第二話 私の中に怪盗インクがいるって、それマ?
今日の放課後、京介君に告白する。
九音(くおん)がそう思いながらベッドを起き上がったのは、今日で五回目である。
起床した瞬間、今日こそは告白するぞと、毎回決心するのだが、結局実行できないまま迎えた週末の金曜日。今日も同じような結末になるのでないか、おそらく九音の友人たちはみんなそう思っているに違いない。
だが、今日の九音はいつもと違う。まず気持ちから違う。
今日は一学期の終業式。今日を逃せば夏休みの間は京介(きょうすけ)君に会えなくなるし、この夏の間に、もしかしたら京介君に恋人ができてしまうかもしれない。
だから今日がラストチャンス。今日を逃したら一生後悔するぞ、九音!
と、九音は起き上がる瞬間から自分に気合を入れていた。
(それに、今日は何だがいつもと違う気がするもん!)
朝、母親が出してくれた目玉焼きの黄身が双子だった。通学路で、一度も信号機に引っかからなかった。
校門で、
「二階堂さん、おはよう」
「あ、桜田君……おはよう」
なんと想い人である京介に出会っただけではなく、挨拶まで交わし、しかも、
「今日はいつもよりも早いね、二階堂さん」
「あ、うん。なんか今日はいつもと違って、早く学校着いちゃった」
なんて会話を交わしながら教室まで行けるという、どう考えても九音に運が向いているとしか思えない状況が続いた。
(これは神様が、今日こそは絶対に告白しろって言っているに違いないわ)
九音は終業式の校長先生の話そっちのけで、一人でその大きな胸を躍らせていた。
クラスのホームルームでも担任の話もほとんど聞かず、
(今日の放課後、どうやって京介に告白しよう)
ということばかりを考えていた。
そしていよいよ放課後、と言っても終業式なのでまだ昼前である。掃除当番で教室に残るという親友の珠美(たまみ)に、
「今日こそするの? 告白」
と、五度目となる言葉を半ば呆れられつつ告げられたが、九音は親指を立て、
「今日の私はいつもの私と違うの。今日こそするわ!」
と言葉を返した。
「うん、昨日も同じ言葉聞いた。まぁ、せいぜい頑張って」
珠美はやれやれと肩を落としながら、ほうきとちりとりをブンブンと振って、
「ちょっと男子! 掃除をちゃんとせいや! 早く終わらせてアタシは帰りたいのよ!」
怒鳴り声をあげながら教室に戻っていった。
これから珠美は珠美で、戦ってくるんだなと、その背中に敬礼を送った後、九音は急いで校門へと向かった。放課後、車で送迎してもらっている京介はおそらく校門の近くで車が来るのを待っている。そこが声をかけるチャンスだと、九音は急いで昇降口を出る。
九音の予想通り、京介は校門の近くに立って文庫本を読んでいた。九音は駆け足で京介に近づき、
「桜田君!」
思い切って声をかけた。
「ん? あぁ、二階堂さん。今日は掃除当番じゃなかったんだね。今、帰るところ?」
文庫本から視線を外し、京介が九音を見る。
眼鏡越しに見る京介の切れ長の目と視線が合っただけでも、九音の心臓はボールのように跳ね上がった。
「う、うん。そう、帰るところ……あの、さ」
「ん?」
九音は俯き加減に、ぼそぼそと京介に話す。
「も、もしも時間あったらさ……その、ちょっとだけ話があるんだけど。今、良い、かな?」
「話? あ……うぅん」
京介は腕時計を見やりながら渋い顔をした。
「ごめん、二階堂さん。ちょっと今、時間はないかも。あと数分で迎えの車が来ちゃうんだよ」
「あ、そう、なんだ……」
京介の言葉に九音はがっくりと肩を落とした。
(あぁ、せっかく声をかけられたのに)
うなだれたままの九音を見た京介は、
「……もしかして大事な話だった?」
