落ちこぼれのレイニー・ブリスルスハート 第3話

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 学院に戻ってきて、しばらくは平和な毎日が続いた。

「せーんぱいっ」

 昼休みに廊下を歩いていたら、鈴の音とともに呼び止められる。振り返ると、『後輩↓』という文字を頭上に浮かべたモモがニコニコしていた。
 うむ。可愛い後輩に後ろから「せーんぱいっ」なんて呼び止められるなんて、まるで現実の充実した人間みたいだ。
 
「あいかわらずぼっちでかわいそうですね。可愛い後輩が遊んであげてもいいですよ」
「うるせー、最近はクラスのヤツともしゃべるようになってんだよ、キザオスとかその腰巾着とかっ」
「そうですか。よかったですね、キザオス先輩が仲良くしてくれて」
「うん。いや、俺がアイツと仲良くしてやってんだよっ。なんだよ、イジメに来たんならどっか行けよ」
「うひひっ」

 あいかわらず失礼なやつだ。可愛い後輩はいないのか。現実は俺に厳しい。
 しかしモモは、「そんなこと言っちゃっていいんですか?」と偉そうにドヤ顔する。

「私がカンニングを手伝ってやったおかげで、赤点を免れたくせに」
「うっ……」

 先日の実力テスト、正直やばかった。なので、モモの光魔法の応用で、特殊なグラスを通してのみ視える不可視の文字で黒板に教科書丸写しし、それを見ながら解答した。今日、その結果が出たのだが、俺は赤点ラインを余裕でクリアできていた。
 こんなことまで出来るとは、どおりでコイツ、素行悪いくせに成績優秀なはずだ。便利すぎるぞ光魔法。

「等価交換ですよ。ちゃんと払ってもらいますからねっ」

 ぴょんと俺に近づいてきて、ぴろぴろっと舌を見せて、そこに小さな星を散らしてアピールしてくる。
 確かにモモに弱みを握られっぱなしはよくない。借りはソッコーで返してやろう。

「よし、口を開けろ」
「え、今すぐですか!?」
「払ってほしいんだろ? ん?」
「……さすが変態先輩ですねー」

 俺も舌を見せてやる。モモは顔を赤くする。ふふっ、年下のくせに先輩をからかうからだ。うぶいヤツめ。

「ジジ、お願い」

 モモがそういうと、黒猫が形を変える。びろんと体が伸びて帯状になる。真ん中に黒猫のマークを並べたレースのリボンに。
 そしてそれが、俺たちの周囲をくるくると取り巻いて回転し、膝から上を完全に覆い隠してしまう。
 光魔法のカーテンだ。

「あーん」
「え、マジで? こんなところで?」

 俺の方がびびってしまった。
 廊下には結構人がいるんだ。
 この魔法だけでもかなり注目を集めているはずだ。

「あーんっ」

 モモはニヤついた顔で舌を出してる。
 ほんと、光はずるい。全然正義じゃない。

「んっ、やんっ」

 キスしてやった。ざまぁみろ。
 しかし、モモが驚いたのも一瞬で、すぐに舌をうにょうにょさせて絡ませてくる。

「んっ、ちゅっ、んんっ」

 真昼間の学院の廊下で、周りに生徒もいるっていうのにチューしてしまった。
 モモのぐるぐる回るリボンカーテンもあるし、まさかそんなことしてるってバレないとは思うが……って、いつの間にか黒猫のマークがハートに変わって、桃色に光っているし。
 ていうか、膝から下は見えてるし、モモのつま先立ちとか抱き合ってることとか丸わかりじゃないか。

「んっ、ちゅっ、ちゅぶ、うんっ、んんっ」

 ……まあ、いまさら取り繕っても遅いか。
 先生たちに何か言われても、俺にはフェイバリットお姉ちゃんがいるし、催眠術もあるし。
 生徒の間で悪い噂になるのだって慣れっこだしな。
 たっぷりとキスを堪能する。勃起していく股間をモモに押し当てる。抱き合って濃厚に舌を絡ませ合い、唾液を交換した。
 
「うんっ、ちゅっ、んん、れろ、ちゅ、ちゅ……はぁ」

 たくさん唾液を飲んで、キスを楽しんで、満足した顔でモモは俺にしがみつく。

「はふぅ。燃料充てん完了です」

 ぎゅっとしがみついたまま、モモは言う。
 俺の方は、燃料が貯まりすぎてしまっていた。カチンカチンだった。

「なあ、モモ……ものは相談なんだが、このままスケベしないか?」
「はぁっ?」

 しかし、モモもさすがにそこまでの気はないらしく、リボンを解除し、俺を突き飛ばす。
 顔が真っ赤になっていた。

「な、なに考えてんですか! そんなこと出来るわけないでしょ、もうっ。放課後、先輩の部屋に行ってあげますから、それまで我慢してください! バカッ、先輩のえっち!」

 べっと舌を出してそこに『×』印を浮かべ、パタパタ逃げていく。
 廊下の注目をものすごく集めている俺は、とりあえず勃起を隠すために、ポケットに手を突っ込んで佇む。
 おまえ、そんなことでかい声で言ったら、放課後エッチするのバレバレじゃん。

「エアリス、おまえの口はなんだ?」
「はっ、レイニー様の剣の鞘です」
「じゃあ、きちんと収めろ。喉の奥までだぞ」
「はい、お任せを……んっ、んぐっ」

 モモのせいで勃起させられてしまったそれを、エアリスに鎮めさせる。
 後輩の不始末は先輩の責任だ。いろんな意味でエアリスはモモの先輩なのだから当然だろうと言ったら、「そういうことならば」と、彼女も了解してくれた。何がそういうことなのか、俺たちも上手く理解できてないと思うが。
 昼休みの中庭で、茂みの奥に隠れて彼女にフェラを要求する。慣れた仕草で俺のを飲み込み、舌を上手に絡めてくる。

「あぁ……いいぞ。エアリスはフェラが上手だな」
「んんっ、んっ、ふぅんっ、ぢゅぶ、ずずっ、れろ、んんっ」

 褒めてやると嬉しそうに目を細め、愛撫に熱を込める。
 忠実なる恋奴隷。最強の女剣士に傅かれるのは気分が良かった。男の本懐ってやつだ。
 これならすぐにスッキリ出来そうだと、エアリスの口奉仕に身を委ねていると、すぐ向うのベンチに生徒たちが腰かけたようだった。

「聞いたか、オイ。落ちこぼれのやつ」
「あぁ、下級生と付き合ってんだって? しかも、あの『天才問題児』のモモ・エンドロールと」
「信じられねぇよな。確かにエンドロールって、顔はめっちゃ可愛いけどさ。よりによって、うちの『落ちこぼれのレイニー』とくっつくなんて」
「どっちも微妙なカップルだよな、うははっ」

 ちぇ、勝手なこと言いやがって。
 まあいい、学校の連中にあれこれ言われるのなんて俺は慣れっこだし、どうせモモも似たようなもんだろ。問題児の特権として、周りの評判とかいうやつに右往左往する必要はないんだ。
 気にせずこの最高のフェラに集中していよう……と、思ったら、シュッシュと何かを削る音がする。
 見ると、エアリスが俺のを口でしゃぶしゃぶしながら、木の枝をナイフで尖らせているところだった。

(エアリス、なんだそれ?)

 ベンチの奴らに聞こえないように、小声でエアリスに尋ねる。

(ふぁい。あ奴らを抹殺するための武器です)

 俺のチンポ咥えたままそんな眼をしないでくれと、哀願したくなるくらい殺意のこもった眼光だった。ブルッときた。

(バカ、やめろ。人殺しになるつもりか)
(しかしあの下郎たち、レイニー様のことを『落ちこぼれ』などと……)
(いいんだよ、そんなのほっとけば! というか下郎呼ばわりの方がきついって!)
(ご心配には及びません。ついかっとなって乱暴なことを言ってしまいましたが、普段は脅しと軽暴力くらいで鎮圧しています。余計な怨恨がご主君に及ばぬくらいの配慮はしているつもりです)
(普段からしているのか!)

 しかも何だ、軽暴力って。暴力の喫茶店なのかよ。
 どおりで最近、クラスの男子の態度が変わったような気がしていた。なんとなく、表立って俺のことをからかうことが減ったように思ってた。
 筆頭だったキザオスが俺についたせいかと思っていたが、裏でエアリスが活躍していたのか。

「おっと、こういうこと言ってたら『白金の女騎士』が出てくるぞ」
「彼女も最近変だよな。お堅いのは前からだけど、全然関係ない他人の悪口でも怒り出すもんな」
「真面目かよ」
「逆らえないオーラあるからなぁ。うちのクラスから近衛兵になるのって彼女くらいだろうな、きっと」
「コネでキザオスも入ると思うけどな」
「あーあ、俺も近衛兵隊に入りたかったなぁ」
「真面目に努力してりゃあな。やっぱライトニングさんは性格的にも向いてるわ。正義の味方だもん」
「俺、こないだクラスの女子のことをからかったら、あとで彼女に注意されたよ」
「俺はレイニーのこと笑ってたら、かかと落としされたな」
「怖ぇなオイ。だけどスカートでやられるのって、ちょっと得してね?」
「まあな。でも、すげー速さでやられるから下着なんて確認できねぇし。太ももくらいしか見えないんだよ」
「さすが光速の異名を持つだけある」
「でもそれで『クラスメートの悪口は言うなぁ!』だもんな。言ってることは正しいけど、おっかねぇよ」

 全然軽い暴力じゃねえよ、かかと落としって。ちょっと喜んでるんじゃねぇよ、おまえらも。
 エアリスは、聞こえないふりをしてフェラを続けている。
 でも確かに、こいつらの話だと、俺との関係を怪しまれないように他のヤツも巻き込むとか、配慮はされているみたいだった。
 実習から帰ってきても、彼女はモモと違って学校では俺にベタベタしてこない。せっかく弁当を作ってくれても、朝のうちにこっそり机の中に入れてあったりだ。
 俺はみんなに知られても別にかまわないんだけど。ただエアリスが「それだとあなたを守れない」というので、一応、隠しておくことにしているぐらいだ。
 恥ずかしがってるだけかと思ったが、秘かにこんなことをしていたとは。
 自分一人が恨まれ役になって、俺の『落ちこぼれ』との評判と戦い続ける覚悟か。そんなこと俺は気にしちゃいないって言ってるのに。
 彼女は根っからの、いや、もう本物の騎士以上だった。

