共振 第2話

第2話

 うっかりすると、呼吸をすることを忘れてしまうくらい、気まずい時間だった。同じソファーに座って、上体を捻るようにして向かい合っている伊吹と芽衣。吉住芽衣は今、セーラー服のスカートの裾を、自分の胸元の高さまで、両手で捲り上げている。当然、太腿の付け根からおヘソの下まで、川辺伊吹の目に晒されてしまっていた。

 手を下ろしたい。そう思うけれど、共振している芽衣の精神体は、伊吹の思いを優先するように、シンクロして振動している。下着を隠したいという思いは当然のように募っているのに、このまま、見せていたいという思いが勝ってしまう。その結果、もう3分もこの体勢のまま、芽衣は動かないでいる。一体、伊吹は何を考えているのだろう。不安と憤りの混ざった視線を、1歳年上の予備校生に向ける。伊吹も何を言おうか、迷った後で、やっと唇を動かした。

「水色の………ストライプ。………横縞だったんだね。…………その、縦縞かと思ったよ」

『どうでもいいですっ。早く、私の体、解放してくださいっ。』

「あっ、ゴメ………」

 伊吹が力を抜くと、共鳴していた2つの精神体が、少しずつ、それぞれの波長の振動に分かれていく。芽衣は自分の手が自由になったと感じた瞬間に、バサッと音を立ててスカートの裾を膝の下に戻す。空気の抵抗で、プリーツの夏服スカートがフワリと丸みを帯びながら、無防備だった芽衣の下腹部を隠した。

「ヤラシイ! 伊吹君………。ビンタですっ」

 芽衣が自分の手を振り上げようとしたその瞬間、伊吹は自分の手で、自分の頬をパシッと叩いた。

(………今の、私がやったの?)

 キョトンとしている芽衣を見上げながら、頬を擦って伊吹が体を起こした。

「いたー…………。ゴメン、芽衣ちゃん。………でも、僕、いつも、こういう奴じゃないから………。……なんか、さっきだけ、妙な自信というか気合が漲っちゃって………。許して」

 ぶつぶつ弁解している伊吹を横目に、芽衣は今起きた出来事を整理しようと考えた。伊吹君の好意と、申し訳ないという気持ちは、喋らなくても伝わってきた。誤解はあったかもしれないが、伊吹に自信を持って行動して欲しいとメッセージを送ったのは、芽衣自身だ。もしこの一連の流れまでも、藤代隼人メンターが想定していることだったとしたら、伊吹にそこまで罪は無いのかもしれない。

 芽衣はまだ少しだけ釈然としない思いを感じつつも、溜息と一緒に、肩の力を抜いた。その芽衣に、伊吹が思いを投げかけてくる。

『これ………。早く終わらせた方が良いよね。頑張ろう。』

(え………。頑張ろう、ですと?)

 ごく自然に、伊吹の声が頭に響く。

『うん。ニューエイジ・スピリチュアルコミュニケーションの、ペア学習だよ。お互いの精神体に、共振を通じた干渉を交互に掛け合って、その力の作用を心の底から実感する。そうすることで、完全な他人にも自信を持って共振することが出来るようになるんだ。それに、共振中に自分を保つ練習もしておかないと、逆に自分が干渉を受けたりするからね。』

 おそらく6割くらいは、隼人メンターの言葉の受け売りなのだろう、伊吹はまるで暗記した法令を読み上げるようなトーンで、難しいことを芽衣に伝えてきた。当然、芽衣は理解しきれない。けれど、彼がさらに先に行こうとしていることだけは、伝わってきた。

『でも………私、さっきみたいな、エッチなのはちょっと、無理です。好きな人いるのに………。』

『嫌だから、必死で抵抗するでしょ? ………自分で言ってて、悲しくなるけど………。芽衣ちゃんが自分の恋を実らせようと思ったら、自分の力の作用をはっきりと自覚しないと。』

 そこまで心で考えたところで、伊吹は少し考え直した。

『………でも、僕もさっきみたいなビンタばっかり受けてると、気絶しちゃいそうだから、もうちょっと、違う路線で試そうか?』

 伊吹の言葉に、芽衣はホッとして胸を撫でおろす。眼鏡にソバカスで撫肩。この優しそうな青年は、時々芽衣よりも歳下に思えてしまうほど、童顔で、物腰が柔らかい。さっきから感じている彼の精神体の振動する波長も、穏やかな雰囲気。芽衣は共振していて、秘かに落ち着きというか、くつろげるような雰囲気も、どこかで感じていた。

『じゃ、僕が芽衣ちゃんの体を右に左にと、直接指示は伝えずに動かすから、芽衣ちゃんはその場に踏みとどまろうと、抵抗してくれる?』

『うん。それなら、オッケー…………。』

 左に3歩、ヨタヨタッと芽衣の体がさっそく動く、今度はバランスをとるように右にヨタヨタ。まるでコメディに出てくる酔っぱらいの役のように、芽衣の体が左右交互に引っ張られた。

『抵抗しようとしてるけど…………。確かに引っ張られる………。こういうことですよね?』

 芽衣が目を合わせると、伊吹はふと精神体の振動を弱めて、手をあごにやって考え込み始めてしまった。

『いや………これだと、やっぱり、先回のレッスンと変わらないよ。芽衣ちゃんの、抵抗しようという動機が弱すぎて、実感にもレッスンにもならないと思う………。』

 思いつめやすいタイプなのだろうか、伊吹は真面目な顔で俯いていた。芽衣はノイズのようにうっすらと響いてくる彼の心の呟きから、少しずつ嫌な予感を感じていた。

『やっぱり、さっきの路線じゃなきゃ駄目だ。僕も本気ビンタ覚悟で、芽衣ちゃんのレッスンに付き合うから、芽衣ちゃんが本当に嫌だと思うことについて、精神体干渉を試すよ。』

『………あの~………。それって、やっぱり…………。』

「芽衣ちゃん。………白川陸都君と結ばれたいんでしょ? ………覚悟を決めて、学習しよう。僕は今から、君に、オッパイを見せてと念じるよ」

「絶対無理っ。今日はどうも、お疲れ様でしたっ」

 今までの心の対話とはうってかわって、芽衣は気がつくと大声を出していた。回れ右して、2階のドアへと走って向かう。シュワシュワと音が聞こえて、少しずつ、芽衣の足取りが遅くなっていった。

(伊吹君の精神体が干渉してきてる! ………抵抗しないと………、私、………胸を見せちゃう…………。やだっ…………。)

 芽衣が両手をギュッと握りしめ、足から背筋まで突っ張るようにして、必死で自分の精神体を強ばらせた。後ろから送られてくる伊吹の精神体の振動する波に逆らって、ギュッと自分の心身を引き締めて抵抗する。体を反転させて、立ち向かうように立つ。前に体重を乗せて、体を傾けるくらいの姿勢で、流れに抗う。すると、伊吹の送ってくる波の様子が、少しずつ変わる。振動が微妙にゆったりとした間隔になって、波の山谷が高く深く変化してきたように感じる。力を使い果たしつつあるのだろうか?

 少しずつ、芽衣の精神体も伊吹の波長に合った振動に近づいてきているような気がする。

(やだ………なんで? …………さっきまで、うまく抵抗出来てたのに………。)

 芽衣がさらにお腹に力を入れて、共振しようとしている自分の精神体を凝固させる。それでも、波長が長くなった伊吹の振動に、芯からゆったりと揺さぶられていくのを、なかなか止められない。頑張って頑張って、逆らっていた芽衣が、徐々に、抵抗することが面倒くさく感じつつあった。

(…………もう………なんか、………必死で念じてる伊吹君も………、ジタバタして逆らってる私も、………みんな、馬鹿みたい…………。私のオッパイなんて、あるかないか、わかんないような、Aカップなのに………。)

 芽衣が、精神体をグアングアンと揺さぶられていることを自覚しながら、最後の気力を振り絞って、伊吹を睨みつける。

(エロ浪人生っ。………私なんかのオッパイ、そんなに見たい? ………いつまでも育ってくれない、『遠慮の塊』だよっ。ガッカリしたって、知らないよ? …………もう………、見て、ガッカリすれば良いじゃない………。こんな………、ちっちゃい………オッパイなのに………。必死で隠してる、私も………バカ………みたいだし……。)

 芽衣の目ヂカラがゆっくりと失われていく頃には、白くて細い両手は、セーラー服の赤いスカーフにかかっていた。白い夏服、紺色のカラーと対照的に彩度の高い、深い赤の色。そのスカーフが、シュルシュルと音を立ててほどける。その布の擦れる音のあとで聞こえたのは、チーーーという小さな金属音。フロントのチャックが上に上がって開かれていく音だった。スカーフを完全にカラーから抜き取った芽衣は、少し体をユラ~っと左右に揺らしながら、胸元のホックを外して、夏服から肩を抜く。白いセーラー服が足元に落ちる、サッという音が立つと、吉住芽衣はプリーツのスカートの上に白いキャミソールシャツを着ている状態で、川辺伊吹と向かい合っていた。綿のキャミソールが見せる芽衣の体の線は、華奢な体つきと、遠慮がちにこんもり膨らんだ、2つの丸みを見せている。その胸元にある、幼児用のお茶碗くらいの大きさの、控えめな膨らみを、芽衣は曝け出そうとしている。

(………………乳首の内側あたりにシコリみたいなのが出てきて、何かに触れると痛く感じるようになったのは、5年生くらいの時かなぁ………? 小学校の時は乳首の周りがプクッとなってくるのが恥ずかしかったけど、中学になってからは、もう遠慮しないで、自由に大きくなって良いよって、言い聞かせるようになったんだよな…………。でも、そこからあんまり育ってくれない、遠慮の塊…………。こんなの、男の人、ホントに見たいの? ………やらしい………。)