申し訳なさそうに声をかけてきた。うつむいていた顔を慌てて上げ、九音は首をブンブンと横に振る。
「え、あ、いや、全然。そんな別に、大した話じゃ」
京介はカバンの中から手帳を取り出し、
「……あ、二階堂さん明日は暇?」
予定を確認したのだろう、ページをめくりながら九音にそう尋ねてきた。九音は、
「え、あ、うん。暇、だけど」
条件反射的にそんな言葉を口にした。すると京介は、
「じゃあさ、明日、近くの図書館に来られる? 僕、そこで勉強するんだけど。そこでなら話もできるでしょ」
そう提案してきた。その提案に目を輝かせながら九音は言う。
「え、あ、いいの? ほんとに?」
「うん、勿論。それに僕も、前から二階堂さんと話してみたかったんだ」
二階堂さんと話してみたかった、という言葉を聞いた九音はその場で小躍りしたい気分になったが、あくまでも平静を装ったまま、
「うん、うん! 私も話したかった! 明日、明日絶対に図書館に行くね!」
下校をしている生徒たちが思わず振り向いてしまうくらいの大きな声でそう述べた。
「ありがとう。じゃあ明日の九時ごろ、図書館で」
京介はそう言いながら、持っていた手帳に時間と場所を書き込み始める。その手帳の表紙に小さな青い石がついていることに気づいた九音は思わず、
「その石、本物の宝石?」
そう尋ねた。
「ん、あ、これ?」
京介は表紙を九音に見せ、
「まさか、ただの硝子だよ。これ、父さんが外国で見つけてきてくれた手帳でさ。最初に見せてくれたとき、なんかきれいだなぁって思って、思わずもらっちゃったんだよ」
そう説明しながら、その青い石を指さした。
本当の宝石のように輝くその石は、怪しくも美しい光を放っている。
「へぇ、うん。すごくきれいだよね」
確かにきれいに光る青い石だったが、九音にはその石の青い輝きがなんだか不気味にも見えていた。勿論、そんなことは口が裂けても京介には言えなかったが。
と、そこへ京介を迎えに来た黒い車が到着した。扉が開き、車の中からサングラスをかけた男性が、
「坊ちゃん、どうぞ」
と声をかけた。
なんかお金持ちのお坊ちゃんみたいだなぁ、なんて九音が思っていると、
「うん。ありがと。それじゃ明日ね、二階堂さん」
いつの間にか車に乗り込んだ京介は、九音に手を振ってその場を去っていった。その姿を小さく手を振りながら見送り、車が完全に見えなくなったところで九音はその場でおもいきりガッツポーズをする。
「やったぁ! 明日は京介君と、で、デートってわけじゃないけど、京介君と二人で待ち合わせだぁ! うひょう! めちゃ嬉しい!」
通行人たちが白い目で見るほどに、まさに踊りながら帰りの道を歩いていると、
「……あ、れ?」
いつの間にか、九音は見知らぬ路地裏に立っていた。
薄暗く、かび臭い匂いのする一本道の路地で、はるか向こうに路地の入口が見えており、その部分には燦燦とした太陽の光が降り注いでいる。しかし九音が立つこの路地には、不思議なことに一切太陽の光が届いていない。本当に暗く、不気味な路地だ。
「え、ここ、どこ? いつ私、こんなところ」
左右は高いコンクリートのビルが建っており、上空に澄んだ青空が見える。先ほどまでうるさいくらいに聞こえていた蝉の声も一切しなかった。その状況に九音は急に不安を覚え、その場から逃げ出そうと身体を反転させた。だが、
「え……なんで」
九音の目の前に古びた商店が突然現れた。
(さっきまで確かに一本道の路地にいたのに。店なんかなかったのに)
九音の背中にゾゾと冷たいものが走る。
目の前の店は、和風な店構えと表現したらよいのだろうか、京都や奈良などの観光名所にあるような店構えではなく、本当に古い木板の壁と屋根瓦の店だった。