「でもよ、なんかおかしくね?」
「何が? おかしいことだらけだろ、最近の学院は」
「そうなんだよ、おかしいことだらけだ。でもそれ、全部あのレイニー中心に起こってないか?」
「……そうか?」
「モモ・エンドロールもそうだけど、最近、あの気取り屋のキザオスが妙にレイニーと仲良いし」
「からかってるだけじゃねぇの?」
「いや、そういうんでもないぞ。あと、ライトニングさんも」
「かかと落としがどうした?」
「なんとなくだけど……レイニーの悪口言ったときだけ、S級で怒ってねぇか?」

(ぶふっ)

 俺のを咥えながら、エアリスは噴き出した。

「まさかレイニーのモテ期ってわけ? そりゃねぇだろ、いくら何でも」
「でもよ、俺のカノジョも言ってたぜ。最近、ライトニングさんがきれいになったって」
「あの人は前から俺たちの女神だろ!」
「いや、そういや女子の誰かも、ライトニングさんに肌の手入れの仕方とか聞かれたって、驚いてたな」
「恋か? レイニーに?」
「ありえねー」
「で、俺のカノジョがまた言ってたんだけど、たまに授業中にレイニーの方を見てぼんやりしてるって。ペンとか咥えてエロい顔してるときもあるって」
「うはははっ、ありえねー!」

(ぐっ、えふっ、ふっ)

 エアリスはとうとう俺のチンポを喉につかえて、むせた。
 ベンチの連中が盛り上がってたおかげで気づかれなかったけど。

「レイニーに発情してんの? あのライトニングさんが? 超ウケるって、それ」
「いいな。俺もライトニングさんとエロいことしてーなー」
「俺もライトニングさんだったら、余裕でカノジョ捨てるわ」
「つーか、カノジョ自慢うぜーぞ」
「ライトニングさんにぺろぺろされてー」
「今頃、レイニーの咥えてたりしてな」
「うわっはっはっ、昼間っから何言ってんの、おまえら」

(…………)

 エアリスは顔を真っ赤にして、尖った枝を握りしめる。
 俺は、そんな彼女の顔を股間に抑えつける。ダメだダメだ。学院で流血沙汰はダメなんだ。
 じゅぶぶ、じゅぶ、ぢゅぶ、ずずずっ。
 エアリスは開き直ったのか、派手な音を立ててしゃぶりだす。「昼間っからぺろぺろしてますが何か?」と言わんばかりに、口元の形が変わるくらいに吸い込み、強烈なフェラを繰り出してくる。
 やばい。この音はやばい。あいつらに聞かれる。

「まあ、落ちこぼれのアイツにそんな美味い話があるわけねぇけど」
「俺らなんて、アイツに比べれば全然マシだぜ。エンドロールにもすぐ捨てられるんだろ、どうせ」
「そろそろ行くかー」

 おしゃべりにあきたのか、ベンチの連中は立ち去っていく
 ぢゅぶぢゅぶぢゅぶ、ずずずっ、れろれろっ。
 バレなかったのはよかった(あと流血事件にならなくてよかった)けど、エアリスはますます音を大きくして俺のフェラに没頭する。
 あっという間に俺は果てた。じゅるじゅるとエアリスに飲み込まれながら、全部出しきった。
 怒涛のような愛撫に流された感はあるが、大変満足なフェラだった。

「申し訳ありませんでした!」

 しかし、俺の尿道の残滓まできれいに吸い取ってから、エアリスはその場で土下座をした。

「え……ど、どうした?」
「あんな連中に、好き放題に言わせたあげく…ッ、私たちの関係を疑われるような手落ちまで! この上は、奴らを全員斬首したのち、腹をかっさばいてお詫びを!」
「どうした、しっかりしろ! ここは東洋国の前幕府時代じゃないぞ!?」

 涙をぽろぽろ流しながら、エアリスの土下座は続く。
 さすがというか、教科書に載せたいくらい美しい土下座姿勢だが。

「あ、あと……」

 耳の後ろまで真っ赤にして、ぷるぷる震えながら、身を縮こまらせてエアリスは言う。

「じゅ、授業中に……エロいことを考えてしまい、本当に申し訳ありませんでした……ッ」
「いいって、いいって、気にしなくても! みんな授業中にエロいこと考えてんだから、気にすることないんだって!」

 これは俺がなんとか丸く収めるしかない。
 エアリスやモモとの関係や、学校で俺がからかいの対象のなっていることも。
 俺に関係する人間が増えてきたんだから、俺も自分のことだけ考えればいいってわけにはいかないんだ。

「それじゃ、実際に炎の魔法をここに浮かべてみせるわ」

 魔眼鏡にダークスーツで、今日もクールに決めてるフェイバリット先生が、教壇の上に大きな炎魔法を浮かべる。
 燃料も種材もなしに、ただの空間に炎を浮かべ続ける先生の魔術に、生徒たちは小さく感嘆の声を上げる。

「魔力量の配分と調節で、色を変えることもできるの」

 赤い炎がオレンジになり、青くなり緑になる。ゆらゆらと形を変えながら、一定の火量でそれは燃え続けている。
 学生文化祭で、花火師も顔負けのドラゴン花火をいくつも飛翔させた彼女のことを俺たちは知っているので、今さらこのくらいで驚いてもいられないが。
 それでも、炎の揺らぎ越しに見る彼女の美しさには、ため息が漏れる。『炎のフェイバリット』という、シンプルだが魔法の一系統を独占する大胆な通り名を、この国で許されているのは彼女だけだ。視力を落としてさえいなければ、今も情報部隊でそれなりの地位に就いていただろう。
 ちなみに彼女の視力が落ちた理由は、俺だけが知っている。深夜の読書のせいだ。

「机を避けて、教室の真ん中を空けて。輪になって集まってちょうだい」

 珍しい指示にみんな戸惑いながらも、言うとおりに動いていく。
 キャンファイヤーを囲むみたいに、フェイバリット先生の火球の周りに集り、腰を下ろす。カーテンまで引かれ、教室は炎の揺らめきだけに照らされている。
 対象との距離は出来るだけ均一の方がいい。その方が、全員に同じ誘導が出来る。
 フェイバリット先生との打ち合わせどおりに、ここまでは進んでいた。

「今日は、面白い実験をして見せるわ。しっかりと炎を見て」

 俺の方をチラリと見てから、フェイバリット先生は続きを始める。

「魔法の炎は、普通の炎と違う。これは説明しなくても知ってるわね。火の性質は持つけど、実際は火ではなく魔力そのもの。空気がない場所でも燃えるのが魔法です」

 ヒールの音を響かせて、フェイバリット先生が炎の周りを歩く。
 彼女の後を追うように火球はフレアをくねらせ、そして彼女の後を追うように男子の視線が尻に集中する。

「魔力の塊なのですから、応用によっては、破壊以外のことにも使えます。出席番号12番、例えば?」
「えっと……極寒の地で暖をとったり?」
「21番」
「お料理にも使えます」

 さすが、教師だけあって多人数を話に導くのも手馴れている。
 俺にも出来るだろうか。先生みたいに上手に。

「もっと、魔法らしい使い方もあります。それは魔力と未来の占定です」

 魔力と未来の占定。
 聞いたことのない言葉に、生徒たちは少しざわつく。

「レイニー・ブリスルスハート」
「はい」
「あなたには、この炎が何色に見えていますか?」

 さらにざわつく。炎は赤い。誰が見てもそうなのだから。

「赤です」

 俺は即答する。先生もうなづき、生徒たちは今のやりとりの意味を図りかねて顔を見まわす。

「みなさん、これからは、私が指示した人以外は、絶対にしゃべらないでください」

 ぴたりと、ざわつきが止む。いつも以上に特殊なこの雰囲気が、生徒たちのコントロールを容易にしていた。

「エアリス・ユウナ・ライトニング」
「はい」
「あなたにも、この炎は赤く見えていますか? 静かに。他の生徒はしゃべらないで」

 生徒たちは狼狽しながら、戸惑う視線をエアリスに集中させる。
 注目を浴びるエアリスは、炎を見つめ、困ったような顔で答える。

「私には、青色に見えていますが……」

 ざわ、と一瞬教室が動揺する。
 
「静かにしなさいと言っているでしょう」

 しかしフェイバリット先生が動揺も許さない。
 混乱し始める空気を無理やりねじ伏せて、次の生徒の名前を呼ぶ。

「キザオス・スネオホネカー」
「はい」
「あなたには、何色に見えていますか?」
「黄金色に輝く竜気がとぐろを巻いているように見えますね」

 キザオスはドヤ顔でそう答えた。みんな目を剥いてた。
 あいつは本当にバカか。ぶち壊しにするつもりか。あとで覚えていろよ。

「お静かに。これが魔力と未来の占定です。自分には何色に見えているか、みなさん言わないでください。どの色が何を示すかは言いませんが、見えている色によって、その人の素質と可能性を量ることが出来ます」

 ……誰もが、息を飲んだ。
 魔術によって作られた炎に、そんなことが出来るなど誰も聞いたことがない。6年生にもなって急に教わるはずもない。もちろんウソだ。
 だが『炎のフェイバリット』が真顔でそれを言い、そしてエアリスとキザオスという優等生が保証することで、教室はそのウソに飲み込まれた。
 炎は、もちろん赤だ。
 誰にだってそう見える。エアリスとキザオスには、実際と違う色を適当に答えてくれと頼んだだけだ。
 そして、俺と同じ色にしか見えていないということは、言わずもがな残念な結果だと誰もが思っているだろう。
 どうしても違う色を見つけようと、みんな、躍起になって炎に集中している。

「レイニー・ブリスルスハート」
「はい」
「本当に、赤にしか見えませんか?」
「はい、赤です」
「そうですか……」

 困ったように、フェイバリット先生は口元を隠す。生徒はさらに不安にかられたように、先生に注目する。

「もっと、よく見てみましょうか。炎に集中して、違う色を探してみなさい」
「はい」

 フェイバリット先生と打ち合わせしていたのはここまでだ。
 これから先は、他の連中の反応をみながら、俺が即興で組み立てていく。
 この教室で俺をバカにする者をなくし、エアリスやフェイバリット先生との関係も黙認させる。一人ずつにそんな催眠をかけて回っては、卒業まで間に合うかどうか。
 だったら、やるしかない。総勢40名の一斉催眠。
 いきなりの離れ業だが、そろそろ試してみるのも悪くないだろう。おっさんだって、小隊相手に一人で戦ったんだ。それに比べれば、教師が味方の俺は有利すぎる。
 現にここまでは楽勝だ。
 あとは、俺の腕の見せどころだ。