 顔を真っ赤にして、唇をモゾモゾとさせながらとりとめのないことを考える。困った様子の芽衣が、両手をお腹の前でクロスさせると、キャミの裾を掴んで、ゆっくり肩まで捲りあげる。頭をキャミから抜く時に、肩まである黒髪が頬と首筋を撫でる。白い布を掴んだ両手を頭の上まで上げて、完全に頭を抜き取ると、右腕も抜いて手を下ろす。左の肘を撫でながら、白いキャミソールが床に落ちていった。

『ブラジャーは水色一色なんだ。………可愛い。貧乳なんかじゃないよ。芽衣ちゃんのスレンダーな体とか、シャープな美貌に良く似合ってる、綺麗な胸。見たい見たい。芽衣ちゃんのオッパイが見たい。見たい………。』

(ブラは、パステル・アクアブルーって………、ま、男の人には、わかんないか………。うーぅぅぅ、恥ずかしいから、もうコメントしないで、頭に色々、囁いてこないで~。)

『見たい見たい見たい』という伊吹の声が精神体の波と一緒に芽衣に伝わってくる。そして芽衣の精神体と綺麗に共振した瞬間に、聞こえて来る伊吹の声に、なぜか芽衣自身の声が重なってくる。

『見せたい見せたい見せたい』と、伊吹の声にハモるようにして、被せて入ってくる芽衣の声。その声が芽衣の頭の中を駆け巡るように乱反射すると、芽衣は他のことを考える余裕が無くなってしまう。

(あーーーーー、もう、………ハイハイハイ、見せますからっ…………。静かにして………。何にも考えられなくなっちゃう…………。)

 芽衣が頭を抱えるようにして腰を折り曲げ、体を屈める。そしてそのまま両手を背中に回す。状態を30度ほど屈めたままの姿勢で、ブラのホックをプチっと外して、その小ぶりなカップと素肌の間に外気が入ってくるのを許した。力を失ったように、芽衣の体温を残したまま落ちていくブラ。ストラップが名残を惜しむかのように、芽衣の腕を撫でつつ降りていった。両腕で胸を隠すようにして上体を起こして、恥ずかしさに震えながら直立する芽衣。諦めるような息を深く吐くと、両腕を下ろして体の横につけた。すると白い肌の控えめな膨らみが、伊吹の目に完全に晒される。重力の影響を全く受けない、若くて硬さを残す、吉住芽衣の可愛らしいオッパイは、薄い肌色の乳首を、その膨らみの頂点にたたえていた。乳房が全く垂れていないため、乳首は伊吹と目が合うかのように、ツンと突き出ていた。

『やった…………。ありがとう………隼人さん…………、芽衣ちゃん…………、神様…………。……………出来れば、この流れで、触りたい。揉みたい。舐めたいな。』

「ちょっ…………。さすがにおかしいでしょっ! そんなの!」

 芽衣が思わず叫んでいた。自分の声が2階の部屋の白壁に反射して響き渡るのを聞くと、シュワシュワした振動の音が、一瞬にして止んだように感じる。目の前で霧が晴れていくように、芽衣の視界もクリアになった。

「………あ…………………。やだ…………」

 正気になって自分の身の回りを見ると、はしたなく脱ぎ散らかされた制服とインナーが、一部重なり合うようにして、散らばっている。芽衣は今更ながら腕で胸元を隠して、しゃがみ込むように体を小さくした。

(抵抗………最初は、出来たと思ったのに、なんだか振動の波長が変わって、出来なくなった。………結局、逆らえなかった………。)

『芽衣ちゃん。そこで気持ちが折れちゃ駄目。………今度は仕返しのつもりで、………僕に何か念じてみて。………ほら、………怒って良いんだよ。』

 なだめるような伊吹の口調に、芽衣は少しムッとした。怒って良いとは、何事だろうか。明るい部屋で服を脱がされ、無防備な姿でオッパイを見られて、芽衣はすでに怒っている。当然のことだった。

(お尻だったらまだしも………いや、お尻も嫌だけど。よりによって………。私の、遠慮の塊………。Aカップのオッパイを、よくも……………。私の、コンプレックスなのに!)

 透明感のあるシャープな顔立ちの芽衣がキッと睨むと、なかなか迫力がある。伊吹が少しだけ、気圧されるようにして後ずさった。

『女の子をこんな恥ずかしい目に合わせておいて、ただ済むと思わないでよね………。伊吹の、コンプレックスは何? 自分で同じ目に会って、反省してよっ。』

 右腕は無防備な胸元を隠しながら、左手を伊吹の方へかざして、芽衣が精神体の波を送る。怒りのせいか、エネルギーに溢れかえっているように感じた。伊吹が逆らうようにして自分の精神体を引き締める。先日の土曜日、初めてこのお店に来た時、芽衣はレッスンの中で、伊吹の体を動かす作用を覚えた。その記憶があるので、伊吹の精神体への干渉には、いくぶんか自信があった。

 それでも、伊吹は、芽衣よりもこうしたレッスンの経験値が高いのか、芽衣が送る精神体の波を巧みにかわした。先ほどの芽衣は、干渉してこようとする波に対して、精神体を硬直させるようにして、真正面から抗った。すると波長が変わった時に、対応できずに、あっさり共振を許してしまった。伊吹の場合、抵抗する時は自分の精神体を意識して滑らかに振動の波長を変えつつ、伸びやかに、芽衣の波に対して斜めにかわすような動きを見せる。常に精神体の隅々までを運動させて、芽衣の波長の変化に対応する。他人からの干渉には、こうやって対応するのかと、芽衣は身を以て学んでいた。

 芽衣も、力の使い方を工夫し始める。様々な振動を試すうちに、波の起こし方について、ある気づきを得る。自分のエネルギーを全力で相手にぶつけることを意識するのではなくて、スナップを効かせてタオルをはたくように、効果的に大きな作用を生み出すことを意識し始める。注意して観察すると、わかってくることがある。芽衣の振動の低い波長から高い波長までの波長の差と比べると、伊吹が生み出す精神体の振動は、その幅が狭いように感じる。細かい波、大きな波、芽衣が揺さぶりをかけると、その両極で、伊吹の作り出す波が、若干ほつれていく。芽衣がさらに大きく、さらに小刻みにと、波長の変化幅を広げていくことに集中し始めると、いつの間にか、伊吹の顔からは一切の余裕が消えていた。

『伊吹、教えなさい。………貴方のコンプレックスは何? ………さっきの罰として、貴方の恥ずかしいところを、私に見せるの。』

 抵抗が乱れてきた伊吹の精神体を包み込むように、芽衣が大きな波と小さな波とで揺さぶる。伊吹の精神体の振動が単調になっていく。その瞬間、波長を合わせた。共振する。ヒーーーーンと、音叉を震わせたような高い音が聞こえる瞬間、2つの精神体が共鳴を始めている。

『僕のチ〇コが小さくて………、皮を被ってるってことを、この子に知られたら、嫌だなぁ…………。』

 やっと相手の抵抗を潜り抜けて、知りたかった答えを得たのに、吉住芽衣は嬉しくなさそうに顔をしかめた。

『……うううう…………。やだけど………。一応、その恥ずかしいところを出しなさい。………罰だから。』

 芽衣が念じると、伊吹の精神体が振動を速めたり遅めたりと、共振状態から抜け出そうとする。けれど芽衣は自信を持って自分の波長を力強く、そしてスナップを効かせるように効果的に安定させる。すると共振状態は解けなくなる。やがて、カチャカチャとベルトのバックルが金属音を鳴らして、外れていく。伊吹の両手はそそくさと、ズボンのボタンを外して、チャックを下ろすと、重そうな布地が折り重なるようにズルズルと下ろしていく。深緑のチェック柄のトランクスが見えて、白い膝が見えるまで、黒いチノパンは下げられる。最後にトランクスにも手が掛けられる。芽衣は左手で自分の目を一瞬覆った。ゆっくりと手を下ろして、伊吹のコンプレックスを、義務的に目視する。

「キャーッ」

 ズボンとトランクスを膝の下まで下ろした状態で固まる伊吹。そうさせたのは芽衣なのに、彼女が悲鳴を上げていた。予想していたものと、見たものが余りにも違っていたからだ。小さくミジメに可愛らしい、子どものようなおチンチンを想像していた芽衣が目にしたものは、赤黒くいきり立った、大人の性器だった。もちろん目にするのは、初めてだった。ひっくり返った芽衣が、心でも絶叫する。

『嘘つき―っ。…………怖いっ………。何なんですか、これっ?』

『……………普段は小さくて、皮もかぶってるけど………。芽衣ちゃんの体を見ちゃったから………、こうなるんだよ………。男のここは………。』

 腰が抜けたようにひっくり返っていた芽衣は、自分の両手が、体を支えるために床についていることに気がつく。隠すものを一切無くして、さらけ出されていた、小ぶりなオッパイ。芽衣が慌てて両手で、包み込むように覆った。

『見ないでよ………。エッチ………。』

『いや………、芽衣ちゃんだって………。僕の…………体、自由にさせてくれないじゃん………。さっきから、チラチラ見てくるし………。チ〇コ』

『だって………なんか、怖いし…………。そんなになってると……、苦しくない? ………痛くないの?』

 芽衣は、伊吹のモノをチラ見したところから、目が離せなくなっている。こんな生々しい、臓器が剥きだしになっているような、造形を見たのは初めてだと思う。

 頭がズキズキと火照って、まともにものが考えられなくなる。怖いもの見たさなのか何なのか、気がつくと芽衣は、膝立ちになって、伊吹の足元へ近づいていた。頭の中にシュワシュワと音が響いている。共振状態を伝えるような、ヒーーーーンという高音も、鳴り響いたままだった。膝立ちで床を擦り歩きすると、制服のスカートがクシャクシャになる感触。それが嫌だと感じた後で、芽衣は自分がスカートのホックを外して、スルスルと落ちるのに任せているのを認識した。

