傀儡の舞 | E=MC^2

　俺は村川博。アメリカではヒロと呼ばれていた。有名なスポーツトレーナーのスタッフをやっていた。
　アメリカで得た『力』。これをむざむざと手放すほど、俺は善人ではない。俺は自分の野心の為に、この『力』を大いに使うつもりだ。

傀儡の舞　２－１

第二章　蔵本双葉（1）　　自然が残る郊外の広い敷地に、長い伝統を誇るその学校はあった。私立緑心学園。　美人が多いと評判の学校だった。ここの制服に憧れ、受験する者は後を絶たない。　この女子校は、新体操に力を入れて

（３１）　アップテンポの曲が、フロアの上に響いていた。音楽に合わせて、女子部員の体が躍動する。一瞬一瞬で描かれては消えていく、花火にも似た刹那的な美しさが、そこにあった。レオタードに身を包んだ五人の女の子達の一糸乱れ

（２１）　夕方ホームルームが終わると、鈴菜はすぐに教室を出ようとする。「鈴菜ぁ、今日もリハビリか？」　まだ部活が始まるまで、少し時間があった。早夜子は自分の席に座ったまま、クラスメイトと雑談していた。そのまま首を伸

（１１）　鈴菜はそっと自分の体を抱きしめた。伝わってくる感触に、何の違和感もない。　そろそろ消燈の時間だった。白いチェック柄のパジャマ姿のまま、自室のベッドに腰掛けていた。どうしても、休む気になれなかった。　朝にな

プロローグ　座席の前の液晶パネルが、飛行機の現在位置を知らせてくる。まだアラスカ辺りだ。日本に到着するまで、まだまだ時間がありそうだ。こんな時は眠るに限るのだが、どうしても眠れない。四年ぶりの帰国に、どうも俺の神経は昂