「……よく見ると、炎の中心に銀色が見えます」

 俺がそういうと、みんなの視線が炎の中心に集まるのを感じた。

「いや、ズレた? 右に移動しました。右上に動いて、左下へ。ぶれながら広がっていく感じです」
「いいわね。しっかりと炎に注目しなさい」

 フェイバリット先生は俺に調子を合わせて、さりげなく俺の近くに立つ。

「消えた……かな? でも、まだ何かを感じるような……」

 ぽっ、と炎の中心近くに紫色が浮かぶ。生徒の何人かが声を出しかけた。フェイバリット先生のアドリブもなかなかやる。俺はあえて、それに気づかないふりをして話を続ける。

「ただの赤、ですね……さっき見えた気がしたのは何だったんだろう」

 紫色は、揺らめきながら左へ移動する。そこから斑点のように紫の場所を増殖させていく。

「あれ?」

 俺はさりげない風を装って立ち上がる。フェイバリット先生は「何か見えましたか?」とさらに俺に近づく。
 制服の袖の、黄色のラインを指差す。先生は、ちらっとだけそれを見て、炎にさらに変化を加えた。

「いや、気のせいでした。炎は赤です」

 黄色に変色していく炎を見て、生徒たちは安堵していく。フェイバリット先生は空気を読んで、さらに揺らめきを大きくさせる。

「……いや、やっぱり、変だ。なんだろう、あれ。炎の奥に、人が見えます」

 俺は額に手をかざしてさらに中心に視線を集める。フェイバリット先生には何もしないように制して、ゆっくりと火球の周りを歩く。炎を見ているふりをして、生徒の表情を一人ずつ確認する。エアリスやキザオスのように催眠慣れしているやつは、俺の声を聴いているだけで焦点を喪失していた。だが、まだほとんどの生徒は平常の意識レベルだ。

「小さな、とても小さな人だ。そこに焦点が合わなきゃ見過ごすくらい淡い影。視点をそこに合わせるのは大変かも。でも、これは大事な変化な気がします。そうですね、フェイバリット先生?」
「……ええ、そうね。良いところに気がつきました」

 先生も、すでに半催眠状態だ。
 うっとりとした声で、俺の後に従う。

「続けてもいいですね?」
「ええ……そのまま続けなさい、レイニー・ブリスルスハート。他の者も黙って聞くように……」

 俺はゆっくりと呼吸を整え、みんなに向き直る。

「……人影は、男性だ。自信はないけど。ひょっとしたら、見る者によって影は違うのかもしれない。俺には、孤独に立っている男が見えるだけだ。ひどく寂しそうに、一人で立っている。でも」

 俺はクラスメートを適当に指差す。将来は魔術隊を目指している女子だ。

「例えば、おまえには魔術隊の制服を着た女性が見えていないか? これが未来を占定している影だとしたら、将来なるべき姿が映っているのかもしれない。よぉく見てくれ。いや、先生はしゃべるなと言ったから答える必要はない。強く念じた未来が映っているかもしれないと思っただけだ。そう、例えばおまえには」

 俺は、近衛兵になりたかったと昼休みに言っていた男子を指す。

「何が見える? ひょっとして、近衛兵隊に入って王家のお側に仕えているとか言わないよな? そんな未来が、可能性が見えているとしたら、すごいことだぞ。よく見ろ。おまえには見えているんじゃないのか?」

 誰かが唾を飲み込んだ。そいつにはもう自分の夢が炎に映っているのかもしれない。表情が緩み、焦点が消えかかっていた。

「おまえは」

 俺は、かつて闇魔法の素質がありながら、挫折した男を指す。
 
「何を見ている? もしかして、闇をまとう自分か? すげーかっこいいな。そんなの衛兵を飛び越して一気に魔研か情報部だろ。才能が花開くとそうなってるんだよな。そうなるっていう可能性が、この炎の中にあると信じることができれば。信じて、炎の中へ自分を浸すことが出来れば」

 フェイバリット先生に目配せをする。
 彼女は炎の中に小さな黒点を作る。モモの光魔法のように精密な人影には見えないが、確かに存在する黒を。
 とろんとそいつの視線が落ちた。そして、連鎖するように催眠が広がっていく。
 暗示は伝播する。隣から隣へ。俺はまた一つ催眠の技術を理解した。
 おっさんは時間もなかったから俺に一対一の催眠しか教えてくれなかったが、複数人を同時に落とす技術もあるのは確かだった。そうじゃなければ、おっさんは俺に会う前に死んでいるわけだし。
 でも俺にもわかった。人間は同調する生き物だ。根気よく、見落とさないように一人ずつ導いていけば、横から横へと結ぶルートは必ず見つかる。そこから繋いでいける

「未来に集中して、意識を動かすな。そのことだけを考えていれば、必ず見える。炎に身をゆだねて。力を抜いて。余計なことを考えないで想像するんだ。未来が見える。なりたいことを考える。なった自分を想像する」

 エアリスは、唇を引き締めて胸に手を当てた。忠誠を誓う仕草だ。誰に誓ってるんだろう、なんて野暮なことを俺は思ったりしないぜ。
 キザオスは、口元に笑みを浮かべて、よだれを浮かべていた。おう。俺も男だから、野暮なことは言わないぜ。
 クラスの全員が、それぞれの夢に浸っていた。俺たちは学生だ。未来に夢なら売るほどあるぜ。
 だからこそ、それは弱みでもあるんだ。

「でもそれは、エアリスとキザオス以外の、最初に赤い炎が見えていたようなやつには厳しい未来だ。俺と同じレベルの未来しかない」

 見渡す。瞬時に反応を見せた生徒はいない。だが、少しずつ表情を曇らせる生徒が増え、やがて先の二人以外は全員、同じ顔になる。

「未来には引き換えが必要なんだと思う。自分の幸せは他人を幸せにしないと巡ってこないと、昔、学校の先生が言っていた。このクラスで誰か、不幸な人間を幸せを分けてやらないとダメだ」

 想像させる。このクラスで一番不幸なやつは誰か。未来に孤独しか待っていないと、言ったのは誰か。

「そいつの幸せって、なんだろう。俺たちにどんなことが出来るだろう。ちょっと考えてみないか?」

 ぽかんと口を開けたまま炎を見つめている生徒たちに、言って聞かせるようにゆっくりと俺は説いて回る。

「たとえば、そいつの悪口を言ったりしない。バカにするのも止めて、クラスメートとして認める。それに、そいつには恋人が何人かいるかもしれない。この教室の中では、そいつが誰とイチャついても何も言わない。からかうのをやめる。たったそれだけでそいつは幸せだ。それと引き換えにみんなも幸せになるかもしれない。それって、すごく簡単なことじゃないか?」

 ゆっくりと頷く生徒が数名。ぼんやりと炎に集中する生徒がほとんど。この反応にそれほど差はない。俺の言葉が無意識の中に突き刺さっていることは、間違いないと確信できる。

「今日からそれを始めよう。具体的には、そいつに好意を寄せているのはエアリス・ユウナ・ライトニングとモモ・エンドロールの二人。他にも増えるかもしれないが、この二人がそいつとどれだけイチャついていようが、見なかったことにして幸せを祈ろう。それがみんなの未来の肥やしになるんだ。そして」

 フェイバリット先生の肩を抱き、みんなの前で体を寄せる。
 
「もちろん、担任のフェイバリット先生もそいつのことがすごくお気に入りだ。贔屓しまくりだ。でも、それぐらいは不幸なその男のため、見なかったことにしよう。どれだけイチャイチャしていても、それはあたりまえのことだとしよう。みんなの幸せのために」

 うっとりとして微笑みを浮かべ、先生が俺に寄り添ってくる。
 俺は彼女に耳打ちする。セックスをしようって。

「……もちろんいいわよ、レイニーちゃん」

 そういって彼女は俺にキスをする。クラス全員が見守る、美しく輝く火球の灯りの下で。

「あんっ」

 首筋に痕が残るほど口づける。フェイバリット先生は甘い声を出し、自分から襟元を広げて俺に差し出す。どれだけ痕を残しても構わないと。

「私のレイニーちゃんよ……みんな、この子のこと大事にしなきゃダメ。うちのクラスの宝物なのよ……」

 彼女のスーツを脱がせていく。生徒たちは火球に注目している。淫らに絡み合う教師と生徒の上に。
 スーツの下から、すぐに先生の豊満な胸元があらわになる。大人の女性の色気と迫力は、俺みたいな学生の眼にはいつも強力だ。それを先生は、俺の手を取って「好きにしなさい」とでも言うように乳房に指を食い込ませる。

「みんなが見ているわね、レイニーちゃん……」

 うつろな視線をしている生徒たちに、彼女の美肉は映ってはいても、脳にまで届いているかは怪しいものだ。それでも、クラスメートの見ている前で担任教師と淫らなことにふけっていると思うと、ますます興奮した。

「みんなが見てても、セックスしたい。お姉ちゃん」
「あぁ、いいのよ、レイニーちゃん。あなたがしたいのなら、お姉ちゃんはいつでもいいの。可愛いあなたのためなら、生徒たちの見ている前でだってお股を開いてあげるわ、あぁっ」

 スカートの中に手を突っ込むと、そこはもうびっしょりと濡れていた。
 生徒の前で淫らな自分を見せることに、彼女も興奮していた。

「お姉ちゃんのオマンコ、すごいことになってる」
「ん、ダメ、レイニーちゃん、そんなこと言っちゃダメぇ。お姉ちゃん、恥ずかしいわ、あぁんっ」

 指を入れると、飲み込まれるみたいに入っていく。熱くどろどろとした液体が、指を伝って外まで垂れていく。

「お姉ちゃん、どろどろだよ。俺の指がふやけちゃう」
「んんっ、だって、レイニーちゃんの指が、やんちゃすぎるから、ダメ、お姉ちゃん、学校でこんなにエッチな気分になっちゃダメなのに、もうっ!」

 いつもクールで、男のあしらいにも慣れた大人の先生が、俺の前では甘々な姉になる。
 生き別れの実の弟(ショタ美少年)との禁断の関係。淫靡な妄想に陥った天才魔道師は、俺の前でだけ教師の仮面を外し、スケベな本性をさらけ出す。

「可愛いわ、レイニーちゃん。あなたになら、何をされてもいい。今まで寂しい思いをさせた分、お姉ちゃんには思いきり甘えてもいいんですからね。あっ、あっ、オマンコも、おっぱいも、好きなだけいじって、あぁんっ、お姉ちゃん、もう、レイニーちゃんにしか触らせないから、そこ、あぁっ!」

 どういうきっかけで、こんな趣味に目覚めるんだろうな。
 ただのイメージプレイとして始めた関係なのだが、今では彼女も妄想と現実の境界があいまいになり、俺のことを一生面倒みるようなことも言うようになっている。

「みんなも、レイニーちゃんの言うことは、ちゃんと聞きなさいっ。レイニーちゃんをいじめた子は、退学ですからね。あぁ、私の可愛いレイニーちゃんのためなら、何でもするのよ…ッ、んんっ、あんっ、女子のみんなも、あぁ、レイニーちゃんに、優しく、優しく……何でもしてあげて、この可愛い子に……んんっ」