「……………触っても………いい? …………」

 こわごわ顔を近づけた芽衣が、伊吹を見上げて、聞く。

「………………ん………、芽衣ちゃんが、………いいなら…………。……あ、あと………」

 伊吹が迷いながら、質問する。

「………その、………僕も……いい?」

 芽衣は答えなかった。人差し指を反るように伸ばして、ゆっくりと間をとって、ちょん………と、触れてみる。まるでアマゾンで新種の動物と出会った、動物学者のような手つきだった。芽衣が触れたモノは熱くて、筋肉の塊のように固かった。それはコンクリートのような無機質な固さではなくて、生き物が生み出す、力のこもった固さ。そこに血管が浮き出ていて、ドクドクと血液の流れを伝えていた。その熱が、指を通じて芽衣にまで伝わってくるようだ。熱病にうかされたようにボンヤリと、芽衣はしばらくの間、ただ伊吹のモノをちょんちょんと触るのを繰り返していた。芽衣の胸も、ツンツンと指で押されているのがわかる。何も反応しないでいると、伊吹の手のひらが、芽衣の「遠慮の塊」を包み込むように押されてきた。手のひらが円を描くように芽衣の膨らみをこねる。そして親指が、ムニュっと入ってくる。女子高生のいたいけな胸を弄ぶ、手の動きに仕返しするように、芽衣も親指を回りこむように添わせて、伊吹のモノを掴んだ。もう一段階、伊吹のアソコが固く大きく起立したような気がする。芽衣は気がつくと、両手を使って握りしめていた。手のひらで包み込むように、伊吹のモノを根元から先端まで擦らせてみる。あるいは芽衣の白くて細い指それぞれを動かして、反応をいちいち確かめてみる。気がつくと、芽衣の顔は伊吹のアソコの先端まであと10センチというところまで、近づいてしまっていた。

(駄目駄目…………。これは駄目………。違う…………。これ、違う…………。口に…………。)

 茹ったような芽衣の頭の中に響いているのは、もはや誰の声かもわからないものだった。ただ、コントロール出来ない力が、疼きが、芽衣の心と体に突き上げてくる。突き動かそうとしてくる。芽衣は迷いながら両目をうっすらと閉じて、唇をすぼめるようにして、伊吹のアソコの先端に近づけていった。キスをしようとしている………。自分はファーストキスを、片思いの相手とは違う男の人の、おチンチンにしようとしているのだと思うと、芽衣は自分自身の行為が一体、誰が望んで誰が進めている行為なのかもわからなくなっていた。

 唇がそこに触れる……、それを空気中に伝わる体温と、匂いとで感じそうになった瞬間、芽衣の握っていた伊吹のアソコが、突然の荒ぶりを見せる。一瞬膨らむようにして、ドクっと蠕動したその生殖器は、芽衣に両手で握られたまま、至近距離にあった芽衣の顔に、熱い粘性の液体を吹きかけた。

「え? ……………え? …………えぇ? …………うそ…………でしょ…………」

 吉住芽衣はパニックと言うよりも、放心したような状態で、繰り返しかけられる、白くネバネバした粘液を、顔と首元、そして胸に受け止めていた。まだ上下に震えながらドクッ、ドクッと最後の液体を絞り出してくる伊吹のアソコのせいで、芽衣は前髪からオッパイまで、ビタビタにされていた。

。。。

 シャワーを浴びていると、やっと泣いた後の、引きつけのようなしゃっくりが、治まってくる。芽衣がバスタオルで自分の体を拭いて、バスタブのカーテンを開ける。ユニットバスの洗面台横にあるラックに、濡れたタオルをかけさせてもらう。ラックの中には綺麗なバスタオルが何枚も畳んで重ねられていた。バスルームを見回すと、男の人の部屋にしては、水回りがとても綺麗に掃除されていることに気がつく。鏡に映る自分の裸をみた瞬間、芽衣はさっきの出来事を思い出してしまい、本能的に顔を背けた。

 ことが起きたのは(芽衣にとっては成り行き上での)ペア学習の途中だった。芽衣は自分が『オッパイを見せて』という精神干渉に抵抗出来ず、コンプレックスだった小さな胸をさらけ出してしまった。その悔しさもあって、パートナーの伊吹に対して、仕返しに、同じようにコンプレックスの部分を出すように念じた。伊吹の悩みも自分のアソコの状態やサイズだったので、半ば嫌々でも、芽衣はそれを見る流れになってしまった。

 そこからが芽衣にはよく理解出来ない。伊吹のアソコははっきりと勃起していて、サイズや普段の状態など、経験のない芽衣には全くわからない状態になっていた。それを見て、グロテスクとすら感じたはずの芽衣が、なぜかその光景に強く惹きつけられて、離れられなくなってしまった。目を背けて逃げるどころか、自分から近づいて、ご丁寧にスカートまで脱いで、伊吹のアソコに触れて、撫でさするように刺激した。ファーストキッスもまだ経験していない芽衣が、あと少しで伊吹のアソコにキスをして、その口にふくもうとしたところで、伊吹の我慢が限界に達して、派手に射精した。しばらく呆けたようになっていた芽衣の顔を、髪を、可憐なオッパイを、伊吹が必死にウェットティッシュで拭って綺麗にした。正気を取り戻した芽衣がポロポロと泣き出して、ひとしきり泣いたあとで伊吹に3発ビンタをお見舞いすると、シャワーを浴びた。そして芽衣はまだ、下着を身につけ、セーラー服を着こんだ後も、バスルームを出ることを躊躇っている。どんな顔をして、伊吹に接すれば良いのか、よくわからなかったからだ。

 しばらくジッとしていると、バスルームのドアが、コンコンとノックされた。

「芽衣ちゃん。………もし僕と顔を合わせるのが嫌だったら、今日は帰るよ。………でも、もしかしたら、何が起こっていたのか、知りたいかもって思って………」

 蓋を閉じたトイレットの上に腰かけていた芽衣は、両手を膝の上に載せたまま、鼻から溜息を漏らす。

『………教えて………。何で私、………あんなふうになったの?』

 口を開かずに、精神体を震わせて、疑問を伝える。

『2人が共鳴して、芽衣ちゃんが僕の深層意識と同調した時、たぶん芽衣ちゃんは自分自身の心を上手に塞ぎながら僕の精神体を制御するっていうことが出来なくて、かえって僕の意識の、ある部分とシンクロしちゃったんだと思う。共振作用って、思いが、より増幅される時があるから、芽衣ちゃんは僕のリピドーにアクセスして、同調したんだ。』

『………伊吹君のエッチな気持ちが、私にうつったっていうこと?』

『そうだね。何も教えられなくても、自然に自分の精神体への逆流を抑えながら他人と共振出来る人も多いみたいだけど、芽衣ちゃんは、きちんと防御法を覚えないと、いけないタイプなのかもしれない。………それとも、こうやって、精神体の尻尾が、結ばれちゃった副作用なのかもしれない。』

 トイレットのフタの上に腰かけているはずなのに、芽衣は自分の精神体の尻尾が、クイクイッと引っ張られるのを感じた。ドアを隔てていても、思っていることは伝わりあうし、尻尾は結ばれたままのようだった。

『人の尻尾、勝手に引っ張らないでください。』

『あ、ゴメン。………どっちにしても、芽衣ちゃんの課題がはっきりしたんだよ。相手に精神干渉をしかけるのはとっても上手。振動の大きさとか波長の短調のキャパとか、凄く才能あると思う。でも、自分の防御がちょっと弱いかも。これが克服できれば、凄くスムーズに他人を共振させることが出来る。』

 そこまで心で語りかけていた伊吹は、目の前のバスルームのドアが開くのを見た。身だしなみを整えた吉住芽衣が、ドアノブを握って立っている。瞼はまだ少し腫れぼったくて、涙の跡を見せていたが、美少女の表情はキリッとしていた。

「私の共振中の防御が甘いっていうことは、………このまま白川君と共振してたとしても、さっき伊吹君となっちゃったような危険があったっていうことでしょ? それがわかっただけ、良かったって思うようにする。………これ以上、白川君の前で、恥かけないから………」

 芽衣の目が伊吹の目と合った。

「さっき、貴方の防御。上手だった。………もっとちゃんと教えて」

 伊吹が微笑んで頷く。ソバカスのある顔が、はにかむような表情になると、より幼い男の子のような顔つきに見えた。

「でも、パートナーがムッツリっていうのが、本当にヤだっていうことは、覚えておいて。………私がまた同調して変になったら、絶対止めてくださいね」

「うん、ゴメン。気をつける」

『うん………ゴメン。………ちゃんと自分を制御してたつもりだったんだけど、………あまりにも、芽衣ちゃんが可愛かったから………。本当に、オッパイも綺麗で、可愛らしくて、乳首がツンとしててちょっとエロかったけど、ホント、形も良くて………。あと、柔らかかった。プニッとしてて。いや、プニッていうより、プルルって感じかな?』

「また、心の声、漏れてます…………。…………殺しますよ」

 芽衣が強めの言葉を出すと、伊吹の声はピタッと止まった。芽衣は溜息をつく。

「………それに………。コンプレックスって言ってたけど、………伊吹君のソコ…………。小さいとも思わなかったよ。初めて見るから、比べようもないですけど…………」

 芽衣が呟くと、青白かった伊吹の顔が、急に赤くなる。芽衣は今の言葉を言って正解だったかどうかわからなかったが、どうせ心が読まれれば、パートナーには伝わってしまうのだろうから、と、半ば諦めるように、自分を納得させた。

 パートナーとは仲良く学習しなければならないと、信念のように芽衣は感じている。それなのに、3発もビンタをお見舞いしてしまったのだから、仲直りの印として、これくらいの慰めと励ましは、言っておいても、良いのではないだろうか。

