─ 嵐前 ─ 雨桶市全域にかかった霧は、朝日に照らされ緑色に光っている。道行く人々はその不自然さに疑問を表すこともなく、歩を進めている。 「ああっ・・・」 不意に一人の女性が喘いだ。彼女の顔は上気し、口の端からは涎が
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市外にある霧に包まれた古い洋館の前に、一台のトラックが止まり、二人の男と一人のメイド服の女性が降りてきた。
「あんた達、本当にこの‘悪霊の館’に住むのかい?」
催淫師 妖染 崩山(4)
妖染 ─ 崩山(4) ─ 柏山大附属高校の運動場では、体育の授業でラクロスが行われていた。赤と白のどちらのチームの選手も全員下着姿であった。そして二チームが対戦している間、他の生徒達は腰を下ろして見学していた。 「ゴー
もっと読む催淫師 妖染 崩山(3)
妖染 ─ 崩山(3) ─ 三人は時間が止まった教室を出た。授業が始まっている為、当然廊下には誰もいない。 「どこへ行くの?」 真弓が尋ねても啓人は答えず、どんどん先へ歩いていく。やがて立ち止まると、二人の方を向いた。
もっと読む催淫師 妖染 崩山(2)
妖染 ─ 崩山(2) ─ 「もう良いぞ」 啓人は不意に、腰を引いた。 「あ・・・」 一心不乱に舐めていた真梨江は、不満げな顔をした。それを見た啓人は、例の笑みを浮かべた。 「そんなに気に入ったのか?」 からかう言葉
もっと読む催淫師 妖染 崩山(1)
妖染 ─ 崩山(1) ─ 「えー・・・最後に言いたい事がある」 担任の男性教師はここで言葉を切り、教室全体を見回した。今はSHRが行われているのである。勿体ぶって咳払いを一つすると、担任は口を開いた。 「最近、物騒にな
もっと読む催淫師 暗躍編(6)
暗躍編(6) 「此処ね」 廉霞はとある町にある、空き家の前に立っていた。何やらおかしな連中が住み着いて、近隣の者に被害が出ている、警察の手にもおえないから何とかして欲しいという要請を受けての事である。 (確かに妖気を感
もっと読む催淫師 暗躍編(5)
暗躍編(5) ピシャッという音が、始まりの合図だった。 「あっ・・・うんっ・・・」 清華は男を玄関で受け入れ、仰け反った。 「んくっ・・・はっ・・・」 啓人は浅く、ゆっくりと動き出す。清華はその啓人に、しがみついた
もっと読む催淫師 暗躍編(4)
暗躍編(4) 二人が入ったのは、六畳の和室であった。そこには机が一つあるだけで、片付いているというよりは他に何もなかった。 「ここは・・・?」 尋ねる啓人の声にも、不思議そうな響きが含まれている。ゴミどころか、塵一つ
もっと読む催淫師 暗躍編(3)
暗躍編(3) 今は昼休み。転校生はヒーローという図式が見事に当てはまっている啓人は、他の生徒の勧誘や質問責めから逃れ、屋上にいた。 「ふう・・・やれやれだ」 さしもの啓人も、あの圧倒的なパワーにはてこずった。力をまだ
もっと読む催淫師 暗躍編(2)
暗躍編(2) 白笠は二人の仲間と共に歩いていた。 「ち・・・何でこんなに催淫蟲がうるさいんだ?」 「連中が言ってる事、正しいんじゃないのか?」 仲間の一人がたしなめるように言う。 「別に俺は反対してるわけじゃないぜ。
もっと読む催淫師 暗躍編(1)
暗躍編(1) 日曜日、全員揃うと同時に啓人が宣言した。 「今日皆で出掛けるぞ。但し!魅矢は留守番!」 「え?何処へ?」 「山登り♪」 ハテナマークを飛ばす理乃だったが、 「さっさと用意しろ」 と急かされ、慌てて着替
もっと読む催淫師 始動編(2)
始動編(2) 冴草啓人は雨桶市内のとある高級マンションの部屋にいた。部屋の住人である美女はベットの上で荒い息をしていた。己の欲望をあと一歩で満たせるという段階に至っても啓人は少しも悠然とした態度を崩さない。目の前にとび
もっと読む催淫師 始動編(1)
始動編(1) 割と格好良い一人の少年が市役所の建物を見上げていた。彼は昨日この雨桶市にやってきたばかりなのである。だからと言って、別に住民登録をしに来たという訳ではない。 「思ってたよりも・・・大きいな」 その少年、
もっと読む催淫師 序章(改)
四月も終わる金曜日の夜、雨桶市外にある霧に包まれた古い洋館の前に、一台のトラックが止まり、三人の人間が降りて来た。 「あんた達、本当にあそこに・・・あの‘悪霊の館’に住むのかい?」 まず口を開いたのは、三十代後半と思
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