 唇を重ねて舌を絡ませる。
 こんな美人教師にここまで可愛がられるなんて、俺の学校生活も悪いもんじゃなかったね。
 でも、そうだな。うちのクラスの女子もなかなかっていうか、わりとレベルの高いクラスだ。エアリスとフェイバリット先生がダントツすぎてあまり考えたことなかったけど、他の女子にもイタズラくらいはしてもいいよな。

「みんな、聞いてのとおりだ。未来がもっとも不幸な男は、俺、レイニー・ブリスルスハートらしい。でも、俺がみんなの将来の役に立つなら、喜んで不幸な男を引き受けるよ。俺を幸せを分けてやると夢が叶うっていうなら、そうしてくれ。女子は、そうだな、エッチなことをしてくれると幸せになるかな。あぁ、もちろん強制なんてしない。嫌ならしなくてもいいよ。夢をどうやって叶えるかは、みんな次第だものな。ちょっとしたエッチなサービスでも嬉しいよ。だから先生にみたいにセックスまでさせてくれなくていいんだ。先生みたいになれるヤツなんて、そうそういないだろうし」
「そんなことないわ、レイニーちゃんにセックスしてもらうといいのよっ。だって、私がこうして『炎のフェイバリット』とまで呼ばれるようになったのは、レイニーちゃんのおかげだもの。ただで夢を叶えようなんて、ずうずうしいこと考えないほうがいいわ。魔法も恋も、レイニーちゃんとエッチなことして初めて手に入るの。んっ、レイニーちゃんのオチンチンを、みんなで幸せにしてあげないと……」

 俺の股間を擦りながら、先生は熱っぽく息を吐く。
 オンナの匂いが濃くなって、目つきが妖しく蕩けていく。

「レイニーちゃんに抱かれると、人生が変わるのよ……」

 先生のスカートを脱がせて、下着も脱がせる。床に膝をつかせて、尻を開く。
 むっと匂いが濃くなって、だらだらと垂れてくる液体がむっちりした太ももを伝う。みんなが輪になって見つめる教室のど真ん中で。
 非常識極まりないこの光景に、俺がどうにかなりそうだ。
 俺は先生のそこを指で広げる。

「女子は全員、先生のオマンコに注目」
「え、ダメよ、レイニーちゃん。私のオマンコはレイニーちゃんのものなのに……」

 イヤイヤと先生は尻を振る。
 逆に見せつけるように。

「女子はこのオマンコをよく見ろ。吸い込まれるくらい見ろ。どうだ、きれいだろ? いやらしいだろ? じゃあ、次に自分の穴と、先生の穴が繋がるところを想像するんだ」
「あぁ、先生の穴で女子に性教育よ……男子は外でドッヂでもしてらっしゃい……」
「この穴はおまえらの穴。濡れてびしょびしょで気持ちよさそうだろ? これが、自分の股間に貼りつくところを想像しろ。取れない。絶対に取れない。しかも、この穴で感じたことはみんなのものになる。この気持ちよさそうに濡れてるマンコは、おまえらのマンコだ」

 女子の数名が声を上げる。エアリスはすでに達したみたいに艶めかしい声を上げる。
 胸を掻き毟ったり、股間を擦り合わせたり、徐々に反応は広がっていき、女子全員がフェイバリット先生のオマンコを共有する。

「男子は、後ろに下がって。もっとだ。女子に何かあっても邪魔しないように。そうだ。そのくらい離れてろ」

 そして、女子に見せつけながら、フェイバリット先生のアソコを指でかき回していく。
 汁を飛ばしてひくつくソコのいやらしさに、女子は恥ずかしそうに吐息を漏らし、それぞれの股間に手をやる。
 エアリスは、切なそうに眉間にしわを寄せ、口を「お」の形にして震わせていた。
 他にも唇を引き絞って声を我慢をする子や、我慢できずにエロい声を出しちゃう子。中には、自分でおっぱいを揉んでいる子もいた。
 全員とエッチしているみたいだ。すげぇエロい。

「いくぞ」

 ズボンを下ろして俺のペニスを見せつける。
 そして、フェイバリット先生のアソコに、後ろから荒々しく挿入した。

「あぁぁぁっ、入ってくるぅ!」

 痙攣しながら締め付けてくるフェイバリット先生の膣に、俺も歯を食いしばって堪える。
 同時に、まずエアリスが大声を上げて後ろに倒れ、その他に数名も痙攣するように飛び上がり、床を転がった。
 どう反応していいかわからない子がほとんどらしく、もじもじと尻を浮かせたり、歯を食いしばったりしている。
 期せずして、うちのクラスの処女率を知ってしまった。意外と6年生でも処女多いのな。

「あぁぁ、レイニーちゃぁん……」

 うっとりと締めつけてくるフェイバリット先生のアソコ。
 炎魔法の得意な女は膣の温度が高いって都市伝説あるけど、本当のことなんだぜ。熱くてトロトロのシチューが、膣の中で絡みついてくるんだ。
 エアリスは、俺に向けて股を開いて、ひくひく痙攣していた。
 四つんばいの体勢で、俺たちの結合部を凝視する子もいれば、下着の隙間から指を突っ込んでしまった子もいる。
 真っ赤な顔して、じっと俺たちを見ている子がほとんどだ。感覚がまだ上手く想像できていないんだろう。

「あぁっ……あーっ……レイニーちゃん、優しい動き……」

 ゆっくり抜いて、入れる。どのくらい入っているのか、どのくらい先生が濡れているのか、みんなから見えるように。
 エアリスは股の間からそれを見て、切なそうに声を上げる。四つんばいの子は俺たちに合わせて腰を揺らす。指を入れている子も自分で動かす。
 こっちに尻を向けて下着を脱いでしまう子もいた。本格的にオナニーを始める子もいた。スカートをたくし上げ、俺に下着を見せながら腰を揺らす子もいた。
 処女の子だってセックスには興味ある。初めて目の当たりにする本物のセックスに自己投影し、それぞれの行為に没頭する。

「あぁっ、レイニーちゃん、あっ、あっ、強いわっ、すごいっ!」

 全員が引き込まれているのを確認して、腰の動きを速める。
 フェイバリット先生は嬌声を上げ、自らも腰を振る。
 エアリスも正常位みたいに自分で膝を抱え、腰を揺さぶって俺の名を呼ぶ。みんなも俺に突かれているみたいに腰を揺らし、可愛い声を上げた。
 セックス体験のありそうな子たちは、自分にも入れて欲しそうに俺にオマンコを見せつけてくる。処女の子だって、負けじとおっぱいを揉みながら、快楽に喘いでいる。
 女子全員が、それぞれの気持ちの良い格好とやり方で、オナニーを披露しながら、空想セックスにのめり込んでいった。
 大人しそうな童顔の子が、自分の尻穴に指を入れていてちょっと驚いた。レズみたいに、股間を擦りっこする仲良しさんたちもいた。
 フェイバリット先生の、肉付きのすこぶる良い尻を掴んで、腰を動かす。教室の中に俺たちのセックスの音が響き、煌々と輝く火球が温度を上げる。
 魔術教室は、炸裂音が鳴ることもあるので、防音はどの教室よりも効いている。さすがにこれだけの大騒ぎになるとどうかは俺も知らないが、今はそんなこと心配している余裕もない。

「あぁっ、いいっ、レイニーちゃん、いいっ。みんなも、こんな風に、レイニーちゃんにさせてあげるといいわっ。夢を叶えるってそういうことよ。今、やっておかないと後悔することよ! あぁっ、あぁっ!」

 興奮に乱れる彼女の痴態に、俺とのセックスの想像に、クラスは染められていく。
 みんなの無意識に、強烈にこの光景が浸透していく。

「いいわっ、いいのぉ! みんなにも、教えてあげたいっ。私のレイニーちゃんがどれだけ可愛い子なのか、みんなにも知って欲しいわ! 最高よ、最高なの! もう他の男なんて知らないっ。レイニーちゃんのオチンチンだけでいいのっ。満足なのっ、離れられないのっ。愛しているのよ!」

 床に手をついて、尻を持ち上げるフェイバリット先生。
 この異様な状況に、早くも射精感は高まっていく。
 
「あぁっ、あぁっ、レイニーちゃんのが、大きくなって、ぴくぴくしてるっ。もう出るのね? 気持ちよくなったのね? 早く出したいのね、レイニーちゃんっ?」
「うん、出る……出していい、お姉ちゃん?」
「いいのっ、いいのよ、もうっ。お姉ちゃんなんて、さっきから何回もイッてるんですからねっ。んっ、そこ、そうよ、そこ、今、オチンチンでコツコツしてるのが、お姉ちゃんの子宮口なのっ。そこにいっぱい出したら、お姉ちゃんが妊娠するのよっ。だから、あっ、そこ、そこなの、そこに出してね、レイニーちゃんっ。ちゃんと出せる? そこを狙って、いっぱい出すのよ、あぁっ! あぁ!」
「ここにいいの? お姉ちゃんを妊娠させていいの?」
「あぁ、あぁんっ、あたりまえじゃない、弟の赤ちゃん産むのがお姉ちゃんの仕事なのっ。だから孕ませてっ、レイニーちゃんっ。お姉ちゃんに、弟の赤ちゃん産ませてっ。赤ちゃんっ。弟の赤ちゃんっ。可愛いショタの赤ちゃん、お姉ちゃんに産ませてぇ!」

 フェイバリット先生の中で、射精する。
 すぐそこにある子宮口にびしゃびしゃと精液がぶつかり、彼女もぶるぶると震えてそれを受け止め、長い悲鳴を上げる。
 エアリスも膝を抱えたまま絶頂に達して下着を濡らし、俺にアソコを見せながら腰を振っていた子たちもいっせいに達し、尻オナしていた子もびくんびくんと痙攣し、レズプレイにハマってた子たちもお互いの足を抱きながら大声を上げていた。
 催眠術で繋がった女子全員と、俺はセックスの快楽を共有して達する。
 興奮していたせいか大量に出てくる精液は止まることなく、結合部から大量に溢れ出て、同級生の見守る前で、神聖なる教室を汚していく。

「あぁっ、ショタっ子の妊娠液、子宮の中に入っていくっ、お姉ちゃん、妊娠しちゃうっ、生徒が見ている前で、ショタっ子妊娠しちゃうっ、あっ、あっ、やだ、イク、またイッちゃう、お姉ちゃん、イッちゃうぅぅぅ!?」