 30分ほどの間に、芽衣も原理を理解することが出来た。共振した精神体は一人の精神体の意志よりも強い振動を持つ。共鳴中であることに安心して気を緩めるのではなく、常に自分きっかけで振動を起こしていく。それを意識するだけで、芽衣も伊吹からのリピドーや感情の逆流を抑えることが出来た。とはいっても、精神体を同調させて振動を伝えている以上、完全に相手からのノイズを完全にシャットアウトすることは難しい。芽衣の頭の中には、このわずか1時間の間に、普段だったら考えないような思いやアイディアが、プツプツと浮かんできたりした。それらを押しのけながらの苦闘1時間。芽衣は伊吹の気持ちを2メートル離れたところから、完全に掌握出来るようになった。

「え………本気で、このクッションと、離れろっていうの?」

 伊吹が泣きそうな目で、芽衣に訴えかける。ソファーに座りこんでいる伊吹は今、ソファーの背もたれについているクッションの1つを、さも大切そうに抱きかかえていた。

「そう。これ、大雅マスターのものでしょ? 人様のものを勝手にそんなに必死に抱いてたら、変だよ? ほら、ずっと持ってると、なおさらお別れが、辛くなるから、今のうちに、離そ?」

 笑いをこらえながら、芽衣が優しく諭してあげる。気の優しい青年だったはずの伊吹が、今は駄々っ子のように首を左右に振って、いっそうクッションを強く抱きしめ、顔を埋める。

 何の変哲もない、ソファーのクッション。伊吹はこれが大好きになると芽衣が念じた結果、ムッツリではあるが、基本的にシャイな伊吹が、ここまで変貌して、情熱的にクッションに恋をしている。その姿を見ると、芽衣の胸の中でムクムクと自信と期待が膨らんでいく。これなら、白川陸都だって芽衣にゾッコンになってくれるはずだ。芽衣がハミングするように、精神体の共振を解く。ソファーで転がってクッションをギュウギュウに抱きしめ、顔を押しつけていた伊吹が、我に返る。気まずそうに、照れくさそうに、頭をかきながら体を起こした。

「芽衣ちゃんの精神干渉。結構、容赦無いよね。もうちょっとマイルドに試してくれても良かったと思うけど」

「ふふっ………。ゴメンね。まだ加減がわかってないのかも………。でも、クッションに恋する伊吹君、ピュアな感じで、ちょっと可愛かったかも………」

 クスクス笑いながら言うと、伊吹の顔はさらに赤くなった。

。。。

 狭い階段を、わざわざ芽衣と伊吹は2人並んで降りていく。足取りは軽かった。伊吹は芽衣にとって相性の良い被験者なのか、気持ち良く色々と試すことが出来た。芽衣は精神干渉のコントロールにはまだ少し課題があったが、送る精神体の振動、そして波の力強さには伊吹が目を見張るものがあった。伊吹の心を存分に振り回させてもらったおかげで、芽衣には自信がついたし、気分も良くなっていた。2人が1階のダイニングに降りると、そこではNASC武蔵野のメンバーたちがキャッキャとはしゃいでいた。

「芽衣ちゃーん、これホント、凄いよ~。こっちきて、試してみてよ~」

 目の縁の涙を拭いながら、雪乃が笑いながら呼びかけてくる。今日のレッスンは雪乃を中心に進められているようだった。独立型の椅子に腰かけている雪乃を囲うようにして、隼人さん、学さん、啓吾さん、大雅さん、そして里奈さんがいた。隼人メンターも振り返って、芽衣たちに話しかける。

「おかえり。………うん。その顔は、何か掴んだっていう様子だね」

 嬉しそうに頷く隼人さん。芽衣は自分の手のひらを見て、不意に赤くなった。

「まぁ、そこそこ、理解が進みました。………あの、こっちでは、何をやっているんですか?」

 芽衣が尋ねると、笑顔の隼人メンターは左手で掴んでいた本を持ち上げて、表紙を見せてくれる。

<催眠誘導法>

 本にはそう書いてあった。

「さっき、芽衣ちゃんが、記憶を操作して欲しいとかしたいとか言っていたから、考えてみたんだ。スピリチュアルコミュニケーションと催眠療法のコラボ」

「………催眠術って、あの?」

 芽衣の横で、伊吹が怪訝そうな声を出す。彼らが2階で試していたことも相当にイカガワしいことのなのだが、芽衣や伊吹にとっては、聞き馴染みがある不思議現象だけに、催眠術と聞いた方が、陳腐に怪しい力の話を聞いているような気がした。伊吹の質問を補足するように、芽衣が右手を上に上げて、何かを摘まんで揺らすような仕草をしてみせる。

「ほら、2人ともこっち見てごらん」

 大雅マスターが優しそうに誘いかける。手には、縦長に切り取られた白い画用紙。綺麗な字で<松藤雪乃>と書かれていた。おそらく、雪乃自身が書いた字だ。

「貴方のお名前は?」

 マスターが聞くと、雪乃は悪戯っぽく、笑いを堪えながら、背筋を伸ばして丁寧に答える。

「松藤雪乃ですっ」

 入試の面接か何かのようだった。

「こうすると………どう?」

「…………松…………。雪乃………です。……………ほら、何か、頭には残ってる、気がするんだけど、………出てこない~」

 大雅マスターが、画用紙の<藤>という漢字の上に、小さな画用紙を貼り付けると、雪乃の名前から<藤>が白く隠されてしまう。すると雪乃は、自分の名字の一部が思い出せなくなってしまったようだった。何かおかしなことが起きているのは、雪乃も自覚があるようで、コロコロと笑っている。これまでに何度も試したのだろう。

「こうしたら?」

 社会人の啓吾さんが、大雅マスターの持つ画用紙に重ねて、別の縦長の画用紙を見せた。2つの画用紙のサイズがピッタリあっていたので、まるで文字が塗り替えられたように見える。

「松………浪、健四郎………です………。アハハハ………。芽衣ちゃ~ん。私の名前、男の人みたいになっちゃったー」

 雪乃は手を叩いて笑っている。たぶん本人にとっては、違和感のある名前が本当の名前のように自分の記憶の中ですり替わって、居座っている。その感覚が、面白くて仕方がないのだろう。もっとも、彼女の頭の中の状況が共感できないので、傍目にはそこまで共感できる面白さではない。それでも、雪乃のような美少女が、お腹を抱えて笑い転げているのを見守ることは、他の参加メンバーたちも楽しい気持ちにさせているようだった。

「じゃぁ、雪乃ちゃん。……これは?」

 大学院生の学さんが、画用紙を重ねる。神経質そうに細くて右肩上がりの字だった。漢字3文字が雪乃の前に突き出される。

「………大型犬? …………私の名前は、大型犬? ………ですか?」

 雪乃の笑いが止まって、少しキョトンとした顔をする。学さんは3枚重ねられた画用紙を大雅マスターの手から受け取って、雪乃の顔に近づけていく。文字が間近に寄ってきたせいで、少しだけ雪乃の両目が寄り目がちになる。雪乃は少し驚いたように背中を椅子の背もたれに押しつけた。急に男の人が近づいてきて、ビックリしているのだろう。先回から、学さんの言動は少し空気が読めていないところがあると、芽衣も感じていた。

「雪乃ちゃんの名前じゃなくて、雪乃ちゃん自身の説明だよ。………ほら、雪乃ちゃんがこれになる」

 画用紙がオデコにつくほど近づくと、雪乃は目を閉じた。学が囁きかけながら、雪乃の額に紙をポンと押しつける。目を閉じたまま、雪乃はのけぞるようにして、力なく背もたれに寄りかかった。倒れないように大雅マスターが椅子を後ろから支える。

「ちょっと強引だったかな………。今のは」

 マスターが宥めるように言うと、学さんが唇を引きつらせるようにして、悪びれた笑みを浮かべる。雪乃はゆっくりと目を開けた。

「雪乃ちゃん?」

 大雅マスターが声をかける。目をパチクリさせて、雪乃は周りを見回した。

「…………ウーフッ…………。ウォーフッ!」

 低めの声で、雪乃が真顔で吠える。芽衣は思わず息を飲んで、両手で自分の口を覆っていた。オーッと低い男性の声で、啓吾さんと学さんが感嘆する。啓吾さんはゆっくりと手を叩いた。さっきたしなめられて、照れ笑いを浮かべていた学さんが、勝ち誇ったように、雪乃の背中をさする。雪乃はセーラー服のスカートを膝で踏みながら、お店の床で四つん這いになった。

「ハッ…………ハッ…………ハッ………ハッ………」

 舌を出して、荒い呼吸を吐き出す、四つん這いの雪乃は、本当に大型犬に成りきっているようだった。自慢気に雪乃のお腹を擦る学さん。時々、雪乃の大きな胸にも、その手が当たっている。学さんが、我が物顔で、芽衣の友人の体をベタベタ触っているのを見るのは、あまり芽衣の気分の良いものではなかった。それでも雪乃は、屈託のない笑顔で、嬉しそうに学さんとじゃれ合っている。まるで学さんを飼い主と認めた、愛想の良い大型犬のようだった。

「はい、そこまで」

 大雅マスターが指を鳴らすと、笑顔で喉を鳴らしていた雪乃が真顔に戻る。学さんは慌てて手を引っ込める。しばらく真顔で沈黙していた雪乃が、四つん這いのままで噴き出した。

「アハハハハッ。芽衣ちゃーん。私、犬だった~」

 崩れ落ちるように床にうつ伏せになって、足をバタバタさせて笑い転げる雪乃。いつもよりもハイテンションな様子だが、とにかく楽しそうだった。

「NASCも、より複雑な精神干渉を学ぼうとすると、催眠誘導法が大事なヒントになるよ。共振による精神干渉は、究極的には言葉も必要としないで、直接相手の感情や行動に干渉する。そういう意味では、催眠暗示よりも強力だ。けれど、言葉を駆使して相手の意識に示唆を与える催眠暗示の方が、より複雑で長続きする誘導を与えられるケースもある。だから上手に2つを組み合わせると、より効果的なんだ」

