クリスタルの中庭 第四話

第四話

(14)

 夜、珍しく家の電話が鳴った。この屋敷の番号を知る者は、数えるほどしかいない。

「もしもし。私だ」

 それはあの催眠術師の声だった。僕にこの生活をもたらした、あの男だ。

「入金を確認した。一言、お礼が言いたくてね。…ただ、少し金額が多かったようだ。余計な気を回したのなら無用だ。これはビジネスなんでね」

 『口止め料』とでも思ったのだろうか。

「そんなんじゃありませんよ。僕の感謝の気持ちです」

「そうか。それならありがたく受けとっておくが……。どうした?感謝という割には、声が沈んでいるじゃないか」

「いや、大した事ではありませんよ」

「ひょっとして夜の生活がうまくいっていないのか?事前に私の方で程よく淫らになるよう、調整しておいたつもりなのだが」

「調整?」

 僕は男の言葉を聞き返した。

「ああ。君が楽しめるよう、下ごしらえをしておいたんだ。特に妹の方は、かかり方が良かった」

 では姉妹が示した反応も、自然なものではなくこの男の手によるものなのか。僕は奇妙な挫折感を味わっていた。結局、僕が自分でやった事など何もない、という事か。改めて考えてみれば、それは当然なのだろうが。

「どうした?急に黙って」

「いいえ。…ただ、人間の欲望には際限がないんだなって」

「それは真理だ。だが、どうしてそう思ったんだい?」

「夢にまで見ていたあの子達の心と体は手に入れました。幸せですよ。もうこの幸せは手放せない、と断言できる程にね。ただ、実際に手に入れてみると、その先が欲しくなってきたんです。彼女達の本当の愛情、というのかな……。こんな事をしておいて、言う資格なんて無いと、わかってはいるのにね」

 僕はいつに無く饒舌だった。こんな話ができるのは、あの胡散臭い男しかいない。あの男に不思議な親しさを感じていた。

「本当の愛情、ねえ」

 男は受話器の先で僕の言葉を繰り返した。

「そんな物あると言えばあるし、無いと言えば無い。…私は長い事、人の心と向き合ってきた。様々な人間の、様々な心に触れてきた。そこで悟ったのは、人の思いには方向と強弱、つまりベクトルしかない、という事さ。…カルト教団に入信した人間がいた。教祖に食い物にされ、家庭は崩壊し、人生は滅茶苦茶になった。傍目から見れば不幸そのものなのだが、本人にはその自覚が全くない。むしろ自分は正しい人生を歩んでいると思っている。では、どうやって正しいとか間違っているとか決めるのだろうな」

 男は変に悟ったような事を口にした。

「彼女達を手に入れるのに、方法は問題じゃない。結果という果実だけが問題だ。もし君が私に依頼をしなかったならば、別の男が別の方法で彼女達を手に入れていた事だろう。二人同時にとはいかなかっただろうがな。ただ、それだけの事さ」

「でも、僕は……」

「結局、君自身の問題なのだろう?彼女達は君を恨んでいるわけではない。二人の両親もそうだ。ただ、君だけが自分に罪悪感を覚えている。今更そんなものを感じても仕方が無い、というのにだ。今、君にできる事は二人の面倒を見る事だけだ。それは、何があっても変わらない」

「ええ。わかっていますよ」

 僕は電話を切ると、小さくため息をついた。
 男の言葉は、ズシリと重かった。姉妹の問題ではなく僕の心の問題、か。それでもやっぱり贅沢な話なのだろうな。こんな事をした上で、恨まれたくない、と思っている。もちろん葉月達は僕を恨んでなどいない。しかしそれは催眠術のおかげだ。そんな事あってはならないが、もし術が解ければ彼女達は、僕を決して許さないだろう。

 結局、僕は金で葉月達の心と体を買ったのだ。それも大勢の人の憎しみと悲しみが滲んだ金で。どこまで僕は他人を不幸にすればいいのだろうか。
 今の僕は幸せだ。幸せだからこそ、違和感がある。僕に幸せになる資格などあるのだろうか。