茶色いシミのついた暖簾。壁の向こうから路地裏に飛び出す竹の笹。横開きの古い障子扉。まるで五十年近く前の店にタイムスリップしたかのようなその光景に、九音は恐怖さえ感じていた
ふと、店先に置かれた看板に目が止まる。
『あなたのために、ここにあります。店主』
九音がそう書かれた文章を目で追い終え、顔を上げると、
「え?」
いつの間にか店内にいた。
埃の匂いと、どこか懐かしさを感じる畳の匂い。そしてかすかに香る線香の匂い。昔遊びに行った祖母の家のあの懐かしい匂いに似ていた。
「ここ、は」
九音は店内をぐるりと見渡す。
商品棚には古いがらくたが乱雑に積み置かれており、それらは、一体誰がこんなものを欲しがるんだろうと思える物ばかりだった。そんながらくたの山を九音が見ていると、
「いらっしゃいませ」
突然、がらくたの中から声が聞こえ、九音はびくんっ! と身体を跳ね上げた。
「何かお探しで?」
店の奥から一人の男が現れた。黒い鳥打帽をかぶり、ぼろぼろの作務衣をきた人物が九音に向かってゆっくりと歩いて来る。その怪しげな風貌に、九音は思わず後ずさる。
「いや、あの、私……」
ぎょろっとした眼で九音を見つめていたその男は、その場で大きなため息をついた。
「おやおや、まぁた『願い人』かね。最近本当に多いねぇ」
「ね、願い人?」
聞きなれない言葉に九音が思わず聞き返す。
「ほんとに多くなったねぇ、あなたさんみたいな若い願い人がさぁ……まぁ、客層が若返ってくれるのは別によいのだがねぇ。その願いの内容が重くなってきているのは、あまりよろしくない傾向なんだよね。この前もそれでひどい目を見た願い人さんがいてねぇ」
と、九音の言葉を無視したまま、独り言をつぶやく男に九音はますます恐怖を感じる。だが、恐怖を感じてそこから逃げ出したいのにも関わらず、九音の足は全くその場から動かない。
そんな九音を目の前にやせこけた病人のような顔の男は、
「まぁ、とりあえずこっちへおいでなさいな」
九音に向かって手招きをした。近づきたくないと思っていた九音だったが、なぜか自然と足が男の方に向いてしまう。
九音が近くまでやってくると、男は近くの戸棚をごそごそとあさって、そこから小さな木箱を取り出した。
「あなたさんには、これ、だろうねぇ」
九音に見えるように男がその箱を開けると、箱の中には小さなペンダントが入っていた。桃色の大きな宝石が着いた、金のチェーンのペンダントだった。その美しさに、九音は思わず、
「きれいなピンク色……」
と呟く。そのつぶやきを聞いた男はにたりと笑って。
「そうかい……あなたさんにはこれがピンクに見えるかね?」
そう尋ねてきた。
「え、あぁ、はい」
「いやはや『イン』とはなぁ。あなたさん、そうとう我慢しているところがあるようだね」
「イン? 我慢?」
男はしーっと、自分の口元に人差し指をあてる。
「それ以上の質問はご法度だね。あとは直接体験するしかないのだよ、願い人さん」
男は箱の中からペンダントを取り出し、九音の首にそっとかける。ペンダントの宝石の大きさの割に、九音はその重さを全くと言っていいほど感じなかった。
「このペンダントはね『八悪』のうちの一つ『淫』の魂が封じられているんだね。『淫』とはすなわち邪な心。だが邪な心が邪悪であるとは限らない。外身と中身は必ずしも同じとは限らない。あなたさんには、なかなか扱いが難しい道具かもしれないね」
「え、と、何を言って」
「まさかあなたさんみたいな女の子に、これがあたるとはね。これは不運かもしれない、いや幸運なのかもしれない。あなたさんは多くを我慢してきた人。でも、この中の奴は我慢なんかしない奴。まぁ、他の奴に比べりゃわりと話のわかるやつだからよく話し合うといいね」