 隼人メンターが、伊吹と芽衣に話す。芽衣は7割くらいしか理解出来なかったが、伊吹は話についていっているようで、質問をする。

「そもそも、催眠術と精神共振は違う原理ですか?」

「うん。別物だね。催眠誘導法というのは、トランス状態という精神状態を活用する。相手の意識の狭窄による被暗示性の高まりを誘導して、暗示を入れるというもので、精神療養などにも使われている精神医学の一部だね。精神共振というのは現代では超科学に位置づけられていて、精神体の同調、共鳴効果を利用した意識の伝達だ。けれど、両方を理解していると、とても効果的な精神干渉や、誘導が可能になったりするんだ。だから、勉強しておいて、損は無いかな………」

 そろそろ、伊吹も、ついていけなくなったような顔をしている。芽衣は少しだけホッとした。

「ま、………学びの道は果てしないっていうことだよ。君たちペアも、学習要綱の入門はクリアしたみたいだけど。まだまだこれから、一杯学ばないと。………当分、尻尾は結んだままの方が良いかな」

「えっ………それは困りま………」

 芽衣が眉をひそめて、隼人メンターに抗議しようとしたところで、隼人さんは大きな声を出して、メンバーたちに呼びかける。

「はい、そろそろ学習の時間は終わりになりますので、いつものように輪を作りましょう」

 メンターが手を叩いて指示を出すと、雪乃を中心とした輪も解けて、芽衣と伊吹を受け入れた、全員で大きなリングになる。隣の伊吹が芽衣の手に触れる。仕方なく、芽衣は溜息をつきながら伊吹を手を繋いだ。メンバー全員で手を繋いで輪を作り、精神体を共鳴させあって大きな波長を作りだす。これがこの会の定番のルーティーンのようだ。

 体をユラユラと揺らしながら、目を閉じた芽衣は自分とメンバーたちの精神体が混じり合って共鳴しあう姿を意識する。自分という体の檻から、魂が解き放たれて自由になるような感覚。それは正直に言うと、とても気持ちがいい。それでも、メンバーたちの考えていることが、時々、ノイズのように入ってくるのは、若干気になるところではある。伊吹はまた、芽衣のオッパイの形や感触を思い出している。雪乃の、自分の名前が変わったり、犬になったりしたことへの興奮も、まだ伝わってくる。学が思い出している手の感触は………。あまり理解したくない。芽衣は精神体の波に身を任せながらも、ノイズはシャットアウトすることを意識した。今日、身を以て学んだ技術だった。すると気が楽になる。もっと安心して、精神体の同調と拡張を楽しむことが出来た。

。。。

 実際に精神共振と催眠暗示を組み合わせた技を、芽衣はその後の打ち上げの席で見た。さっきの出来事を何度も繰り返し、興奮して話している雪乃。その横でオレンジジュースを飲んでいた芽衣に、隼人メンターがアイコンタクトを送る。その後で、メンターがうっすらと目を閉じた。その3秒後には、雪乃のお喋りが止まる。雪乃はボーっとした目で、前を眺めたまま、動きを止めていた。右手は食べかけのポッキーを持ったまま。鼻が高くて睫毛が長い、雪乃の横顔は、静止していると西洋画のように綺麗だった。隼人さんが両目を開けると、雪乃はまた動き出す。何事もなかったかのように、話の続きに戻った。

「芽衣ちゃん。ジュースちょっとちょうだい」

 喋りどおしで、喉が渇いたのだろうか。雪乃は芽衣の手にしているオレンジジュースのカップに手を伸ばす。芽衣がカップを差し出すと、雪乃はそこにポッキーを差し込んだ。チョコのついていない、クッキー部分を口に咥えて、ジュースを吸い込もうとする、雪乃。当然何も起きない。………しばらくして、雪乃が自分の咥えていたポッキーを改めて確認して、笑いだした。

「あれ~。これ、ストローじゃないー。芽衣ちゃん、変えた?」

 芽衣は、雪乃からジュースを取り戻すと、隼人メンターを見る。丸眼鏡のお兄さんは、芽衣に向けて小さくウインクをした。隣で手を叩いて笑っている雪乃はとにかく上機嫌。芽衣は何となく、今の一連の経緯を、自分の胸の内におさめておくことにした。

 打ち上げの楽し気な雰囲気に飲まれたのか、雪乃は皆が解散する時までも、機嫌良さそうに振舞っていた。学さんが「お別れのハグしよっか」と調子に乗った申し出をする。するとあの雪乃が、何の躊躇もなく両手を広げて、飛び込むように学さんとハグをする。別れを惜しむように、2人は10秒くらい抱き合ったままでいた。芽衣の方はは意識をはっきり保っている。学とのハグは、社交辞令的に、あっさりと済ませた。抱きついた時に芽衣の首筋にまで顔を寄せて、髪の毛の匂いをクンクンと嗅いできた学の様子は、気持ち悪かった。芽衣はあくまでも挨拶としてのみ、ハグを済ませた。

(お別れのハグって、ナニ人ですか………。………もう………。)

 その日の帰り道は、雪乃と、里奈さんも一緒だった。今日会った出来事をまだ信じられないといった様子で繰り返し話しては、コロコロ笑っている雪乃。彼女の話に適当に付き合いながら、里奈さんがタイミングを見計らって、芽衣の隣に来た。

「芽衣ちゃん、今日、2階でペア学習だったんだよね。大丈夫だった?」

「あ………、はい。伊吹君ですから………。特に問題もなく………。ま、色々勉強になりました」

「………そ………。カウンター手伝ってたら、位置的に、2階のシャワーの音とか割と聞こえてくるから、ちょっとだけ気になって聞いたの」

 里奈さんが優しく言うと、芽衣の顔は耳まで赤くなった。何か言おうかと思ったが、口がパクパクするだけで、言葉が見つからない。里奈さんはクスッと笑った。

「ペア学習って、色々あるけど………。好きな人に振り向いてもらうまで、芽衣ちゃんは頑張る気なんだよね?」

「あ………、はぁ………。その、今週、ひっどい恥ずかしい失敗しちゃったんで………。もう開き直って、精神干渉でも共振作用でも、スピリチュアルパワーでも何でも使って、取り返してやろうか、とか思ってまして………」

 里奈さんはウェーブのかかったゴージャスな髪をかきあげて肩にかけると、その肩を芽衣の肩にくっつけてきた。

「芽衣ちゃんの頑張ってることは、お姉さんも応援するよ」

「ありがとうございます」

「あと………。白川君へのアプローチは、………急いだ方が良いかも。………ノンビリしてると、ペア学習って、ホラ。………いろいろあるから………」

 優しく諭すように話してくれる里奈さん。何か、自分のことを思い出すように里奈さんも顔を赤くして、アハハと笑った。

「………はい。急ぎます………」

 芽衣は、里奈さんの話に深く追求することなく、ゆっくりと頷いた。なんとなく、里奈さんの言いたいことは、理解出来るような気がしたのだった。

。。。

 目覚ましのアラームが鳴る。手探りで目覚まし時計を探して、止める。スヌーズ機能が5分後に作動することがわかっているので、それまでもう少しだけ、ウトウトとする。2度目のアラームを止めると、吉住芽衣は体を右に、左に、と1回ずつ捩じった後で、上体を起こす。まだ頭はボンヤリしている。呆けた目で壁を見つめていると、ゆっくり目が覚めてくる。紺色のパジャマの前を留めているボタンを外していくと、素肌の胸が出る。気になった芽衣はベッドから起き上がって、姿見の前に立った。

 いつも通りの遠慮の塊。芽衣の胸に2つ、控えめについている。この迫力に欠けるオッパイを、昨日は伊吹にさんざん興味を持たれて、誉めそやされて、求められた。

 不思議な気持ちで、自分の手で触ってみる。弾力はある。柔らかさも。でも、どうせ触るなら、もっと大きくて母性的なバストの方が良いのではないだろうか? それなのに、伊吹は芽衣の胸を見て、触って、頭が沸騰するほど興奮していた。その時、伝わってきた熱を思い出すと、芽衣の背骨の芯のあたりもまた、ジーンと温かく痺れるような気がした。芽衣はパジャマのズボンも脱いで、ショーツ1枚の姿になって鏡の前で立ちすくむ。スレンダーだけれど、やはりまだ、幼児体型の域を超えていないような気がする。柔らかそうな体つきとDカップの胸を持つ雪乃や、モデルさんのようにキュッとくびれた里奈さんのカラダの方が、魅力的ではないかと思う。もう一歩、鏡に近づいた芽衣は、自分の顔をマジマジと見つめる。一度、ニコッと微笑んでみる。昨日、さんざん伊吹に可愛いだの綺麗だのと、称賛された、芽衣の顔。まだ寝起きで少しムクんでいる。………こんな顔だと、伊吹は幻滅するだろうか? 芽衣は顔の角度や表情を変えながら、ボンヤリと考えていた。

(そんなことないよ。いつも芽衣ちゃんは可愛いよ………。)

 伊吹の声が頭の奥で響いたような気がして、芽衣はボワッと頭が熱くなる。赤い顔を、両手でベシッと、包み込むように叩いて、目を覚ました。姿見の前で体を捻って、お尻を鏡の前に出す。尾てい骨のあたりから、キラキラ光る尻尾が薄く見える。尻尾は長々と部屋の外まで伸びて、街の向こうまで繋がっているように感じる。隼人メンターに作られた、「精神体の尻尾」がまだ、隣町に住んでいるはずの川辺伊吹まで繋がっているようだ。浪人生の伊吹は、きっと夜遅くまで勉強して、今の時間帯は寝ているだろう。そう思った芽衣は、心なしか忍び足になって、クローゼットまで静かに移動した。

(今日のインナーは………。ローテでいくと、ライムグリーンの水玉のかな………。またショーツと合ってないけど、このローテは今週守っておいた方が、お洗濯の時に都合が良いもんね………。)

『………やっぱりなんだけど………。白が良いかな? 芽衣ちゃんの清純派イメージと良く合ってる。』

 ショーツ1枚でクローゼットの前に立つ芽衣は、ふと指をアゴにあてて、考え込んだ。

(ふむむむ………。……じゃ………白にするかな? ………上下も揃えて…………。)