 そういって、また勝手に達してしまい、フェイバリット先生はみっともない顔を教室に晒す。
 何度も何度も痙攣をして、最後には潮まで吹いて、先生は失神してしまった。
 ゆっくりと先生から引き抜く。そして大きく呼吸をすると、濃厚なセックスの匂いが鼻に入ってきた。
 見渡すと、女子も全員達してしまい、下着はびしょびしょ、床も濡れ濡れだ。
 さて……どうやって後始末すればいいんだろう。

 そんな感じで、平和な学院生活を送っている。
 エアリスやモモが休み時間に俺とイチャついていても、つべこべ言うやつはいなくなった。クラスメートから『落ちこぼれ』と呼ばれることもなくなった。
 フェイバリット先生にいたっては、授業中にあからさまな俺贔屓や、露骨にベタベタしたりキスしたりしてくるが、教室内ではそれも不問にされている。
 そういやクラスの女子からも、俺に対するアプローチが始まってた。
 いろんな子が下着をチラ見せしてきたり、すれ違うときにさりげなくおっぱい押し付けてきたりとか、可愛いサービスが行われている。
 放課後はエアリスとモモとフェイバリット先生を日替わりで抱っこし、時には3P、4Pなんかも楽しんで、あと、たま~にキザオスなんかとも遊んだりして、なんだかまるで現実の充実した学生みたいだなぁ、と勘違いしそうになる毎日だった。

「レイニー様」
「うぇーい。お、アリスエーじゃん。今日もかわうぃーねぇ」
「恐縮です。あの、レイニー様の本日のご予定を伺いしてもよろしいでしょうか?」
「うぇい? うぇいうぇい、ちょっと待ってよ、手帳めくるわ。うぇーい。あ、今日はキザオスらとクリフットボールな。こないだ仲間とチーム作ってコート借りたんだわ。俺らがやるって言ったら、マネージャーやりたいって子も結構集まっちゃってさー、うぇいうぇいっ」
「やはり、そうですか……その、大変申し上げにくいのですが、今日の放課後は私に剣の鍛練をしてくださると、先週お約束していただいていたはずですが……」
「あれ、それ言う? そーゆーこと言っちゃう感じでいくわけ?」
「えっ、あの、もちろん不満などではなくて、その、最近、かまっていただいてないので、少し不安といいますか……いえっ、レイニー様はお忙しいですし、私は全然かまわないですっ」
「それな。俺、アリスエーのそういう奥ゆかしいこと大好きな」
「いえ、そんな、私はただの恋奴隷ですしっ」
「それじゃおまえに、特別に俺のダンス見せてやるよ。うぇーい、うぇいうぇい、うぇーい」
「エアリス先輩、その気持ち悪い人から離れてくださいっ!」
「イテッ!?」

 ぴこっと、変な音を立ててハンマーが落ちてきた。
 モモの光魔法だった。

「何をするんだ、モモっ!」
「その気持ち悪いクネクネした動きで何をしたいのか、こっちが聞きたいくらいですよ! レイニー先輩、最近調子に乗ってませんかっ。なんなんですか、その気持ち悪い喋り方は。髪型は! ぜんっぜん似合ってませんから!」
「え、似合ってないの……?」
「モモ、よせ。ご主君に手を上げるのは、いくらおまえでも許さないぞ」
「いいんですっ! レイニー先輩はこれくらいやってやらないとわからないんです。最近の先輩、はっきり言ってキモいです!」
「キモいだって? ちょ、ちょっと、いや、うぇいうぇい、うぇいうぇい。ありえないっしょ、この俺が?」
「ええ、その似合いもしないリア充気取りがとにかくキモいんですってば! 先輩はもっと、ダサくて、ひねくれてて、ギラギラした野望に燃えていないと、逆にかっこ悪いんです!」
「今の俺が、かっこ悪い……?」
「かっこ悪いです、調子こいてるだけの腑抜けです! がっかりです、私、先輩のこと見損ないました! そんな先輩、見たくないっ。先輩なんて、さっさと屋上に行って地面に肉魔法しちゃえばいいんですよっ」
「……モモ……」

 確かに最近の俺は、出世とか、そういう野望を忘れかけていた。
 友だちも増え女子にもモテ、俺って充実した人間なんだと思って満足してしまっていた。その手のチャラい連中を軽蔑していたはずのこの俺が。
 でも、言われてみると思い上がってしまった自覚もある。
 エアリスたちとやりまくりなのはもちろんだが、クラスの女子のエッチなサービスもエスカレートしてきて、校舎裏に呼び出されて「おっぱい触っていいよ」とか、放課後の教室で女子二人と交互にキスとか、だんだんと内容の豪華さを間で競われるようになって、それがうちのクラスの流行みたいになっていた。
 そうなると限度がないというか、ある日、わりと可愛くておとなしめの子が、ていうか例の尻オナの子なんだが、彼女が思いつめた顔で、「レイニー君に処女あげます!」なんて言ってきたりしたものだから、「さすがにそれはやめとこうよ」とクールに諌めたりして、ちょっとこの盛り上がりようはヤバいよなと思ってたんだ。
 そのときはまだ。
 だけど、キザオスたちとグループで遊んでいるうちに、その中の派手で明るい女子たちと、遊びのノリでセックスもしちゃって、ついでに催眠術で超快感をプレゼントしてやったら、みんな俺にハマってセフレみたいのが何人も出来ちゃって。
 そういうのもクラス黙認みたいな空気なもんだから、休み時間もオラオラ言ってその子たちのオッパイ揉んだり尻触ってキャーキャーいわせて、超リア充っぽく遊んでたら、こないだの尻オナの子が、「やっぱり私も仲間に入れて欲しいです」と言うんで、結局、やっちゃったとか。

 あ、そのへんはもうちょっと詳しく回想してみるけど、尻オナの子、どうしても俺に抱かれたいっていうんで、寮に連れ込んだんだよ。スレンダーでおっぱいも小さめだけど、きれいな肌をしていた。

「どうして、俺に処女までくれる気になったの?」
「……魔法の成績上げたいから」
「でも、おまえってそんなに成績悪くないだろ。魔術隊にも行けそうじゃない? どこ目指してるの?」
「い、いいのっ! とにかく、レイニーくんとエッチするの。他の子たちみたいに」

 キザオスの取り巻きで、きれいめで教室内でも目立ってた女子たちは、今はみんな俺のセフレみたいになっている。休み時間にもエロいイタズラとかしてイチャイチャしているから、クラスのほとんどはそのことに気づいている。
 俺にどこまでエッチなことさせるかがブームの同クラの女子たちにとっては、先端を行く女たちだ。そういう女の仲間になりたいと彼女は言ってきた。
 
「でも、処女なんだろ? すごい痛いらしいぞ」
「う、うん。痛いっていうよね……でも、がんばるから」
「そっか。俺の言うとおりにすれば痛くなくしてやれるけど」
「え、本当に? 本当に痛くない?」
「あぁ、このコインを見て。すぐに落ち着くはずだ」

 一度でもかかった経験のある子たちは、導入もあっという間だ。
 催眠状態にしてから、俺が指を鳴らすことで痛みが弱まるように暗示をかけた。鳴らすたびに痛みが和らぎ、快感が生まれるように。そして、俺の指示に従うこと自体にも、快楽と優しさを感じるようにもした。
 それから催眠術を解き、全身を優しく愛撫してやった。

「四つんばいになって」

 アソコに湿り気を感じるようになったので、俺は彼女に尻穴がよく見える体勢になるように言った。彼女は恥ずかしがっていたけど、これが一番痛くない格好だって言ったら、しぶしぶ言うとおりにしてくれた。
 尻オナで使い込んでいるせいか、子どもっぽい体つきのわりに、頑丈そうな尻穴をしていた。

「挿れるぞ」
「う、うん。あの、本当に痛いの? すごく痛いんだったら、私、どうしよ――んんんんっ!? い、痛い!」
「もうすぐだから、全部入れちゃうな」
「やだっ、ちょっと待っ……い、痛いぃ!」

 ろくに濡れてもいないのに、ぶちぶちと処女の肉壁を剥いでいく。ぴったりと閉じていた膣道が、俺の形に切り拓かれていく感触は、何度味わっても気持ちいい。
 こんな落ちこぼれのウソに騙されてくれてありがとうって感じだ。

「い、痛いよ、すごい痛い……」
「そうか。じゃあ、俺の言うとおりにしなよ」
「うん」
「どうして、俺に処女をくれる気になった? 本当のこと言って」
「え、だから、魔法の成績を上げるために、レイニーくんにエッチで幸せになってもらおうって……」
「でも、まだ痛いだろ?」
「痛いよ。ズキズキする」
「本当のことを言ってないからだ」

 彼女は、顔を真っ赤にした。
 やっぱりウソだ。思ったとおりだ。

「本当のこと言わないと、いつまでも痛いままだぞ?」
「え、そうなの? 本当に、言った方がいいの?」
「いいだろうな。痛みがいつまでも続くと大変だ」
「……誰にも言わないでくれる?」
「あぁ」

 俺は、にやつきそうな顔を我慢するのに必死だった。
 唇を引き絞り、一大決心をしたような顔で、女の子は言う。

「私ね……キザオスくんが好きなの」
「へえ」
「言わないでね! 絶対にナイショにしてね!」
「いいけど。じゃあ、俺なんかに処女あげちゃってよかったの?」
「……いいの。私なんかじゃ、これぐらいしないとキザオスくんに近づけないし。だから、1回だけレイニーくんとエッチしようって思ったの」

 なんとなく、そんなことじゃないかなって思ってた。
 俺のセフレって、いわゆるキザオスグループの女子部だしな。
 仲間に入れて欲しいっていうのは、流行りに乗りたいとか、自分の将来の運にしたいっていうのより、文字通りキザオスに近づきたいってことなんだ。

「なるほどね」

 俺はパチンと指を鳴らした。彼女のお尻がピクンと震えた。

「正直に言ったから、少し楽になった。痛みが和らいだ気がしないか?」
「うん……少しだけ痛くなくなったかも」
「もっと楽になりたいだろ?」
「で、でも、こんな恥ずかしいこと告白するのはもう嫌だよっ。絶対にキザオスくんに言わないでね?」
「言わないって。今度は、違うことで試してみるから」
「どんなこと?」

 俺は、丸見えになっている彼女の尻穴に注目する。
 彼女はここに指を突っ込んでズボズボしてオナニーしていた。可愛い顔してえげつない光景だった。
 あれを、もう一度かぶりつきで観てみたい。男子なら誰でもそう思うはずだ。