「ええと、どういう……」
九音の言葉をすべて無視し、男は話をどんどん続けていく。
「さぁ、これがあなたさんの本性だ。よく見るといいね」
そう言うと、男はペンダントについている桃色の宝石を九音に見せた。
桃色の宝石の中には、九音の顔が映っている。だがその宝石に映る九音の顔が徐々に歪みだした。
「ひっ!」
歪んでいく自分の顔に恐怖した九音は、思わずペンダントから顔を逸らそうとする。だが、
「自らの本性から逃げてはいけないね。さ、自分の中の自分に向き合いな」
男は九音の頭をつかみ、すごい力でペンダントに顔を向けさせる。ペンダントの中の九音の顔が、徐々に違う顔へ変わっていく。
そこに映し出されたのは、黒い仮面をかぶった女の顔。その女性が九音に向かってウィンクをした。九音は思わず悲鳴を上げたが、男は宝石の中のその女の顔を見て、
「おや、こいつは変だ。この中にいるのは淫じゃない。こいつは」
慌てた声でそう呟いたが、恐怖のあまりそのまま意識を失った九音には男の声がもう聞こえていなかった。
……。
目を覚ますと、九音はベッドの上にいた。
九音は慌てて飛び起きる。窓の外はすっかり暗くなっており、きれいな満月が空に浮かんでいた。
いつの間に着替えたのだろうか、九音はすでにパジャマになっていた。
「さっきのって、夢、なの?」
そう呟いて、ふと自分の首元を見た九音は思わず息をのんだ。
桃色の宝石のついたあのペンダントが、自分の首からぶら下がっている。
「夢じゃ、ない」
九音は怖くなって、首からペンダントを外そうと手をかける。すると、
「ひうっ!」
ペンダントに触れた瞬間、九音の身体になぜか猛烈な快感が走った。
「え、ど、どういう」
わけがわらず混乱していた九音だったが、徐々に身体が熱くなっていくのを感じた。それは運動した後の暑さや、夏場の気温上昇から感じる暑さではない。
身体の内側から湧き上がってくる熱さだった。特に股間のあたりがとても熱く感じる。それは夜中にふと、想い人である京介のことを思い出したときに感じる、あの切なさにも似ていた。
「え、いや、なんで……」
そう、九音は無性に自分で自分を慰めたく、オナニーがしたくなってきていたのだ。
九音ももう立派に成熟した女性。これまでも夜中に我慢できなくなり、ベッドの中で京介を思って一人でしたことがたびたびある。
今はあのときの何倍もの欲望が、とめどなく自分の内側からあふれ出してくる。とにかく今の九音は、オナニーがしたくて、したくて、たまらない状態になっているのだ。
「うう、なんでこんなときに……」
九音は部屋の鍵を閉めてからもう一度ベッドに横たわり、パジャマの上着をはだけさせ、その大きな胸を露出させた。親友の珠美に、
「ちょっと、あんたの胸、マジでデカすぎない?」
と言われるほど大きな九音の胸の先端にあるピンク色の乳首は、すでに硬く小豆大に膨れ上がっていた。九音はそこをゆっくりと弄り始める。
「ん、あふうっ」
乳首に触れただけで、今までに感じたことないほどに快感が九音に走る。
「んっ……くっ……あっ!」
乳首をこりこりと時計まわりにいじりながら、九音はそっとショーツに中に手を忍ばせる。触れたショーツの下の女裂からは、すでに大量の愛液が漏れ出していた。
「あぁぁぁ……っ」
家族に聞かれたら困ると、九音は声が出ないように枕に顔を埋め股間に当てた右手を上下にスライドさせ始める。ぐちゅぐちゅと水っぽい音が部屋に響きだす。
「ん……くぁ」