 僕はメイド姉妹の姿を思い浮かべながら、もう一度深くため息をついた。

「新しいメイド服が届いたんだ。今日からはこっちを着てほしいな」

 僕は二人に、新しいメイド服を支給した。二人は新しいメイド服に着替えると、早速僕の前に現れた。

「?別に今までのと変わった様子はないけれど」

 あちこちを眺めながら、不思議そうに葉月は言った。確かにデザイン的には今までのものと変わらない。ただ付け襟の正面に、金属の輪が付いている所が違うだけだ。まるで首輪のようなデザインだった。

「このメイド服には、新しい機能があるんだよ。胸のパーツを外す事ができるんだ」

「はぁ?」

 葉月は絶句している。

「ほら、胸の部分の下のラインにファスナーが付いているだろ?これを動かすと外す事ができるんだよ」

「あのねえ。私達は下着を着けていないのよ」

「うん、知っている」

「これ外したら、胸が丸見えになっちゃうじゃない。四六時中、そんな格好のままでいろって言うの?」

「……」

 僕は頬をかいた。まあ、それが狙いでこの服を作らせたのだが。
 二人の胸やアソコが見たいと思い立った時、ちょっと顔を動かせばいつでも即座に見る事ができる。それはなんと素晴らしい事だろうか。

「…それともこの胸のパーツを外した状態が、このメイド服の正しい着方なの?」

 心配そうに僕を見て、葉月が言った。

 そうだ、と僕が言えば二人のメイド服の常識が変わる。胸が丸見えのメイド服を当然だと思い込み、乳房を揺らしたままメイドの仕事に取り組むだろう。胸が丸見えでノーパンの美人メイド姉妹。それは、僕の妄想の最終段階だった。しかしその一言を、僕はどうしても言う事ができなかった。

「…いや、そうじゃない。付けていても、外しても、どっちも正しい着方なんだ」

 葉月が安堵の表情を浮かべる。

「なんだ。それならわざわざ外す人なんていないでしょ。恥ずかしい。ね、日奈」

「えっ、うーん」

 話を振られた日奈の方は、何か思案している。心ここにあらずといった具合だ。ふと、日奈の瞳が僕を見据えた。

「ご主人様。ご主人様は、胸が見えていた方が嬉しい?」

「ちょっと、日奈。何を言い出すのよ」

「ねえ、答えて。ご主人様」

「…そりゃ僕はいつも二人の裸を見ていたいから、胸も丸見えの方が、嬉しいよ」

 僕がそう答えると、日奈は少し考えて、メイド服のファスナーに手を伸ばした。ファスナーは胸の下を左右に走っている。ファスナーを動かし、胸を覆うパーツを外す。メイド服のまま、膨らみかけた日奈の胸は丸見えになった。

「はい、ご主人様」

 外した布を僕に差し出す。その布は、日奈の乳房の暖かさが残っていた。もう付けるつもりはないらしい。
 それは想像していた以上にいやらしい格好だった。メイド服はそのままなのに、乳房だけが不自然な形で露出している。可愛らしさはそのままに、色っぽさが跳ね上がった。幼さの残る日奈の肉体と合わさって、不思議な色気を醸し出していた。僕は射精してしまいそうなほど興奮していた。

「どういうつもり?日奈」

「だって日奈ちんは、ご主人様に喜んでもらえればいいんだもん。…それに裸なら毎晩見られているし」

 日奈が顔を伏せる。僕との情事を思い出しているその様子は、堪らなく可愛かった。

「日奈ちゃん……」

「わ、私は外さないからね。外さなくてもいいって言うのなら」

 慌てたように葉月は言う。

「ああ、いいよ。これは、どちらでも好きな方でいいんだ」

「……わかったわよ」

 気のせいか、葉月は少しがっかりしたような表情を浮かべた。

「それからね。今日は一日、メイドの仕事は休みにしようと思うんだ」

 僕の意外な一言に、姉妹は驚きの表情を浮かべた。

「休みなんてどういう風の吹き回し?」

「別に大した理由はないよ。ほら、今日は日曜だろ。ずっとメイドの仕事をしていて疲れただろうしね。今日はゆっくり休んでよ。ご飯だって適当にすませるしさ」

「……」

 複雑そうな顔をしたまま、日奈は黙っていた。

「…まあいいわ。ちょうど買い物したい物もあったし。そういう事なら今日は休ませてもらうわ。ね、日奈」

「う、うん……」

 日奈は小さく頷いた。

(15)