「いつも、どういうオナニーしているか、やってみせて」
「へ? な、なに言ってるのレイニーくん!?」」

 みるみる顔が真っ赤になっていく。
 俺はそれでも真面目な顔で彼女に迫る。

「痛みをなくすには、それが一番いいんだって。俺の言うこと信じろって」
「……そんなこと、私はしないもん……」
「ウソを言えば、ずっと痛いままだぞ」
「あうぅ!?」

 軽く一突き、腰を動かす。
 処女をなくすっていうのは女子にとっては大変なことらしく、彼女は思いきり顔をしかめた。

「ほ、他の女子も、みんなこんなことしてるの……?」
「してるよ。処女って大変だもんな。痛みをなくすためには、みんなオナニーだってするよ」
「そうなんだね……」

 ウソだけどな。
 
「じゃあ、してみる」

 そう言って彼女は、自分で胸を触り始める。
 ゆっくりと、たどたどしい動きで、彼女自身はそれで快楽を得ていないのは明らかだった。

「ま、まだ痛いよ?」
「たぶん、またウソをついてるからじゃないのかな?」
「そんなことないよ!」
「でも、ホラ」
「あっ、痛いぃ!」
「ちょっと動かすだけでも痛いだろ。おまえがウソついてる証拠だって」
「うう……」

 彼女は困った顔をして、俺に懇願の視線を向ける。

「私が今からすること、絶対に誰にも言わないで。笑わないって約束して。お願いだから」
「あぁ。いいけど、どうするつもりなの?」
「…………」

 彼女は、自分の尻穴に中指を突き立てる。
 そしてゆっくりと、その指を沈めていく。

「うわ、すげえ」
「み、見ないで! お願いだから!」
「無理だって。俺の目の前におまえの尻があるんだもん。指がめり込んでるとこも、すげえ良く見える」
「やだもう、そういうこと言わないでぇ!」
「へえー、こういうオナニーする女子っているんだ? 初めて見るなあ」
「恥ずかしいよぉ、もう。お願い、絶対に誰にも言わないで…ッ!」
「言うわけないじゃん。でも、おかげで少し楽になったろ?」

 俺は指を鳴らした。
 彼女は、「あ、本当だ」と驚いたような声を出した。

「この調子で、素敵な初体験にしようぜ。どうせなら、いい経験をしたって思えたほうがいいしな」
「……うん。ありがとう」

 尻穴に指を突き立てたまま、彼女は感謝の笑顔を浮かべた。
 なかなか可愛くていい子じゃん。変態だけど。

「それじゃ、もっとオナニーしてみな。見ててやるから」
「うん。レイニーくんになら、見ててもらってもいいかも」

 どうせ、もう全部見られちゃってるんだし。と、処女の開き直りで彼女は深呼吸して、指を動かし始めた。

「すっげ。結構奥までずっぽりなんだな」
「は、恥ずかしいこと言わなくていいから。んっ、いつもより、きつい……」

 ズブ、ズブリと根本まで指が入り、穴の周囲を少しめくらせながら、再び戻ってくる。
 尻穴の何がそんなに気持ちいいのか正直俺にはわからないが、痛みが楽になった彼女は、普段どおりのオナニーに感じ始めているらしく、息が少しずつ荒くなっていく。

「ん、ふっ、あっ、んっ……なんか、中で硬いのに当たってる、んふぅっ」

 腸を隔てて膣内の俺のペニスに触れ、少し痛みもあるのか、彼女は眉をしかめる。
 俺は、二度ほど立て続けに指を鳴らした。

「ほら、やっぱり正直にオナニーしたら、気持ちよくなっていくだろ?」
「うんっ、だいぶ、楽っ、やだっ、なんか、声、上ずってきちゃうっ、恥ずかしい、レイニーくん、本当に、誰にも言っちゃいやよ…っ」
「わかってるって。気にせず気持ちよくなりな」
「んっ、優しいんだね、結構……あんっ、んんっ」

 好きでもない男に処女を捧げ、尻穴オナニーまでやらされているというのに、彼女はうっとりとした目で俺を見上げた。
 こういう純粋な子を騙しちゃってる罪悪感もあるが、少し照れくさいのもあって、俺は自分でも腰を動かすことにした。

「あっ、んんっ、少し痛いよ、んんっ」
「そうか。我慢できない?」
「ごめんね。私がお願いして初体験させてもらってるのに……」
「じゃ、おまえが動く?」
「え?」
「痛くないように、自分のペースで腰を使ってもらえばいいから」
「えっと。それ、難しいよ」
「いいから、やってみろよ」
「う、うん」

 ゆるゆると、彼女は腰を使い始める。腰というよりも、手足を踏ん張って、体ごと前後に揺らしている。

「んんっ、このくらいなら、平気かも……」

 ゆったりとしたペースで、尻が俺のを飲み込んだり吐き出したりを繰り返す。処女を散らした跡が、俺のペニスにスジを描いて前後する。
 尻穴に入ったままの指は、初めての子にはきつい運動をしているせいか、根本まで刺さった位置で止まったままだった。

「そっち、手伝ってやろうか?」
「え? んっ、ふっ、なに? ふっ、ふっ」
「尻穴の方、俺が指入れてやるよ」
「えっ!? いいよ、そんなことしなくても!」
「いいから、俺に任せておけって。その方がおまえも気持ちよくなるんだから。そうだろ?」
「うん……確かにレイニーくんの言うとおりにすれば間違いないと思うんだけど。でもさすがに、それは恥ずかしすぎるよっ。ばっちいし」
「平気だって。ていうか、俺の言うこと聞けないの?」
「そ、そんなことないよっ。でも……ううん、お願いします」

 彼女は、ためらった後、ずぷっと自分の尻穴から指を抜いた。
 少し拡がったままのその穴に、俺はすかさず2本の指を入れた。

「んんんんっ!?」

 彼女の尻はぎゅうっと力が入ると同時に、びくびくんと筋肉を痙攣させ、膣と尻穴を強く締めつけてきた。
 拡がりきった小さな穴の圧力に、指の血が止まりそうなくらいだった。

「お、男の子の指って、太いんだね?」

 まさか2本も入れられてるとは思ってないようだ。
 パチンと、もう片方の手で俺は指を鳴らす。
 
「あぁ。おまえの細い指より、ずっと気持ちいいだろ?」
「……よ、よくわかんないよっ」

 首の後ろまで真っ赤にして、声を我慢するように彼女は言った。

「正直になると、もっと気持ちいいって教えたろ?」
「んっ、んんっ!」

 指をゆっくり引き抜いていくと、びくっびくっと背中が痙攣し、反り返る。

「言えよ、正直に」
「……気持ちいい」
「もっと大きい声で」
「気持ちいいですっ」

 パチン。
 指を鳴らして、快楽のご褒美を与える。
 蕩けそうなため息を吐いて、女の子は尻穴を緩める。

「そのまま、さっきみたいに自分で動いて」
「はい!」

 ずぶ、ずぶ、俺のペニスと指2本が同時に彼女の体の中を出入りする。
 二穴を自分で責める感触に、彼女は悦びの声を上げた。

「もう痛くないな?」
「はいっ」
「尻穴とマンコを同時に擦る気分はどうだ?」
「気持ちいいですっ」
「正直な気持ちか?」
「正直な気持ちですっ」
「もっと早く動け」
「はいっ!」
「気持ちいいか?」
「気持ちいいですっ!」
「ちゃんと正直に答えているな?」
「はい、本当です! 言うとおりにしています!」

 良い返事をするたびに指を鳴らしてやる。
 条件付けされた動物みたいに、素直に俺の言うとおりにすることで快感を貰えることを覚えた彼女は、俺を媚びた瞳で見上げて、次の命令を待つ。
 まだ処女の鮮血を浮かべたままのオマンコと、男の指を2本も咥えた尻穴を、必死に振ってエサをねだっている。

「もっと早く動けって」
「はい、すみません!」
「『尻穴最高』って言え」
「尻穴最高! 尻穴最高です!」
「そんなに尻穴が気持ちいいのか?」
「気持ちいいです! 私の尻穴、気持ちいいです! ああ、あぁぁッ!」
「『尻穴最高、いえーい』って言えよ」
「尻穴最高、いえーい! 最高、いえーい! あぁ、気持ちいい! すごく気持ちいい! 尻穴、いえーい!」

 ぢゅぶ、ぢゅぶ、ずぼっ、ずぼっ。
 髪を振り乱し、シーツに齧りつき、処女の二穴を広げて男を擦りつける彼女。
 耳元で指を鳴らすたびに、びくっ、びくっと震え、ますます夢中になって乱れていく。

「いえーいって言って、ピースしながら尻を振れ」
「あぁっ、あーっ! 気持ちいい、気持ちひぃっ、尻穴、いえーッ! 最高気持ちいい尻穴、いえーいっ! あぁっ、あーっ!」

 ギシギシとベッドが彼女の動きで軋み、俺はただ膝立ちになってペニスと指を立てているだけ。それなのにたまらない快楽とこの光景に限界が近づいてる。

「尻穴さいこ……あぁぁぁーッ!?」

 彼女の腸の中で、指をひっかけるように俺もピースしてやり、ペニスを数回突いてやった。
 強引に動きを止められ、男に全力で子宮を叩かれる感覚に彼女は大きな悲鳴を上げて、潮を噴き出した。
 射精する直前で彼女の中から抜き出て、俺の指の跡に広がった尻穴に向かって射精する。

「あぁっ、あっ、熱いっ、熱いよぉっ、ああぁぁぁーッ!?」

 彼女は再び悲鳴を上げて痙攣し、俺の射精を尻で受け止め、もう一度達する。
 たっぷりと出た精液が、彼女の尻穴のあたりに溜まっていた。

「んんっ、はぁ、すごい。これが、男の子の……」

 彼女はそれを指ですくい、ぬちゃぬちゃと遊ばせる。
 さっきまで痛がってただけの子とは思えないくらい、その笑顔に色気を感じさせた。

「それで尻穴をいじってみろよ」
「え……うん。やってみる」

 素直に俺の命令に応じ、彼女は精液のついた指を尻穴の中へ埋めていく。
 1本では物足りないと思ったのか、すぐに指を2本に増やしていた。

「んんっ、気持ちいい。いつもより、ずっと、んんっ」

 ぬちゃ、ぬちゃ。俺に尻穴を見せつけるように浮かせて、彼女の指は楽しげに自分の尻穴を往復する。
 とてもスケベな光景だ。
 
「これで俺とエッチした女の仲間入りだな」
「うん……ありがと、優しくしてくれて」

 優しくなどはしていない。俺にいろいろ命令されたことを、優しくされたと勘違いしているだけだ。今も俺の命令どおりに尻穴で精液オナニーさせられているのだが、それも優しさと誤認している。
 本人が気づいていないだけで、もうこの子は俺の奴隷だ。
 