 芽衣は迷った結果、今穿いているクリーム色のショーツも脱ぎ始める。清潔な感じのする、純白のブラとショーツを身につけることにした。白は変色しやすいから、芽衣はそんなに持っていない。お小遣いが貯まったら、もう2着ほど、買い足そうかとも考えた。

 シンクで髪を洗った後で、冷たい水で濡らしたハンドタオルを顔にかけてムクみを取る。タオルが落ちないように顔を上向きにしたまま、ドライヤーを掛けられるのが、芽衣の特技だ。髪が乾いて、クシをとかしたあとで、ハンドタオルをシンクに置く。肌水で顔を叩いたあとで、制汗スプレーを体にかける。そこまでした後で、クローゼットに掛けてある、セーラー服を着る。制服を着るのを最後にしないと、まだ暑い季節はここまでの工程で、汗をかいてしまう。

 スカーフを巻いて、自分の部屋から出る。階段を降りようとすると、下からトーストの匂いがする。芽衣の一日が、今日も始まった。

。。。

 9月中旬のこの日のことを、芽衣は一生忘れないと思った。

 これまで吉住芽衣は、白川陸都と学校で目が合った回数を数えて、満足しているような状態だった。それが、4限目の始まる前の休み時間に、白川君に呼び出された。一昨日の恥ずかしい失敗のこともあって、芽衣は用心深く、何も自分からは言いださなかった。

「俺と付き合って欲しいんだけど」

 背の高い白川君からそう言われた時、芽衣はまるで天啓でも降りて来たのかと思った。普段、雪乃や女友達と話す時には、結構理路整然と思ったことを話す芽衣が、何も言えなかった。頭の中では、(死ぬる~っ!!)と絶叫していたが、現実では、ただ前髪を指で弄りながら、小さく頷いた。

 美術準備室から、教室まで戻るまでの道のりを、白川君と芽衣は並んで歩いた。それだけのことで、芽衣は泣きそうなくらい嬉しかった。いつのまにか校舎が改築されていて、教室に続く廊下が何キロも伸びていたらいいのに、と、妄想まで浮かべながら、一緒に歩く一歩一歩を噛みしめた。

 芽衣が陸都にスピリチュアルコミュニケーション、つまり『精神体の共振』をしかけることを決心したのは、3限目のことだった。本当は、1限目から迷っていたのだけれど、なかなか踏ん切りがつかなかったのだ。「片思いを実らせる」、「恋を成就させる」、「相手に振り向いてもらう」………。これまで、オブラートに包んだような言い方をしてきたが、芽衣の行おうとしていることは、超科学的な不思議な力の作用で、他人の心や体を、自分の思うように操ろうという行為だった。

 芽衣から見て、チートと思えるような美貌や才能、家庭環境を有している女子たちは他にもいる。この青蘭学園は、そうした生徒たちが、他の平均的な学校よりも、多いかもしれない。その子たちは、ごく当たり前に皆の賞賛や羨望、そして愛情を集めて、優雅に振舞っている。芽衣にだって、突然訪れた、非日常的な現象との出会いを、恋愛に使わせてもらっても、バチは当たらない………とも思えた。

 同時に芽衣は、昨日もNASC武蔵野の集まりで、大学院生の学さんから感じた、イヤらしい、品のない欲望の感じを思い出して、足が竦む。学さんとは直接手を繋がなかったが、参加メンバー全員で手を繋いで輪を作り、精神体を共振させた時に、彼の本質的な欲望のようなものが、うっすら伝わっていた。あの人は、不思議な力で他人を道具のようにして、自分の欲望を満たすことにだけ、興味があるように思える。けれど自分がしようとしていることも、もしかしたら学さんと同じではないだろうか?

 行ったり来たり、悩みながら、今日一日が過ぎていくという予感を持ち始めた3限目の途中で、芽衣は昨晩の里奈さんの言葉を、不意に思い出した。

「白川君へのアプローチは、………急いだ方が良いかも」

 里奈さんはそう言った。自分は大雅マスターと、はっきりしない関係を長く続けているくせに………。でも、その時、里奈さんの言葉には、本心からのアドバイスという響きがあった。だから芽衣は、その通りだと思った。授業中、一人で芽衣は頷く。目を閉じて、自分の精神体が肉体から、湯気のように沸き立つ姿を想像した。うっすらと、でもキラキラと見える、芽衣の精神体。それは生きている証のように、シュワシュワと微細な振動をしている。その振動が、斜め右前2メートルのところに座っている、白川君の背中に伝わっていくことをイメージした。精神体の震えが波を作る。その波が白川君の精神体へと伝播していって、同調するポイントを探る。一段階、高い振動音が芽衣の頭の中に響いた気がした瞬間、2つの精神体が共振し始める。その共振を失わないようにしながら、自分の心の閉じるべき部分は閉じつつ、思いを波にして投げかける。

『白川陸都君は、吉住芽衣が大好きになる。吉住芽衣を彼女にしたい。吉住芽衣を幸せにしたい。』

 自分で念じていて、恥ずかしさに集中力が途切れそうになるが、芽衣はなんとか共鳴状態を失わないまま、4回ほどこのことを念じた。頭が熱くなってきたところで、精神体の振動を抑えて、共振状態を終わらせる。両目を開いた芽衣は、斜め前の席にいる白川君が、はっきりとこちらを見ていることに気がついた。その、驚いたような、何かに見とれているかのような目つきは、はっきりと、これまでの白川君の目つきとは変わっていた。そこで芽衣は、自分の試した力が、何かの作用をしたということまでは、理解することが出来た。

 そこからは芽衣も驚くほど、テンポよく、物事が進む。次の休み時間には、人気のない、美術準備室に呼び出されて、白川君に告白された。放課後には、校舎の裏に誘われて、初めてのキスをした。世界がグルグル回る、メリーゴーランドのような素敵なキッスが終わった時から、白川君は、芽衣のことを「吉住」ではなく「芽衣」と呼ぶようになっていた。

 2人は手を繋いで、学校から家へと帰った。そして2人の帰り道が別れるところで、もう一度、キスをした。今度はさっきよりも短いキスだったけれど、芽衣の心を温かく包んでくれるような、優しくて日常的なキスだった。

 1人になった帰り道で、芽衣は幸せな気持ちで今日の出来事を反芻する。教室、美術準備室が、校舎裏、駅、全てのスポットをもう一度、検証して歩き直しながら思い出に浸りたいような気分だった。通いなれた日常の場所、一つ一つが芽衣の恋愛物語の聖地になってくれたような気がした。出来れば巡礼して、記念写真を撮りたい。でも、駅の改札で記念写真を撮ることを、手伝ってくれる人がいるだろうか? ………焦るな。芽衣は自分に言い聞かせる。まだ交際1日目だ。これから楽しいこと、嬉しいこと、キラキラした日々が続いていくはずだ。今日はキスをしてお別れした。………もし、その先を、陸都君が求めて来ていたら、芽衣はどうしていただろうか?

(初日はさすがにないよね…………。軽いオンナだと思われたら、嫌だし。………でもいつまでも嫌がってたら、今時、重いオンナって、思われちゃうのかな…………。)

 悶々と、疑問を頭のなかでスクロールさせる芽衣。ドキドキしながら、もしものことを考えていた。

(もし、今日、強引に求められていたら………、私、どうしてた? ………里奈さんは、色々、急いだ方が良いって言ってた感じだったけど、でも、私の心の準備が………。………ま、今日は下着はたぶん好みにも合ってる白だったから、今日でも良かった? …………ん………? …………陸都君が、白、好きって、言ったっけ? ……………なんで私…………白………。)

 疑問が浮かぶととことん追求したくなる芽衣は、冷静に今朝のことを思い出そうとした。なぜ、ローテーションを乱してまで、今日は白の上下にしたのだったか………。

 そして、ある仮説に行きついてしまった。

 これまで、楽しい帰り道を、一歩ずつ噛みしめるように、ゆっくり歩いていた芽衣が、急に速足になって、急き立てられるように家へと急いだ。

。。。

 自分の部屋に着いた芽衣は、鞄をベッドに放り投げて、両手で拳を作ると、気を付けの姿勢のまま少しだけ前傾になって体に力を入れる。お尻の、『尻尾』をブンブンと振ってみる。

『伊吹! いるんでしょっ。………答えて。』

 少しの間、沈黙が続く、やがて尻尾を通じて、振動が返ってきた。

『………あ………、芽衣ちゃん。………今、………講義中だけど。………あ、そうだ………、陸都君のこと、おめでとう。』

 当たり前のように、今日の出来事のことを川辺伊吹に知られているということも腹が立った。

『あのー。人の下着のチョイスに勝手に口を出さないで欲しいんですけどっ。………今朝の、貴方でしょ?』

 芽衣のトーンに気圧されたように、伊吹の言葉が、たどたどしく帰ってくる。

『あっ………朝がたのアレ………。やっぱり、夢じゃなかったんだ………。いやね、………寝てる間に、芽衣ちゃんに呼ばれたような気がして、………僕、起こされたんだ。芽衣ちゃんって、もしかして、朝、僕のこと考えたりした?』

 芽衣の顔が赤くなるのが、自分でも分かる。………思い出すと、姿見の前で、昨日の伊吹の言葉や、伊吹のことを思い出してないことも無い…気がした。

『お互い、心が筒抜けだと困ることもあるから、心に蓋をしておくことを意識してたんだけど、明け方に呼ばれたような気がして、………あれ、夢じゃなかんたんだ…………。ってことは、芽衣ちゃん、今朝、鏡の前で自分のオッパイ触ったり、パンツ一丁で笑顔つくったりしてた?』

