第十六話
田中と玲子がハメ撮り初撮り! ドスケベキャリアウーマン優月玲子、三十四歳危険日中出し妊娠遊戯』を撮影してから一ヶ月後の深夜。
場所は、玲子たち母娘の住んでいるマンションの屋上。
「こんな場所で妊娠を検査するんですか……」
「ここなら撮っても外には見えるから、野外露出は嫌だって言ったのは玲子さんじゃないか」
カメラを片手に田中さんは呆れたように言う。
だから、なんで野外露出なんて話になるのかって玲子は言いたい。
しかしそれを言えば、変態おばさんって設定なんだからしょうがないだろうと返ってくる。
妊娠検査を野外露出でやりたいという田中さんの要望があって、どうしても外は怖いという玲子の反論があって、結局マンションの屋上で撮ることになったのだ。
田中さんが持ってきた撮影用のライトに照らされる玲子。
「ほら、寒いから早くやろうよ」
玲子は、着ているオーバーコートを脱ぐ。
中は何も着ていない。
床がコンクリートのため灰色の靴下だけは着用を許されていたが、却って情けなさが増す。
玲子はついに、露出狂の変態にまで落ちてしまった。
田中の子を妊娠したせいか、最近張りが強いおっぱい。
そのおっぱいの左右の乳首には、SM用のニップルクリップとそれにつながるチェーンがぶら下がっている。
お腹には『ドスケベキャリアウーマン優月玲子、三十四歳妊娠遊戯受胎報告』と黒いマジックペンで落書きがしてある。
秋口の深夜はとても寒いが、恥ずかしさのあまり頬を赤らめる玲子は、身体が火照って熱いくらいだった。
「優月玲子三十四歳。ただいまより、妊娠チェックをいたします!」
そう宣言すると、渇いたコンクリートの上に妊娠検査薬を置いて、そこにガニ股でおしっこをひっかける。
ジョボボボボッ……。
田中さんにずっと陰毛の処理を禁じられているため、もじゃもじゃになった股間から噴き出すおしっこは、四方八方に撒き散らされる。
自分の住んでるマンションの屋上でおしっこをしてしまうなんて、もうここにも住んでいられない。
こんな動画をばらまかれたらどうせ仕事も続けられないし、どこかへ引っ越すつもりだからどうでもいいかもしれないけど。
おしっこのほとんどは明後日の方向に飛んでしまったが、大量の水と利尿剤を飲まされていたため、プラスチックの妊娠検査薬には余すところなく玲子のおしっこがかかった。
「さあ、ドスケベ中出しセックスから一ヶ月、はたして本当に妊娠しているでしょうか!」
しばらく置いてから、プラスチックのスティックを拾い上げる玲子。
一瞬、その顔が歪んだ。
「ほら、見てください! 見事に当たりです! これから私はよく知らない男の子供を妊娠、出産して、シングルマザーで育てることが決定しました!」
玲子は、強張った笑みを浮かべて、自分のおしっこのかかった妊娠検査薬をカメラに見せつける。
そこにはちゃんと陽性反応の紫のラインが現れていた。
「本当に、ありがとうございます……うっ、うう……」
強張った笑顔のままで、あまりの情けなさに、玲子の瞳から涙がポロポロとこぼれた。
その時だった。
「お母さん!」
「唯化!」
娘が、玲子のオーバーコートを拾い上げて着せてくれる。
あっ、録画中なのに娘の名前を言ってしまったとか、なんで娘がここに? こんな姿を見られてしまった! とか、玲子の脳裏にいろんな思いが一挙に押し寄せてきて言葉に詰まる。
「いいのよお母さん。もう辛いことは終わりだから、部屋に戻ろう」
「うっ、うっ、うわあああああああああ!」
そう言われて玲子は、子供のように泣きじゃくってその場に泣き崩れるのだった。
< おわり >
もう終わってしまうのが寂しいですが、スランプの原因になるのでは仕方ないですね。
ヤラナイカーさんの近年の作品の中で一番更新を楽しみにしていました。
良い作品をありがとうございました。
次回作も楽しみにしています。お疲れさまでした。
名無しさん感想ありがとうございます!
そう言ってもらえて大変光栄です!
これ続きの構想がないこともないのですが、何度考えても上手くはまらない感じがして綺麗に〆られるところで〆ました。
作者的には、この屋上のシーンが最初に書きたかったことなので、書けてよかったなと思います。
突然現れた唯花ちゃん。
裸で排尿してるっていう異常な事態を気にせずに声をかけてる時点で唯花ちゃんも催眠かけられてるんだろうなぁ。
って、終わりか。
この後、親子丼でさらなる絶望に落として終わるのかと思ってたのでぅが、うまく行かないならしかたないでぅね。
お疲れさまでしたでよ。
みゃふさん毎回感想いただいてありがとうございます!
親子丼の構想自体は自分の頭にはあるのですが(絶対そういう想像はしますよね……)
そうやってイメージしていってもどうしても本作のコンセプトの達成ができなかったので、とりあえず一旦これで終わりとさせていただきます。
上手く頭の中でまとまったらまた書くかもしれませんので、その時はぜひよろしくおねがいします。
ダークでハードなお話を、最後までテンションを落とさずに書きられたことにまず拍手です。
田中さん側が感情移入を拒んでいるような謎の存在であるので、
玲子さんの苦難に寄り添うしかないのですが、ラストとことん堕ちたところで、
カタルシスというか、浄化される感情を得ました。
娘と寄せ合って、絶叫のような大号泣って、「ゴッドファーザー3」のような大団円。
ハードな展開を緩めずに最後まで書ききるのは、精神力を消耗する行為だったと思います。
お見事でした。楽しませて頂きました。
永慶さん感想ありがとうございます!
>玲子さんの苦難に寄り添うしかないのですが、ラストとことん堕ちたところで、
やはり女性の側の葛藤を描きたいということがあったのでこんな感じになりました。
とりあえず、書きたかったことは書けたなと満足してます。
>ハードな展開を緩めずに最後まで書ききるのは、精神力を消耗する行為だったと思います。
この辺りは、同じ書き手だとわかっていただけて嬉しいですね。
テンション維持して長編を書くというのは、結構精神力がいるので、その点永慶さんもご苦労されてると思います。
最後まで楽しんでいただいてありがとうございました。
できましたら、続編もがんばってみたいなと思います。