枕に口を当てて必死に声を抑えながらも、九音はさらなる快感を求めさらに指を激しく動かした。声を我慢している分、九音の身体の中に次々に快感が積み重なっていく。今までに感じたことのない、より深い快感を九音は味わっていた。
「……あぁ、はぁ……はぁぁっ……んくっ……きょうすけ、くぅん……」
京介君の指が私の一番大切な部分をこすっている。
そう妄想することでさらに九音は気持ちを高ぶらせ、自分の指を激しく動かす。自慰をするとき、九音はいつも京介のことを思いながらしている。
京介君に触ってほしい、京介君に触りたい。いつものそんな思考の中に、今日は京介君を『犯したい』という邪な欲望が混じっており、その考えは九音の中で少しずつ大きくなっていく。
「う、ぁぁ、あぁぁ、だめ……んっ……ん、ふぁっ!」
ついに我慢できなくなった九音は、自分の指を少しだけ膣内に差し入れた。まだ男性経験がない九音は、膣内に深く差し込むことはしない。膣口の浅い部分に指先を少しだけ入れ、そのまま指をゆっくりと動かす。
「ん、あぁ、く、あああっ! んんっ!」
まるで電気が走ったかのような快感が、九音の全身を駆け抜ける。
そのあまりの気持ち良さに思わず大きな声が出てしまった九音は、乳首を弄っていた手を慌てて口元へやった。声を出してはいけない。これ以上してはいけないと、自分で必死に口を押えるが、その股間を弄る手が止まる気配は全くない。
(あぁぁ。気持ちいぃ、きもちぃぃぃ)
今まで感じたことのない強烈に快感に抗えなくなった九音は、ついに口を押えていた手を乳首へと戻す。先ほどよりもさらに硬くなっていた乳首を、そっと人差し指と親指で挟みそのままこりこりと摘まむ。
「はうっ!」
その快感だけで九音はもうイってしまいそうになったが、もっとこの快感を味わっていたい、もっと気持ち良いことがしたいと思った九音は、絶頂を迎えないよう、枕をぐっと噛みしめたままひっきりなしにやってくる快感の波にのまれないよう必死で耐える。
「ぐっ……んぐっ。ふぐぅ」
片方では陰裂を、もう片方で乳首を激しくいじくりまわしているうちに、
「あぁぁあっ!」
枕から口が離れてしまい、九音は声にならない叫びをあげた。
「あぁぁ、もう、だめぇぇっ、気持ちいい……気持ちいいいよぉぉっ!」
もう誰に聞こえても構わないと、九音は快楽に身をゆだねた。片方の乳首を弄っていた手を大きく広げ、固くなった両方の乳首を、親指と小指でぐりぐりとこねくりつつ、挿入した指をさらに激しく動かす。
口元からあふれ出た唾液が枕を汚していく。
女裂からあふれた愛液がショーツに黒いシミを作っていく。
もう九音の頭の中は快楽を得ることでいっぱいになっていた。
「もう、もうぅ、どうなってもいいぃ、イキたい、きもちぃぃ、もう、イク、いくっ……っ」
女裂の上部にあった膨れ上がった陰核を指先でこすり上げた瞬間、九音の中に溜まりに溜まった快感がついに頂点に達し、九音の中で一気に爆発した。
「……い、イク。イ、ク……ッ……ぃう、ふぅぅっ!!」
絶頂の瞬間、ぎりぎり残っていた理性が枕で口を隠させ、その嬌声を誰かに聞かれることはなかった。だが、枕に顔を埋めたままびくんびくんと身体を跳ね上げる九音は、
「んっ……ふっ……はっ……」
涎と涙で枕を汚しつつそのまま意識を失った。しばらくして、九音はシャワーの音でその意識を取り戻した。
(あぁ、さっきのオナニーで汗をかいたから、シャワーを浴びに行ったのか)
そう思って目を開けると、シャワーを浴びている九音の全身が見えた。
鏡に映っているわけではない。幽体離脱した人が上空から自分の全身を見たという話のように、九音は少し離れたところから自分がシャワーを浴びている姿を見ているのだ。
(ど、どういうこと?)
