う。
「写真、欲しいよね?」
「~~っ!! いらないっ……そんなのいらないっ……っ!!」
パチンッ
「見たい!! すごく見たい!! 無防備なひまりちゃん、どんな顔してるのか知りたい!! とろけた顔見て、私もトロトロになりたいっ!!」
「……っっっ~~~~~~~~!!!!」
口を押さえても、手のひらの中で声が震えていた。
自分の中のいちばん奥の、
誰にも見せちゃいけない場所が、
今、声になってしまった。
蒼真くんは、スマホを伏せたまま、にこにこと笑っていた。
「うん。ちゃんと正直になれて、えらいよ。澪さん」
「だ、だいっきらい……っ!!」
泣きそうになりながら、私は叫んだ。
でも――その心の裏側で、
さっきの言葉が、自分の声が、ぐるぐると何度もリピートしていた。
(……見たいって……言っちゃった……)
全編違う話かと思ったら群像劇っぽい
大好きという感情に振り回されちゃう澪さんかわいい
群像劇ですねー。催眠は別視点での描写に良さがあると思っているので、よく使うスタイルです。
むらむらしてる女の子ほどかわいいもん無いですからね。ほんと。