「他の子みたいに、教室でもエロいイタズラしていいか?」
「うん。私も、他の子にレイニーくんとエッチしたって知って欲しいから。でも、出来ればキザオスくんの見てないところでね?」
「尻穴にも触っていい?」
「んんっ、ス、スカートの上からなら、いいよ?」
「じゃ、学校でも遠慮なく触らせてもらうからな」
「うん、んっ、んんっ」

 ぬちゃ、ぬちゃ、尻穴をいじり続けて感じたのか、じょじょに頬に赤みが増して、声に熱がこもっていく。
 見ているうちに、また俺のが勃起してきた。

「なあ、もう1回していいか?」
「え、でも……」
「いいじゃん。1回やれば2回も3回も同じだって」
「だって、やっぱりレイニーくんはキザオスくんの友だちだし、エッチは1回だけで……」
「俺のセフレになれば、他の子みたいに、キザオスと遊びに行くとき誘ってやれるし」
「本当に?」
「あぁ、ホント」
「……そうだね。私も、本気でがんばるなら、1回だけとか言ってないで、もっと積極的にやらないとダメだよね」
「じゃ、セフレになるか?」
「うん!」

 まあ、アイツには『俺のものを欲しがらない』という暗示がかけてあるので、実際は、俺が一度でも手を出した子はもう独占みたいになっている。それに、エッチを重ねるごとに快楽と優しさを注ぎ込んでやってんだから、ヤラれる方もそのうち俺から抜け出せなくなる。
 なので、この子は今後キザオスとお近づきになるどころか、俺のモノになってヤラれまくる運命だ。
 2度目のエッチで、尻穴をいじりながらフェラチオしろと命令してやった。
 彼女は「はいっ」と従順に微笑み、2本指で尻穴をいじりながら、俺の前に跪いた。

「んっ、ぺろっ、んっ、しりあな、さいこーっ。れろ、んんっ、ちゅぶっ、んっ、いえーいっ」

 とまあ、こんな感じでキザオスからの寝取り(っていうのか?)までやっちゃって、そのあたりからタガが外れたっていうか、俺ってスゲェと思うようになってた。
 増えていくセフレ。やりたい放題の教室。まさに天下無敵のリア充様だ。
 やがて全然関係ないはずの他のクラスの女子まで噂を聞きつけ、俺と遊びたがるようになったもんだから、ちょっとした人数で遊びに行って、催眠術を披露して乱交もしたり、もう何でもありになっちゃってわけわかんなくなってた。
 でも、俺がモテてるわけじゃない。全部、催眠術の力だ。催眠術がすごいってだけだ。肝心なところを勘違いしていた。
 まったく、女ごときに浮かれて自分を見失うなんて、俺もまだまだガキだぜ。
 しばらくは女遊びを自重して、キザオスのバカと野郎同士でつるんでるくらいが、ちょうどいいのかもしれないな。

「で、ちなみに先輩、そのチャラい手帳に明日の予定も書いてありますよね?」
「明日か? えっと、キザオスと『世界のカエル展』を観に行ってからの、キザオスの知り合いっつー女子魔専大学のお姉さんたちと飲みだな」
「そもそもキザオス先輩と遊びすぎなんですってば! あの人の影響を受けすぎなんですよ!」
「アイツのせいだったのッ!?」

 そういや、遊びはだいたいキザオスに習った。アイツはバカのくせにどこに行ってもモテるし、顔も広いし。俺の知らない店とかダンスとかいろんなことを教えてくれるし。カッコいいし。

「キョロってた……? 俺はリア充ではなく、その下の生き物だったのか……?」

 あまり男友達と遊ぶ経験のなかった俺は、キザオスに付いて歩く楽しさにハマって、ついついクソッタレ腰巾着牧場の牛糞になっていたのだ。
 古代の秘術を駆使してキョロ充になるって、俺はバカなのかよ。
 死んだ方がマシだ。俺なんて肉魔法しちゃえばいいんだ……。
 
「自分のキモさにようやく気づいたようですね。あと、先輩は他の女子とも遊びすぎです。自重してください」
「……そうだな。キザオスも女も自重する。こんなことじゃ、おっさんにも顔向けできねえよ……よし、実習だ。外の世界に出て自分を見つめ直すぞ」
「そういうことならば、喜んでお供いたします」
「まあ、私も他に実習の予定ありませんし、付き合ってあげてもいいですけどっ」
「悪いな、二人とも。あとはそうだな。キザオスも連れてってやるか」
「なぜですか!」
「そんなにキザオス先輩が好きなの!?」
「い、いやだって、実習は基本4人以上だし。アイツいないと夜とか話す相手いないし」
「何言ってんですか、前みたいに女子のテントに遊びに来ればいいじゃないですか!」
「私たちは、レイニー様の王様テントにてお待ちしていますが!」
「そうは言っても、異性のテントに入るのは規則違反なんだぞ?」
「ぐぅ……まさか、ご主君の口から正論を聞かされる日が来るとは……」
「もう、絶対ホモはダメですよ、先輩! ホモだけは!」
「ねーよ!」

 さっそく俺は、フェイバリット先生に実習を組むようにお願いに行くことにした。
 どうせなら、一発狙いで点数の高そうな実習にしよう。
 うちのメンバーは頼もしいヤツばかりなので、多少危険な実習でも楽勝だ。むしろそれくらいじゃないと楽しめないメンバーだ。
 今なら近衛兵隊や情報部隊の隊長に誘われても、「そんな退屈なところじゃ俺を飼いならせはしないねぇ」と上から目線で断る自信がある。俺はあの班の班長になりたいのさ。

「そうね、マインド高原のタンポポ畑で綿毛帽子の幻獣を見たっていう子どもがいるの。7日間くらい気候の良いところで、のんびり幻獣さんでも探してきたらどうかしら? 幻獣さんが見つからなくても、ちゃんとお姉ちゃんのところに帰ってこれたら、Aプラスあげるわよ」
「退屈に飼いならされてしまいそうだよ、お姉ちゃん。そういう甘い話は魅力的だけど、今回はもっと危険な実習に出てみたいんだ」
「ダメよ、そんなの。レイニーちゃんにもしものことがあったら、お姉ちゃんが落ち込みます」
「大丈夫だよ、キザオスとかも一緒だし。自分の実力を試すためにも、お姉ちゃんお願い!」

 俺はショタ好きお姉さまの弱点である、上目使いの潤んだ瞳で見上げる。今までのエッチでも、これで頼んで断られた変態行為はないというくらいの必殺技である。
 きゅん、と胸を鳴らして、フェイバリット先生は遠い目をした。
 
「……そうよね。男の子はいつまでもショタっ子ではいられない。いつかショタっ子の皮を剥いて、ショタボーイになるのよね。わかってる。お姉ちゃんだって、今まで数多くのショタっ子の皮を剥いてきたんだからわかってるわ」
「え、大丈夫? たとえ冗談でも、教師が言ってシャレで済む発言じゃないよ?」
「私のレイニーちゃんも、とうとう半ズボンを卒業してショタの第2形態になる時が来たのね。いいわ、だったらお姉ちゃんも応援してあげる。ちょっぴり大人な冒険をして、声変わりして帰ってらっしゃい」
「う、うん。ありがとう。言ってることがほとんどわからないけど、お姉ちゃんの言うとおりにするよ」

 フェイバリット先生は今日も重症のようだ。いろいろ問題もありそうだけど、俺に都合が良いうちは目をつぶってやり過ごそうぜ。
 先生は実習リストをめくっていく。俺も横で、彼女の太ももを撫でながら一緒に見せてもらう。

「あ、これは?」

 西側国境付近の偵察だ。
 アダルト共和国とは別方角にある非同盟国、ノベル王国と隣するジャレン村近く。山間の見通しが悪い森林地帯だ。そのあたりで最近、ノベル王国側に砦が建設中との村人の証言があったそうだ。
 我が国の兵は、膠着状態のアダルト共和国側に多く配置されており、ノベル側には十分な配置が取れず、ジャレン村からも、近くても30マイメーター離れたところにしか大きな駐屯地はなかった。
 しかも現地の兵に斥候調査させたところ、村人の証言は否定され、異常なしと報告されたというが……。

「その国境はトンガリー公爵の領地なのよ。いろいろと謀略政略を巡らせるのが趣味の御方でね。ようするに、その公爵から上がってきた斥候報告ってのが、王宮側に怪しまれているわけ」

 トンガリーはキザオスのところと同格の有力貴族だ。しかし、確かに評判は良くないと前にキザオスも言っていた。間抜けなくせに謀略好きだと。ブサイクでバカだと。
 ちなみにトンガリー公爵の三男坊も学院の4年生にいるが、モモは異常に嫌っている。ブサイクでバカだと。前にしつこく迫られたことがあって、顔も見たくないほど嫌いらしい。
 そういう評判の親子なら推して知るべしだ。
 国境の警備についても、再三にわたって王宮から強化を要請しているが、「我が公爵家は、ノベル王家と友好な関係を築いているので必要なし。それよりもアダルト共和国との戦争のためにどれほどの財を供出させられたか」と言って、ノベル側への警備をケチっているとか。それでは関係を疑われても仕方ない。
 しかし、それでも五大貴族の公爵だ。かの領地に、王属の紋章付き兵士は簡単に送り込めない。だから、代わりに学院生が実習のふりして見てこいと。
 ちょっと間諜っぽい感じの、かっこいい実習だ。

「もちろん、私は断るつもりよ。いくらトンガリー公爵でも、うちより小さい王国制の国に大貴族様が寝返っても美味しくないことくらい知ってるわ。おそらくこれは村人の勘違いか虚言。万が一くらいにしかありえない話ね。情報部の担当も、役人が無駄な心配してるって程度しか思ってないから、学院に回してきたのよ。学生を使えばタダだからって。こんな面倒な話に、しかも国境付近まで生徒を派遣するわけないでしょうに」

 そのリストには大きく「×」が書かれていた。しかしまだ、それはフェイバリット先生の手元にある。
 
「つまりお姉ちゃんとしては、政治的に面倒ってだけで、それほど危険な実習にはならないと思ってるんだね?」
「……違うわ。待ってレイニーちゃん。あくまで、この不十分なレポートを読んだだけの推測よ。生徒を派遣するなら、もっと調べさせてからじゃないとダメ。例えばこの斥候兵士がもしも―――」
「俺、これがいいな。外交に係わる実習なら単位も大きいし。それに王宮周辺の政治にもちょっと絡めるかも」

 俺だって兵士志望だ。戦争絡みの話に胸が躍るのも、男の子なら当然だ。
 キザオスから時々こぼれ話的に聞いていた、役人や貴族の世界の駆け引き謀略っていう、大人の世界に憧れもある。
 この手の実習は、これまでなら成績上位者に持ってかれていた。でも今なら俺の好きなのを選び放題だ。
 国境すれすれまで探検して、我が国の安全を確認する。かっこいいじゃん。これこそが、出世する男のやるべき実習だ。