 僕は再びベッドに入った。以前の屋敷で生活していた頃は、休みの日は昼まで寝ていたものだ。起きていても楽しい事は何もなかった。そういえば引っ越してきてから、一人でこうやって惰眠を貪るのは始めてだ。

 ふう。

 息を吐いた。黙って天井を見つめる。僕は何がしたいのだろう。自分でもわからない。せっかく用意させたメイド服もどちらでもいい、なんて言ったり、急に休みにしたり。あの美人姉妹を僕のものにした。それだけで、信じられない程の幸運だ。僕は満足していたはずだった。なのに今は心の中がざわざわする。どうして僕はこんな気分になるのだろう。

 しばらくうたた寝していていると、不意にテレビの音が聞こえてきた。目を開けると、日奈が僕の部屋に入り込んでいた。遊びに来たという様子で、手には雑誌とお菓子を持っている。しっかり胸が丸見えのメイド服を着ていた。服装も今日は自由でいい、と言っていたのだが。

「おーい。どうしてここでテレビ見るんだよ。自分の部屋にもあるだろう?」

「…今日はお仕事休みだから、この部屋でテレビ見たいんだもん」

 理由にもなっていない言い訳をすると、日奈は絨毯の上に寝転がった。テレビとベッドの間だった。僕の方に足を向けている。

「まったく。休みの日ぐらい……」

 言いかけた言葉を、僕は途中で飲み込んだ。水泳のバタ足のように、日奈は足を上下にパタパタと動かしている。無防備に寝転がった日奈のスカートはめくれ、お尻もアソコも見えていた。そう言えば乳首も丸見えだ。日奈は大事な部分を全て僕に晒していた。

 思わずマジマジと観察してしまう。足を動かす度に、日奈の女の部分は複雑に形を変える。僕に見せる為に裸になるのもいいが、こうして気づかぬうちに大事な部分を晒している、という状況もいい。ムクムクと僕の分身が頭をもたげてくる。
 ここ数日で、一気に日奈は女らしさが増したような気がする。お尻などは固さが取れ、魅力的な丸みを帯びてきたようだ。

「今日だから来たんだもん。今日はメイドのお仕事は休みだから、遊びに来たんだもん」

 日奈はまた言う。少なくとも今は、僕に大事な部分を見せている事に気付いている。それでも隠そうとはしない。足はやや開き気味にしたままだ。女性器が少し開き、サーモンピンクの女の部分が露出していた。よく見るとそこは湿っていた。濡れている……?

「…飽きちゃった?日奈ちんに」

 ポツリと呟くように日奈は言った。いつもの明るい声とは正反対の、暗く沈んだ声だった。

「隣のクラスの玲子ちゃんが言っていたもん。体をユルスと、男の人って急に飽きる事があるって。もしご主人様がそうなら、私……」

 日奈は僕の方を見ようともしない。顔はテレビの方を向いたままだ。怖いのだ。自分の想像が当たっている事が。それこそ、こちらを振り向くことができないぐらいに。
 僕の変な様子に、日奈は日奈なりに不安を覚えていたようだ。それは日奈のせいというより、僕の方の問題だったが。それが申し訳なくもあり、そんな風に想ってくれる事を嬉しくも思う。胸が少し熱くなった。こんな気持ちは始めてだ。