『わーわーわー! はい、やめっ。はい、この話はお終いですっ。』

 両手を、何かを掻き消すようにブンブンと振り回した芽衣が、一方的に心の会話を閉じる。お尻についてしまっている尻尾から力を抜いて、ベッドにうつ伏せで飛び込んだ。

 突っ伏したまま、足をベッドでバタバタさせていると、尻尾がクイッ、クイッと引っ張られる感触。伊吹が、会話を求めていた。

『芽衣ちゃん、ゴメン。………僕、てっきり、夢で芽衣ちゃんのプライベートな姿を見たのかと思ったんだよ。昨日の夜も、遅くまで起きてたから………。で、夢でも芽衣ちゃんに会えて嬉しくて、つい下着についても、一言………。無警戒の君の意識に干渉しちゃってたなんて、思わなかった。………ゴメンね。』

『………貴方、また、私の裸、見たんでしょっ。………エッチ、変態。………変態浪人生!』

『ひどっ………。芽衣ちゃんが自分で服脱いで、僕のこと思い出してたんでしょ? ………自分で顔が寝起きでムクんでるとか、オッパイに迫力が欲しいとか、あれこれ考えてたみたいだったから、僕は夢の中のことだと思って、応援の意味で。』

『他人の応援は結構です。浪人生は、勉強しててくださいっ!』

 心で絶叫して、15分くらい。芽衣は頬をシーツにつけたまま、うつ伏せ寝の状態でボーっとしていた。すぐに伊吹から何か反応があるかと思っていたが、心の声は伝播してこない。塞いでいるのだろう。予備校の講義中だからか。それとも、さっきの言葉は言い過ぎて、伊吹を傷つけてしまったのか。

 もう5分待ったあとで、芽衣は溜息をついて、自分で尻尾をまたクイッ、クイッと、引っ張ってみた。

『伊吹君………、聞こえる? ………ゴメンなさい………。さっきはちょっと言い過ぎました。………恥ずかしかったから、八つ当たりしたの。』

 10秒くらい待つと、クスッと笑い声が頭の中に響いた。

『僕も悪かったと思うよ。女の子だから、見られたくないとことか………あるよね。いや………男だって、そんなの一杯か………。格好悪いところとか、恥ずかしいこととか、みっともないことばっかりだよ。』

『…………ね。さっき、貴方。私が白川君とお付き合い始めたこと、知ってたよね? ………それも、………見てたの?』

『いや………昼前くらいに、芽衣ちゃんの声で、「死ぬる~っ」ってデッカく聞こえてきたの。僕が心を塞いでいても意味無いくらいの、おっきい声で………。』

 また芽衣が、顔をグリグリとベッドに埋める。

「もう、夢みたいな日に………、やっぱり恥ずかしいことだらけだよ………」

 自分の声が、はっきりと部屋に響いた。

『芽衣ちゃん、ちょっと、気にしすぎかもしれないよ。そりゃ、恥ずかしいのはわかるけど………。僕らは、スピリチュアルパートナーになっちゃってるわけだから、取り繕おうとしてても、お互いの本音とかプライベートとか、隠しきれないよ。………だいたい、そんな感じで、陸都君とキスの次とか、進展出来る感じある?』

『それよのう…………。それも、…………ゆっくり、時間をかけて………。いいの。今が幸せなの。今を生きるの。』

『………誤魔化さないで。高3の2学期でしょ? もうちょっと、早く進展しないと、卒業とか、考えたりしない?』

 いつも優しく穏やかなはずの伊吹の声が、少しだけ誘惑する悪魔のように聞こえた。芽衣は昨日まで、陸都と目が合った回数を数えて喜び、萌え狂っていたのに、今は確かに、キスの次への期待と、卒業までのカウントダウンのことを考えていた。

。。。

「うぅぅぅ、絶対私、騙されてる気がする………。伊吹、ホントは詐欺師でしょ? ……………こんなの………」

 芽衣は喫茶ダイニング「グラス&ウール」の2階を大雅マスターから借りて、伊吹と2人きりになって向かい合っていた。陸都と交際を始めて、まだ4日しかたっていない中、彼氏でもない男の人と2人で密室にこもっている。その状況は芽衣としても後ろめたい。それでも、芽衣にはこうしなければならない理由があった。第一。芽衣と伊吹は精神体の尻尾が今もきっちり蝶結びに結ばれている。この関係性は、陸都にも、芽衣の友人たちにも説明しようとしてもしきれない、特別なものだった。

「約束は守るよ、芽衣ちゃん。………絶対に最後まではしない」

 芽衣は陸都とお付き合いを始めてから、まだ短い間だが、7回はキスをしている。放課後にデートも2回した。それでも、キスより先には進めない。陸都には、そこより先に進みたいという気持ちはあるようだが、陸都が芽衣の体を愛撫しようとしたところで、芽衣が反射的にストップをかけてしまう。公園のベンチで、陸都が全身を硬直させて意識を失ってしまったこともあった。

(私には陸都君の気持ちを操作する力があるってわかってても、どうしても胸が小さいのとか、体が貧相なのとか、笑われないか、ガッカリされないかと思うと、反射的に拒んじゃう………。)

 芽衣の恋の悩みに敏感に反応してくれたのが、忙しいはずの予備校生だった。

『男の人に裸を見られたり、触れられたりするのが怖いっていうなら、慣れるしかないよね? ………ちなみにだけど、僕はもう芽衣ちゃんの裸、偶然みたいな感じで見ちゃってるから………、1回も3回も、あんまり変わんないかも…………。例えばの話だけどね。』

 一晩悩んだ芽衣は、結局スピリチュアル・パートナーに頼ることを決めた。それでも、いざ2人きりで向かい合うと、心臓がバクバクいって、口から飛び出しそうになる。

「ぅぅぅ、やっぱり………恥ずかしいな………」

 芽衣が俯いて呟くと、彼女の「尻尾」に、伊吹の尻尾がクルクルと絡みついてくるのを感じる。こういうところは意外に器用だった。シュワシュワと精神体の波動が送られてくる。芽衣は躊躇いながらも、少しずつアゴをあげて、目を閉じた自分の顔を伊吹に見せる。2人の精神体の波長が重なり、波形を合わせるようにシンクロしはじめる。芽衣は伊吹と共振した。

『芽衣ちゃん、リラックス。』

 伊吹の声が響くと、頭の中に自分の声も重なるようにして響きわたる。いつの間にか、芽衣の体から固さが抜けていた。

『いい? ………やっぱり嫌になったら、やめても良いよ?』

『………お願いします………。』

 手が動いて、モカブラウンのオーバーオールのストラップを留めているボタンを外す。足首からスネの半分が見えるようになっていた、七分丈のオーバーオールをズズッと腰から下ろすと、大きめのTシャツが、芽衣のショーツまでを辛うじて隠す。芽衣の心が小さく呻くのを無視するように、両手はお腹の前でクロスして、Tシャツの裾を掴むと、捲り上げていく。

(これは練習…………。陸都君の前で裸になっても、緊張して変な失敗とかしないようにするための、練習だから、公式記録ではノーカウント………。練習、練習。)

 自分で自分に言い聞かせるように、芽衣は自分の体が一枚ずつ、脱いでいくのに身を任せていた。紅潮した肌を守っているのは、控えめにフリルが縁どられた、白いブラとショーツだった。

(そっか………。私、今日、わざわざ、白、選んでた…………。)

 今朝も気がつかないうちに、伊吹にインナーのチョイスを操られていたのだろうか? それとも、自分でも意識せずに、今日下着姿を見せる相手の好みに合わせようとしていたのだろうか? 芽衣は、考えを読まれたくなくて、それ以上深く考えないようにした。

『今日は白なんだ………。やっぱり白の下着がピュアな感じで、とっても良く似合ってる。芽衣ちゃんの体はとっても綺麗だよ。………もっと見たいな。』

 熱を帯びたような伊吹の声は、芽衣の頭の中でうわずったように響く。その熱が、芽衣のナカまでも、カァッと熱くしていく。恥ずかしい気持ちが抑えこまれるように、別の衝動が芽衣を突き動かす。両手がブラのホックを外していた。スルリとブラがずれ落ちると、2つの小ぶりなオッパイが出る。丘に作られた古墳のようにこんもりと膨れている、控えめなオッパイ。今日はその真ん中にある、肌色の乳首が、プクッと起き上がっていた。そのことを意識しているうちに、芽衣の手はショーツのゴムの部分に指の腹をかけて、スルスルと下ろしていく。毛深くはないが、固めの毛質。芽衣のアンダーヘアーが伊吹の前に晒されてしまった。芽衣の頭に残る、わずかな理性が唇を噛ませる。無防備な体を隠したくて両手が前に出るが、共鳴する精神体が何かの念を受け止めると、芽衣の両手はおずおずと体の後ろに回っていく。右腕と左腕の肘を掴むようにして背中で組み合った。ユラユラと立ち尽くす芽衣は、完全な裸を、伊吹の目の前でさらけ出していた。

 興奮を抑えきれないように、伊吹が芽衣に近づいてくる。手が伸びてきて、芽衣のオッパイに触れた。逃げたいという気持ちと、練習を続けなければという気持ちが丁度拮抗すると、芽衣は動くことが出来なくなる。指が、手のひらが、芽衣のオッパイに押しつけられる。揉みながら、固くなっている乳首をほぐすように指と指が摘まんで擦ってきた。ほぐれるどころか、芽衣の乳首がより固くなって、ツンと立ち上がる。芽衣の体の火照りも隠せないのが、恥ずかしかった。

(そういえば………、伊吹君と尻尾、繋がれちゃってから、…………1人でシテないな………。)

 男の人の力強い手で体を愛撫されているうちに、注意力が少し蕩けた芽衣は、ボンヤリと心の中で呟いた。そしてその後、すぐに後悔した。1人エッチのことを男の人に知られるのは、裸を見られる以上に、心も裸にされた気がした。芽衣が恐る恐る、伊吹の心を探る。