「レイニーちゃん、お姉ちゃんの話を―――」
「お姉ちゃん、お願いっ」
「あ、ダメ、その目に弱いから、お姉ちゃんっ。もう、レイニーちゃんのイジワル! ショタっ子! 孕ませてぇ!」

 というわけで、俺たちは難易度の高い実習に出ることになった。
 まあ、フェイバリット先生もいろいろ心配してたけど、こういうのって実際には、それほど大事には至らずに、「な~んだ」というオチで終わるものだ。
 気の合う仲間たちと、表向きは例のフィールド調査という名目で、チョウチョとかカエルとかを捕獲しながら、トンガリーの領地を国境へ向かっていく。あまり期間を取ると怪しまれるので、結構ペースも早く、エッチもそこそこに真面目に動かなきゃならなかったけど、もうすぐその国境の森だ。
 途中でジャレン村にも立ち寄ってきた。こっちの土地は美人が多いとの評判どおりに素敵な美女たちがいたが、真面目にやらないと時間が足りないので、まずは建設中の砦を見たという人の話を聞いた。

「あぁ、ありゃ確かに砦だ。上手いこと隠しているけど、森の深いとこ、国境ぎりぎりまで行けば見える。千人や二千人は集まってたなぁ。公爵様の兵隊さんも、そう言ってなかったかい?」

 フェイバリット先生の言うとおり、この証言は怪しいものだった。
 その規模で動いているなら、いくらトンガリー公爵が内通していたとしても、周辺に自兵を配置するくらいの警戒はするだろう。向こうに裏切られたら一巻の終わりだからな。
 だから今回の件は、この村人さんの勘違いと考えていい。ただの演習か、森の大規模伐採で人が集まっていただけだろう。
 国境付近を調査して異常なしと報告すれば、真っ当な評価でもAプラス間違いなし。情報部隊には班長の俺の名前も報告される。美味しいことだらけだ。
 なんて俺は余裕ぶって、夜も近づいているというのに、ろくに準備もしないで森に足を踏み入れたのだ。
 愚かにも。

「……どうして、こんなことになってんだ?」

 敵兵があたりを歩き回る森の中、俺とキザオスとモモの3人は、モモの作った光の偽装魔法に身を隠し、息を潜めていた。

「トンガリー公爵も裏切られていたと考えるべきだろうね。自分の部下に。公爵本人がノベルに内通していたとしたら、夜襲なんてことにはなってないはずだから」

 キザオスの言うとおりだ。俺はこの話を、ひょっとして王宮や貴族のトップたちの思惑が絡む大きな話かもしれないと、勝手に雲の上を飛び交う話を想像して舞い上がっていた。
 もっと現実的な危険を。異常なしと報告した部下が裏切り者だったという可能性と、公爵本人の無能さを見誤っていた。
 そして、それはつまりノベル王国の謀略が、確実に我が国の領土を奪いにきているという、恐るべき危険であることを俺は想像しなかった。
 深夜の森で遭遇してしまった敵兵は、おそらくノベルの先発隊。この後ろにどれほどの軍が押し寄せてくるかは推測もできない。どちらにしろ、ここに味方の兵はいない。
 この戦闘は負ける。領地は取られる。
 俺たちは死ぬ。

「……エ、エアリス先輩は? まだ帰ってこないんですかッ?」

 モモが膝を抱えたまま、震えた声で言う。
 深夜の森の中で、俺たちの捜索を続ける兵士の足音と、たまに聞こえる怒声が、現実の戦場の恐怖を学生の俺たちに突きつける。
 エアリスは、この中を単身で飛び出していった。俺たちの退路を見つけるために。

「大丈夫、なんですか? ねえ、エアリス先輩は帰ってきますよね、先輩!」
「落ち着け、モモ……声を抑えろ」

 モモは、俺たちのために暗闇のカーテンを作るだけで限界だった。小さな灯りの下で、顔を真っ青にして、いつもの黒猫を作る余裕もないほど怯えきっていた。
 やっぱりエアリスを引き留めればよかった。もっと準備をしてからくればよかった。こんな実習こなければよかった。
 全然冷静になれない。俺も、さっきから震えが止まらなかった。背中に氷を突っ込まれたみたいだ。
 近くでガサリと音がして、飛び上がるほど驚く。

(レイニー様、どちらに?)
(エアリスか? ここだ!)

 カーテンの中にエアリスが入ってくる。息切れをしながら、彼女は大きな荷物を背負っていた。
 それを見て、俺とモモは短い悲鳴を上げた。手足を縛られた敵兵だ。

「気を失わせただけです。少しですが情報は聞き出せました。先発は剣術と槍術の小隊が4つ。ジャレン村を襲撃の後、後続の五百名の部隊と合流するとか」
「小隊4つということは、二百人くらいか? それに後続の五百で、七百人……魔術部隊がその中にあるとしても、戦力としてはどうなんだ? 公爵の兵はもっといるんだろ。な、キザオス?」
「公爵は兵六千人と称しているけど、うちみたいな貴族は輪番でアダルト共和国の前線に兵を出しているからね。今はトンガリーの番で、半分以上がそっちに回されているはずだ。村や畑を拠点に飲み込んで前線を築くなら、兵があと千もいれば、お互いの増援までの膠着状態は作れる。もっとも、王宮がどれだけこちら側に兵を割けるか。東と西とそれぞれ戦争なんて出来ないとなれば、ノベルの要求を早めに飲まざるを得ないかもしれない……トンガリーの間抜けめっ」

 砦に二千人は大げさな数字ではなかった。
 ジャレン村には数百の民間人しかおらず、若い男たちは出稼ぎに出ていると言っていた。ノベル王国は確実なタイミングを狙ってきている。二百人の兵で村を占領するとしたら、住民をどれだけ殺す見積りなのか。
 想像するだけで吐き気がした。ついさっき、笑顔で挨拶してくれたあの感じの良い人たちが、どうしてそんな目に。

「先発の二百は電光石火の作戦中で、私たちに先に村に連絡されることを警戒し、総員で森を囲っています。発見されずに脱出するのは困難でしょう」

 そう、俺たちが先に連絡できれば、少しは村人を助けることが出来るかもしれない。全員は無理だとしても。
 このまま隠れているだけなら、アイツらもあと数刻もしないうちに、俺たちなんてほっといて村を攻めに向かうに違いない。急がないと。
 しかし、モモのカーテンで姿は隠せても移動の音はごまかせない。しかもこの歩きづらい地形だ。
 身動きも出来ないっていうのに、一体どうやって村まで走ればいい?

「私が囮になって時間を稼ぎます。レイニー様たちは私が出て行ったあと、逆方向へ静かに移動してください。西に進めば沢がありますので、それを下って行けば村にたどり着くはずです」

 エアリスの服はあちこちが裂けてボロボロになっている。
 天才剣士と学院では呼ばれた女も、本物の戦場では、まだ戦を知らない新兵見習いだ。たった一人で敵を捕まえて情報を得るまでに、どれほどの死線をくぐってきたのか。

「……女の子が一人飛び出したところで、兵は大きく割かれないだろうね。僕も一緒に行くよ。レイニーはモモくんを連れて、村人を助けに向かってくれ」

 キザオスが、柄を握って言う。
 かっこつけんな。コイツ、本当にバカなんだな。
 俺たちが第一優先で生かして帰さなきゃならないのはおまえだ。大貴族のお坊ちゃまのおまえなんだよ。
 チャラ男のくせに、なんでこんなときに限って貴族らしいこと言ってんだよ。

「レイニー様、ご決断を」

 そして今、一番情けないのは俺だった。
 これはダメだ。震えて声も出せない。コイツらの勇気に、強さに、甘えたくて仕方ない。泣いてすがりたい。
 へたれの落ちこぼれの本領発揮だ。何が催眠術だ。俺なんかに、本物の戦場で何が出来るっていうんだ。戦争がこんなに怖いなんて、俺知らなかったんだよ。
 キザオスが、エアリスが、俺の決断を待っている。
 そんな眼で見ないでくれ。俺なんかに期待するな。自分が死ぬところを、おまえらが死ぬところを、俺は想像したくないんだ。
 モモが、モモの光魔法なら、なんとか出来るかもしれないけど。

「先輩……先輩、助けて……」

 モモは、震えながら泣いている。俺は自分の甘さをぶん殴りたくなる。
 戦争恐怖症の彼女をこんなところに連れてきたのは俺だ。エアリスに、キザオスに、命がけの勇気を振り絞らせているのも俺だ。俺が何とかしなきゃいけないんだ。
 大きく息を吸って、吐く。
 落ち着いて考えろ。どうしたらいい? 俺は何がしたくて、何をしたくない? 俺に出来ることってなんだ。そのために必要な勇気はどのくらいだ。
 考えろ。考えるんだ。

「……みんな集まってくれ。モモも、顔を上げろ」

 使いこなれた、糸付きの5エント硬貨。
 結局、俺の武器はこれだけだ。これで『戦争』ってやつと戦うしかない。

「落ち着こう。まずは、深呼吸だ。コインの揺れに合わせて息を吐いて、吸って。吐いて、吸って。集中してくれ」

 催眠慣れした俺の仲間は、静かに瞳から色を落としていく。
 そして俺もコインに集中する。催眠術と寄り添ってきた日々のことを思い出す。
 ここでするべきことも、きっとこのコインと仲間たちが教えてくれるはずだ。
 心を落ち着かせて、コインに集中する。

「大丈夫だ。誰も犠牲にならなくていい。俺たちは必ず勝利する。村人も助ける。信じて俺の言葉に集中してくれ。このコインに、みんなの勇気を少しずつ集めろ。俺たちは、絶対に助かるんだ」

 エアリスと、モモと、キザオスの視線を集めて、コインは揺れる。
 俺も催眠術を信じて、みんなと同じように呼吸する。
 おっさんも、俺に勇気をくれ。
 ここが俺の正念場なんだ。俺はこいつらと生き残りたい。誰にも死んで欲しくない。誰も殺したくない。
 俺は、おっさんみたいになりたいんだよ。
 
 不意に、閃きが頭に降りてくる。
 
 突拍子も脈絡もない閃きだ。あまりにもバカバカしい思いつきだった。
 だが俺は、そのか細い光の先に出口を見た気がした。迷子の俺を導くみたいに見えたんだ。
 一息、深呼吸をする。
 そして、そのバカげた思いつきをみんなに言う。

「―――俺たちで、『戦乙女』を演ろう」

< つづく >

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