「お、目が覚めたみたいね」
目の前の女性、いや自分自身が九音に向かってそう言ってきた。正確には九音の頭の中に、目の前の九音の声が響いて来た。
(どういうこと、どうなっているの?)
「なるほど、頭の中で声がするわね。そうか、こんな風に会話するわけなのね」
と、どうやら目の前の九音の姿の女性も頭の中に声が聞こえてきたのだろう、少し驚いたような声を上げた。
(え? え? どういうこと? これ、え?)
状況がわからずパニックになっている九音の頭に、目の前の九音の声が響く。
「まぁまぁ、落ち着きなさいって。私も状況が全部把握できてないんだけど、きっとあなたがこの身体の本来の持ち主なんでしょうね」
(ほ、本来の持ち主)
「いやぁ、びっくりしたわよ。目が覚めたら自分の身体が全然知らない人になっているんだもの。でもごめんね、とりあえずシャワーを浴びたかったから、勝手に浴びちゃった……にしてもあなた、なかなか良い身体してるわねぇ」
と、自分の胸をやわやわ揉みしだきながら、九音の目の前の女性がそう述べる。
(あ、あなた誰? これ、一体どうなっているの?)
「うーん、たぶんなんだけどさ。あなたのこの身体に、私の意識だけが入っている状態みたいね。私とあなたでこの一つの身体を共有している、みたいな感じなのかしら。あなたは今、私のことはどう見えてる?」
(……自分はここにいるのに、でも目の前に自分がいる感じ。幽体離脱みたいに)
「あぁ、そういうことなのね。私にはあなたの姿は見えてなくて、声だけが聞こえるって感じなのよ」
(な、なんでこんなこと……)
九音の質問に目の前の女性が答える。
「きっと、このペンダントが原因だと思うわ」
そう言って目の前の女性は首のペンダントに手をやった。
(それ、さっきのペンダント……)
「そう。このペンダントが問題なのよね。どうやら私、このペンダントに『封印』されたみたいなのよ。ちょっとだけ覚えてるわ。確か私の世界で」
(私の世界?)
「そうよ。どうやらここは私がいた世界じゃないみたいなのよ。いわゆる、異世界って奴なのかしら」
(異世界……あなたは一体)
「あぁ、自己紹介がまだだったわね。私は、インク。悪名高き痴女怪盗インクよ」
そう言って目の前の女性は、腰と頭に手を当ててポーズをとって見せた。
<続く>
読ませていただきましたでよ~。
突然違う世界観が来て戸惑ってしまったのでぅが、最後に繋がってちょっと安心しましたでよ。
でも、前回の引き的に操られてるのかと思ったら封印されて呪いのアイテムになっててちょっと残念w
まあ、ということは呪いを解くためとかそういう理由で現代の世界で痴女怪盗をやるということで九音ちゃんは京介くんに正体バレたくないーと叫びながらも怪盗をするキャッツアイやセイントテール的な方向になるわけでぅね。
あ、これ京介くんが九音=インクをわからないままインクに痴女られて惚れるパターンだw
九音ちゃんの受難が手に取るように予想がつくけど、次回が楽しみでぅw
であ。
お久しぶりです。
返信が遅くなりましたが、読んでくださってありがとうございますm(__)m
なかなかこちらは思うように筆が進まず(-_-;)
でも再開しますのでまたよろしくお願いしますm(__)m
おお異世界転生。
女の子の体に怪盗が入り込んで盗みを働く感じなんですね!
つまり九音ちゃんは自分の体で痴女怪盗として活躍させられてしまう羞恥プレイ……!
かわいそう!
お久しぶりです。
遅くなりましたが読んでくださってありがとうございますm(__)m
こちらはなかなか筆が進まず(-_-;)
しかも、書いていて、催眠小説なのか(-_-;)と不安になる日々です。
が、頑張ってエロエロにしていきます(・ω・)ノ
再会しますのでよろしくお願いいたします