「日奈」

 驚いたように、日奈が僕を見た。

「ベッドの中で、遊ぼっか」

 チュ…チュ……。

 さっきから、日奈は僕の頬にキスを繰り返している。日頃やっている過激な行為と比べれば、子供の行為のようなものだ。しかしそれが、なんとなく日奈らしい。

「…初めて言ってくれた」

「ん?何が」

「日奈って。呼び捨てで」

「あ、ごめん。つい」

「ううん」

 日奈は左右に頭を振る。

「嬉しいの。なんだかご主人様のモノになれたみたいで」

「フフ……」

「えへへ……」

 僕達は意味も無く見つめ合い、笑い合った。二人とも生まれたままの姿だ。遊びのようにキスをして、遊びのように愛撫する。その軽い行為が何とも心地よかった。

「えい」

 日奈はさわさわと僕の股間に触れる。奉仕というより、イタズラだ。

「はぁ…はぁ……。ボ、ボウヤ。良いモノを持っているね……」

 日奈はわざと息を荒くしている。痴女を演じていた。

「やったな」

 僕は日奈のかわいい乳首を指で突付いた。

「ひゃぁふ……」

 驚いて可愛い悲鳴を上げる。薄い色の乳首は、見る見る硬さを増していく。それが面白くて、僕は日奈の乳房をつんつんと突付いた。

「はぁ…あ…あん……」

いつしか乳房全体を揉むように愛撫していた。日奈の息に甘いものが混じる。

「…胸、無いでしょ」

 ぽつりと呟くように日奈は言った。

「私も、お姉ちゃんぐらい大きかったら良かったのに」

「そんな事ないよ。可愛い日奈のおっぱい、僕はとても好きだよ」

 僕がそう言うと日奈は、えへへ、と笑った。

「好きなのは、胸だけ?」

 上目遣いに尋ねてくる。甘える態度は、よく日奈の雰囲気に似合っていた。僕は待っている言葉を口にする事にした。

「…全部好きだよ。日奈」

 ちゅっ。

 お礼に日奈は、もう一度僕の頬にキスしてくれた。いそいそと体の向きを変え、僕に背中を向ける。

「私ね。お姉ちゃんが憧れなんだ」

 僕に寄りかかりながら、遠くを見て日奈が言った。

「頭も良くって、何でもできて。どうして同じ姉妹なのに、日奈ちんはどうしてこんなにダメなんだろう」

 日奈も葉月と学校を二分する人気を誇っていた。しかしスポーツや学業が優れているのは姉の方で、妹の方はせいぜい並といったところだった。

「日奈だってすごくもてたじゃないか」

「ううん」

 フルフルと日奈は頭を左右に振った。少し悲しそうな顔をしていた。

「可愛い、可愛い、言ってくれるのは、日奈ちんがお子様だから。お姉ちゃんみたいに、ちゃんとオンナの人って感じで見てくれていたわけじゃないの」

 そんな事ないと思うが、少なくとも日奈はそう思っていたようだ。日奈は見た目より成熟している少女なのだ。世間が自分をどう見ているのか、彼女なりに理解していた。そして可愛い少女を演じてもいた。

「だからお姉ちゃんと一緒にご主人様のメイドになれた時は、嬉しかった。ああ、一緒なんだって」

 もちろん僕はそこまで考えて、二人をメイドにしたわけではない。正直言えば、最初は葉月のついでだった。だけどメイドにしてからは、どんどん彼女の事に惹かれていったのは事実だ。結果として日奈に喜んでもらえたのならそれは嬉しい。

「…一緒じゃないよ」

「えっ」

 日奈が驚いて後ろを振り向く。その瞬間に、軽く唇を奪う。不意打ちのようなキス。

「あっ……」

「日奈は日奈さ。葉月にないものを一杯持っている。特にエッチの方はお姉ちゃんより上手いよ」

「えー、そうかなぁ。そうだったら嬉しいけどなぁ」

 日奈の顔が溶けていく。満更でもない様子だった。

「本当だよ。葉月だってさ、日奈の事が気になって仕方が無いんだよ。お風呂の時は、日奈がどんな奉仕をするのかってね。『日奈がどんな事をするのか、教えなさいよ』って僕に迫るんだよ」

 僕は葉月の真似をしながら言った。ぷっと日奈が吹き出す。

「やだ。それお姉ちゃんに似ている」

 そういうと、日奈はキャハハハハ、と笑った。それを見て、僕は幸せな気分に浸る。
 僕は今、幸せだ。日奈もきっと幸せだ。もうそれでいいではないか。

 そうか。

 はっとした。僕は自分が不幸でなければいけないと思っていた。他人の不幸によって財を得た僕には、幸せになる資格が無いと思い込んでいた。こんなにも、幸せを求めていたにも関わらず。僕は不幸な自分に酔っていたのだ。日奈の笑顔を見ていると、そんな僕でも幸せになってもいい気がしてくる。日奈を幸せにして、その結果僕が幸せになる。そんな形なら。