『芽衣ちゃんの肌、スベスベ………。オッパイはぷにぷに………プルンプルンだ………。お尻はもっと弾力が強いな。プルンプルン対プリンプリンだ………。』

 伊吹の頭の中は、両手で揉みたおしている芽衣のオッパイとお尻のことで一杯になっていたようだった。芽衣は少しだけ、ホッとした。………別に芽衣自身はオッパイとお尻とで戦っているつもりは一度もないが、伊吹の頭の中では、まるで南海の大決戦が繰り広げられているようだった。

『すごい………、バカっぽくて………、熱い………。』

 少し扉を開いたら、伊吹の心の中からはエッチな興奮が、溶岩の洪水のように、芽衣の心に流れこんでくる。芽衣の体温まで上げてくる。その馬鹿エロヂカラの勢いに、芽衣の理性も押し流されそうだった。

『私まで、………変になりそう………。』

 直立して体をされるがままになっているのが、切なくて、芽衣は寄りかかるように伊吹に抱きつく。伊吹は腕と胸で芽衣の体を支えながら、まだお尻とオッパイを揉む。少し態勢を変えて、芽衣の胸元に顔を近づけて、乳首をパクっと咥えた。唇で乳首の根元を甘噛みしながら、口の中では舌先で乳首の先端を舐め回す。そして頬の力を使って、強弱をつけながら芽衣の乳首を吸引する。突然、3種類の刺激が混然一体となって芽衣の敏感な乳首を襲ってきた時、芽衣の頭の中は真っ白にスパークした。

『なに? ……いまの…………。すごい…………。どうしよう……………。気持ちいい…………。』

 芽衣の反応がすぐに伝わっているからか、伊吹は自信を持ったかのように、今度は右のオッパイを同じように刺激する。口を話した左のオッパイは手で弄る。もう片方の手が、芽衣の背中から腰を支えていてくれるのが、地味に心強くて、芽衣のお腹の下あたりがキューっと絞られるように疼く。伊吹の口での乳首攻撃が続くと、何度目かのスパークが芽衣の頭の中で炸裂して、これまでよりも長めに真っ白になる。その瞬間に、何かの堰が開いたかのように、ジュジュジュ―ッと芽衣の股間がわなないて、内腿が熱くなった。

『うそ…………? …………漏らしちゃった?』

 急に熱から覚めるように、芽衣は顔を青白くして、伊吹を突き放して尻もちをつく。ギュッと内膝を固く閉じていると、お尻まで熱い液が垂れてきた。

『芽衣ちゃん………お漏らしじゃないよ。………これ、たぶん、ちょっとだけ潮噴いたんだよ。感じてくれたんだよね。嬉しいよ。』

 伊吹が屈みこんで、芽衣の膝を開いていく。芽衣はもう、伊吹に委ねるしかなくて、膝から力を抜く。芽衣の太腿の間に、伊吹の頭が入りこんだ。温かい伊吹の舌が、芽衣の恥ずかしいところを優しくヤラしく愛撫する。

『心配しないで。芽衣ちゃんはとっても素敵で、エッチで、可愛いよ。芽衣ちゃんの恥ずかしいところも、みっともないところも、自信のないところも、全部、男からみると、凄く魅力的で可愛らしくて、………エッチなんだよ。安心して、全部さらけだしていいんだよ。』

(…………エッチは……………………余分なんだけどなぁ…………。)

『でも、しょうがない。ここは誤魔化しようもなく、エッチなんだもん。』

 伊吹の唇が、芽衣のクリトリスを見つけ出して、咥えるように包みこんだ。

「!!! ~っ!」

 声にならない悲鳴を上げて、芽衣がブリッジするように腰を浮かせた。また頭の中が真っ白にスパークする。目がチカチカして、現実世界が遠くなる。頬に張りついた、自分の髪を噛んだ。快感が芽衣の背骨から脳天に突き上げてくる。クリトリスを舌で舐め回されて、口で強く吸われると、芽衣は弓なりに背を反らせて、完全にブリッジの体勢になって、最後は股間から熱い液を吹きながら、完全に弾け飛んでしまった。

 何回か、猫が伸びをするの体勢の、ま逆のような体勢になって股間を伊吹の顔に押しつけた。痙攣のあとで、力が抜けて、背中と腰が床についた時には、芽衣の意識は、雲の上で平泳ぎをしていた。

『芽衣ちゃん………。帰ってきた? ………おかえり………。』

『………ん…………。おはよう………ございます………。』

 芽衣が目を覚ますと、伊吹と芽衣は大雅マスターのベッドの上で、裸のまま、抱き合っていた。芽衣の意識が戻ってくるまでの間、伊吹は芽衣の体中を優しくキスして、愛撫していた。そのことが、体の感触と、伊吹の意識から伝播してくる波でわかる。余計なお世話な気もしたけれど、伊吹が心をこめてキッスした部分は、何となく、陸都に見られても大丈夫。逃げたくなったりはしないという予感がした。勇気をそこに封印してもらったような気がしたのだ。愛されて綺麗になる………。雑誌で読んだら、普段の芽衣だったら、「あーあー、ハイハイ」で済ませていたと思うフレーズだけれど、もしかしたら、こういうことかもしれないと、素直に思った。

「あの、一応伝えておくと、約束通り、最後まではシテないよ。これはあくまで、僕のパートナー、芽衣ちゃんの、陸都君とのお付き合いの進展のために、練習として…………うわっ。………ちょっ………芽衣ちゃん」

『………何にも言わないで………。ここ………、苦しそうだから、ちょっとだけ………。』

 芽衣が、弁解じみた話をする伊吹を黙らせるかのように、覆いかぶさって伊吹の股間に手を伸ばした。川辺伊吹のコンプレックス。小さいと自分で言っていた、彼のおチンチンに、芽衣が思い切って、チューをした。

『私、わかんないから………。どうして欲しいのか、教えてよ………。』

 芽衣が伝えると、伊吹の表層意識がたじろぐ………。それでも開いたドア―からは、彼の心の奥底の欲求がバンバン流れ込んでくる。芽衣は少し迷ったあげく、自分の心の方を、融合した精神体からシャットアウトした。伊吹の思い通り、心が求める通りに、芽衣が動く、感じる、考える。

 高校の授業でパソコンを扱った時に、IP設定の確認かなにかで、急に芽衣の使っているPCがリモート操作に切り替えられた時のことを、不意に思い出していた。伊吹の求めるままに自分が動いているのは、奇妙な感じがする。が、それと同時に、何かの責任から解放されたような、妙な解放感もあった。

 基本的には伊吹のおチンチンの裏筋を撫でながら、時々、毛の伸びたタマの方も触る。体を寄せて、オッパイもモノにくっつける。谷間に挟みこめるほど、胸のボリュームが無いのが悲しいが、オッパイが触れると、伊吹のおチンチンはさらにいきり立つ。自意識をシャットアウトしているせいか、芽衣は裸の自分の行動を、他人事のように冷静に見ている。

(こうしてみると………、やっぱり私、エッチなのかも………。………困ったなぁ………。)

 第三者視点で改めて見てみると、吉住芽衣はシャープな雰囲気の美少女だった。黒いショートカットと白い肌のコントラスト。鼻が高くて完成しつつある美貌と、アンバランスに未成熟な、少年のようにスレンダーな体つき。控えめなオッパイ。でも形だけは良い。そして乳首はオッパイの小ささを挽回したがっているかのように、張り切って立っていた。華奢な腰と、プリっと上がったお尻。手足はすらっとしているが、二の腕や太腿は柔らかそうだった。そしてその、可憐な女子高校生が、男の欲求を先回りするように、手や胸を駆使して、奉仕している。そしてそのイヤらしい奉仕の時間は、意外と早めに幕を閉じた。伊吹のモノが、またも芽衣の顔と胸元に、白いベタベタを放出したのだった。

「あ………、ごめ………」

「も………また…………」

 気怠い表情で、自分の体を汚している伊吹の精液を指で拭う芽衣。伊吹を襲う倦怠感をともなった恍惚の快感が、芽衣にまで伝わっているのだった。今回は、芽衣の口にも入ってしまった。苦くてエグくて、青くて、若い………。その味を、芽衣は口で受け止めた。シャットアウトしていた自分の心………。いつこの回線を再接続させて良いものか、芽衣は大いに悩んだ。

<3話につづく>

5件のコメント

  1. 二話読ませていただきましたでよ~。

    ニュータイプとはこういうものなんでぅかね。
    まあ、意識混線しすぎてるから不安定なんでぅけど。
    意識が混線して流されてる芽衣ちゃんが可愛いでぅ。その後のお仕置きとかも含めて。

    でも学さんみたいに邪な考えのもとのぐへへな展開をもっと見たい所でぅ。
    っていうか里奈さんと大雅マスターの関係が気になって仕方ない所でぅ。
    大雅マスター全然見せないけど、里奈さんにエロいことをやってるんじゃないかって願望込みで思ってますでよ。

    であ、次回も楽しみにしていますでよ~。

  2. 二話も読ませていただきましたー!

    芽衣ちゃん、両想いになれて良かっ……うん、良かった、と思おう!
    今後のことを考えると、正直全く安心できないのが、なんというかドキドキしますね!

    片思いが成就した直後なのに、MCの影響で無意識にほかの男の好みの下着を着けてしまったり、練習の名目でペッティングしたり……
    とても不安なのに、どうしても興奮しちゃう……!
    芽衣ちゃん、今からでもいいから逃げてー!(無理)

  3. 読ませてもらいました。
    雪乃ちゃんが今の状態で自分はエロいことと認識せずエロいことをされるのに期待しています!

    1. てぃさん

      ありがとうございます!
      話の筋としては芽衣に寄っていきますが、
      雪乃もその合間で、ちょいちょいと
      操られていくかと思います。
      少しの間、よろしくお願いします。

  4. 皆様、

    ありがとうございます!
    夏を満喫しづらい状況だとは思いますが、
    冷房の効いた部屋でビールでも飲みつつ
    続きをお楽しみ頂ければ幸いでございます。

    永慶

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