 これは甘い妥協かもしれない。しかし妥協しなければ、僕は生きていけない。何より日奈を不幸にしたくない。
 
「ありがとう。ご主人様」

 お礼を言いたいのは僕の方だ。

「好き……」

 小さくそういうと、日奈は僕に口付けをねだった。求めに応じ、唇を重ねる。日奈のそこは、熱く息づいていた。

(16)

 日奈が僕の股間に手を伸ばす。牛の乳を搾るように、優しく上下にしごいていく。

「すごーい。もうコチコチ……」

「日奈が可愛いから」

「えへへ」

 照れ隠しのように笑うと、日奈は体をずらせていく。僕の分身に奉仕してくれるようだ。僕はそっと日奈の細い手首を掴んだ。

「?」

「今日はいいよ。逆に、僕が舐めてあげる」

「えー恥ずかしいな……」

「それじゃあ、お互いに舐めっこしようか」

 僕が横になる。日奈の手は、既に僕の肉棒を握っていた。日奈は真っ赤な顔をして、僕の顔をまたぐように跨ぐように足を開く。僕の目の前に、ピンク色に輝く日奈の秘所があった。

「重くない?ご主人様」

「平気だよ。日奈は小さいから。それよりもっと顔に近づけないと、舌が届かないよ」

「……」

 日奈は無言で下にずれてきた。大事な部分を僕の顔に押し付けるように。息がかかる位置に、日奈のアソコがあった。そこはこれからの淫らな行為を想像して、充血していた。僕は軽く、一舐めした。

「ひぃぅ……!」

 ピクンと日奈の体が震える。予想外の快感だったようだ。気をよくした僕は、日奈のかわいいアソコにキスを繰り返した。

「あ…あ…ふぁ…ひぁぅ……」

 日奈の体がプルプルと震えている。キスする度に、口からは言葉にならない喘ぎ声が漏れていた。

「気持ちいい?」

「うん。気持ちいいよ……。とっても。自然に声が出ちゃう……。切ないよ……」

 僕は舌を出して、ペロペロと舐めてみた。少ししょっぱい日奈の味がした。

「ひぃぅ……はぁん…ぁ…だ、だめだよ。ご主人様ぁ……。こんなに気持ちよくっちゃ、ご奉仕なんてできないよぅ……」

 泣きそうな声で日奈は言う。

「いいよ。日奈が気持ちよければ、それで」

「嫌だもん!一緒に気持ちよくならなきゃ、嫌だもん」

 僕の肉棒が、何か温かいものに包まれる感触があった。口に含まれたのだ。中で激しく動いているのもがある。日奈の舌だ。僕の男根を絡めとろうと、怪しく蠢いていた。

「くっ……」

 日奈の奉仕はかなり上達していた。顔に似合わず、大胆に動く。今度追い詰められるのは、僕の方だった。このまま快感に身を任せていたら、達してしまいそうだ。慌てて日奈の性器に吸い付いた。小さくぷっくりと飛び出している陰核を舐め上げる。

「ひぃぁぁぁ……!!」

 肉棒から口を離して、思わず日奈は声を上げて仰け反った。

「ご、ご主人様。そこはだめぇ。そこだけは、だめぇ……。日奈、おかしくなっちゃうよ……!」

「どうおかしくなるの?」

 僕は止めるつもりはない。そう言いながらも、ペロペロと舐め続けた。少し固くなってきたようだ。

「んもう。ご主人様のいじわる」

 日奈は再び男根と格闘する。下半身を中心に、甘い痺れが走る。

「はぁ…はぁ……」

 ピチャ…ペチャ…クチュ……。
 チュ…チュバ…チュ……。

 二人の静かな息遣いが聞こえる。僕達は、お互いの性器を夢中になって舐めあっていた。日奈の愛撫で気持ちよくなったお礼を込めて、僕は日奈の性器を愛撫する。すると、日奈は更に熱を込めて僕の肉棒を舐めしゃぶる。快感と感情が僕らの中で入ったりきたりしていた。

「ご主人様ぁ」

 切羽詰った声で日奈は言った。

「もう、いきそうだよ……」

「いいよ。いっても」

「やだぁ……。日奈ちん、ご主人様のコレでいきたいよぉ……」

 少し強く僕の分身をしごく。

「お願い。ご主人様ぁ……」

 いじらしい仕草だった。ことわるなんて僕にはできない。

 日奈がベッドの上に横たわっていた。日の光が入ってきて、寝室を明るく照らす。日奈の裸は、きらきらと光っていた。白く透き通った肌が、上気してピンクに色づいていた。両手は体からうんと離れた場所まで投げ出されている。一切隠そうとはしていない。完全に安心しきった様子だった。

「きれいだ……」

 思わず感嘆交じりの言葉が漏れる。日奈は恥ずかしそうに微笑んだ。

「来て。ご主人様」

 僕に向かって両手を伸ばす。その手の中に、僕は体を滑り込ませていった。
 二人の体が密着する。僕は日奈が重くならないように、肘をつき体重を支える。そのまま手を後ろから日奈の肩に回し、抱きしめた。日奈の肌はすべすべと気持ちよく、優しく僕の全身を刺激した。そのまま、もう一度キス。

「あぁ……」

 重ねた唇の間から、日奈の声が漏れた。

「日奈ちん幸せ。泣きそうなぐらい……」

「いくよ」

 僕の言葉に、こくん、と可愛く頷いた。

 僕は自分の体を起こし、両足を押し開いた。日奈は両手でシーツを握り締めている。日奈の大事な部分は丸見えだった。僕は自分の肉棒を、日奈の中心にあてがう。ゆっくりと腰を突き入れていった。

「ああぁぁぁぁぁぁぁ……!!」

 充分に潤っていた日奈のそこは、抵抗なく僕の分身を飲み込んでいく。それに併せて甲高い声を上げた。日奈の瞳からは、涙がこぼれ落ちていた。

「痛い?」

 心配になって僕が尋ねた。

「ううん、平気だよ。変な気持ち……。胸がいっぱい。切ないよ……」

 泣きながら、無理に笑顔を作る。

「日奈……」

「動いても、大丈夫だよっ」

 僕はゆっくりと動き出した。相変わらず日奈のそこは狭く、きつく締め付けてくる。火傷しそうなほど熱かった。

「はぁ…あぁん…はぁん…はふぅ……。気持ちいい、気持ちいいよ……。ご主人様。怖いぐらい気持ちいい……!!」

「僕もだよ。日奈のココ、気持ちいいよ」

「ああん…ふぅ…はぁ…日奈のココ、ご主人様のものだよっ。もっともっと、気持ち良くなってぇ……!!」

 僕は理性のタガが外れたように、腰をぶつけていった。その度に、日奈の口から熱い息が洩れた。性感が、急速に高まっていくのがわかる。

「くっ、もう出そうだ……!」

「あ…あ……。私も……。ね、一緒に……。いいでしょ?一緒に……!!」

「うん。一緒に……!!」

 我慢なんてできない。僕は乱暴に腰をぶつけた。

「ああ。いっちゃう……!日奈、いっちゃうよ!!」

「くっ……!」

 ドクドクと、ペニスが震える。頭の中が白くなるほどの、強烈な射精感があった。入れたまま、僕は日奈の方に倒れこんだ。今までで一番気持ちいいセックスだった。
 日奈の息は荒く、体中に汗をかいていた。ビクビクと、痙攣している。日奈もいったようだった。僕の体を、そのまま優しく抱きしめてくれた。

「私を見てね。ご主人様」

 ポツリと日奈が呟いた。情事が終わり、少女は僕の腕枕で横になっていた。

「えっ?」

「お姉ちゃんを見てもいいから、日奈ちんも見てね」

「日奈……」

 日奈は知っていたのだろうか。僕の、葉月への気持ちを。

「いつか日奈の魅力で、ご主人様をメロメロにしちゃうんだから。目指せ、大捕り物。御用だ御用だ」

 冗談のようにそう言うと、日奈は僕の胸に顔を埋めてきた。

「……」

 僕は無言で、何度も日奈の髪を優しく愛撫していた。日奈は小さく、そして幸せそうに吐息をもらした。

< 続く >

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