第22話 法王は王宮の一室をあてがわれた。幸い部屋は広く、十分な食事もあり、聖典を所望したらあっさり受け入れられた。 彼女はロザリオを肌身離さず、聖典を読み返して時間を過ごすことにする。 1日目。 「――ふ、ふざけ
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かつて、人間がまだ生まれて間もなく、世界がまだ混沌に包まれていたころ、光の神と闇の神の戦いがあった。
星辰の巫女たち 第21話
第21話 法王は驚いて玉座から立ち上がった。 爆発音がした。もしや、敵襲? 法王の間で彼女は固唾を飲んで待つ。 と、法王の間の扉の前のベルが鳴った。 「ステラ=マリです。猊下、ただいま戻りました」 「!」 ステ
もっと読む星辰の巫女たち 第20話
第20話 アールマティ大聖堂。その上層にあたしの部屋はある。 あたしはテーブルの上に顔を伏せ、うなだれていた。 はぁ。 どうしてあたしばっかりこんな役回りなのよ。 あたしの気だるくて色っぽい溜息が漏れた。 こ
もっと読む星辰の巫女たち 第19話
第19話 エルフは森の中でひっそりと暮らす種族だ。レン西方の大森林最深部には、大陸最大のエルフの隠れ里がある。 が、なくなった。 魔物の軍勢が現れ、一夜にしてこの里を蹂躙尽くしたのだった。 光の術に長けたエルフた
もっと読む星辰の巫女たち 第18話
第18話 空は、いつの間にか暗雲に包まれていた。 レン首都の町はずれ。リーゼロッテは長年慣れ親しんだ生家の庭で、敵と対峙していた。 「タローマティだと……!」 目の前に現れた悪魔が名乗った名に、彼女は驚きを隠せない
もっと読む星辰の巫女たち 第17話
第17話 いったい、何度この体を弄ばれたことだろう? リーゼロッテは闇の中で考える。 あるときは、優しく、まるで尊い姫君と初夜を過ごす王子のように慎重に慎重に彼女をいたわりながら行為を行った。またあるときは、獣のよ
もっと読む星辰の巫女たち 第16話
第16話 一方、こちらはリーゼロッテと共にレンに潜入したポピレア。 リーゼロッテと分かれてから10日以上が過ぎていた。縦ロールを振り乱しながら、彼女は馬を走らせていた。 ポピレアはレンで重度の洗脳を受けてしまった。
もっと読む星辰の巫女たち 第15話
第15話 彼女の性感が開発されてからというもの、牢獄内の地獄はさらに辛いものになった。彼女は身を苛む苦痛に加え、もっと恐ろしい敵・快楽とも戦わなければなくなったからだ。 だが彼女はどんなに体を弄ばれても、苦しめられて
もっと読む星辰の巫女たち 第14話
第14話 リーゼロッテの意識は夢の中をさまよっていた。 彼女は力なくうなだれ、後輩プリムローズの膝の上に枕していた。奇妙な光景だった。かつては、彼女のほうが完全に立場が上でプリムローズを翻弄していたのに、今その上下関
もっと読む星辰の巫女たち 第13話
第13話 美しい蝶は蜘蛛の巣に捕われていた。 蝶は羽ばたくことをやめていた。それは抵抗する力をなくしたためではない。賢明な蝶は、もがけばもがくほど蜘蛛の思うつぼだということを知り、じっと耐えていたのだった。 あれか
もっと読む星辰の巫女たち 第12話
第12話 「んん……」 リーゼロッテは暗い部屋の中で目を覚ました。 捕まったのか……。当然か。 彼女は自分の体を確かめる。とりあえず、折り目正しく纏った巫女装束に乱れはない。 と、部屋の対角で声がした。 「お目覚
もっと読む星辰の巫女たち 第11話
第11話 日輪の巫女ステラ=マリが慈愛の巫女なら、月の巫女リーゼロッテは強さの巫女だと言われる。 リーゼロッテは、巫女の中で最も幼く見え、最も傲慢で、そして最も戦闘力に秀でた巫女だ。 彼女はこの世で一番自分が尊
もっと読む星辰の巫女たち 第10話
第10話 かつて邪神を崇めた神殿。いまその祭壇で、復活した邪神の前に巫女が跪いていた。 星の巫女プリムローズは幸せそのものの顔でタローマティを見上げていた。 うれしい。ご主人様がわたしをしもべとして認めてくださ
もっと読む星辰の巫女たち 第9話
第9話 「誰か! この状況を説明できる者はいないのか!」 夜が明け、神殿騎士たちは大騒ぎだった。彼らのリーダー・星の巫女プリムローズが消えているのだ。 彼女を最後に見たのは不寝番だったが、彼はその後強烈な眠気に教われ
もっと読む星辰の巫女たち 第8話
第8話 ザールの意識は深い闇の底にあった。 あたりは光ひとつなかった。音も、匂いも、熱さも冷たさもなかった。 満足な思考能力はなく、眠っているのか起きているのかわからない朦朧とした意識だった。 意識が途切れたのは
もっと読む星辰の巫女たち 第7話
第7話 プリムローズは邪教の神殿の祭壇の上に立っていた。その姿は、まるで生贄に捧げられる羊か、でなければ闇の儀式を執り行う巫女のように見えた。祭壇の前には大きな鏡。そこには怒りに染まった顔を戸惑わせるプリムローズの姿が
もっと読む星辰の巫女たち 第6話
第6話 人生でもっとも幸せなときはいつか、と訊かれれば、プリムローズは父と過ごした時期だと答えるだろう。 物心ついたときから数年間の、大好きな父に守られていたとき。 プリムローズはずっと父に育てられた。父はこの愛ら
もっと読む星辰の巫女たち 第5話
第5話 アールマティ大聖堂のそばに小さな孤児院がある。 この牧場の中を、いま子供たちが遊んでいる。 彼らの中に混じって草原の上を転がりあって遊ぶ少女がいた。 可憐な少女だった。桃色の髪、透き通った目、ほっそりと整
もっと読む星辰の巫女たち 第4話
第4話 アールマティ大聖堂から東にあるレン国。大陸有数の大国だ。この首都レン市からは東西南北あらゆる方向に街道が伸び、地方交易の中心地となり、広場には商人たちの賑わいが絶えることがない。 このレン国を治める女王・フロ
もっと読む星辰の巫女たち 第3話
第3話 巫女との出会いから数日……ザールは巫女の癒しの力によって回復した。 ステラ=マリは毎日彼の病室を訪れ、荒んだ相貌の彼を軽蔑することも怖気づくこともなく接してくれた。 病室で二人きりになっても、ザールは最初、
もっと読む星辰の巫女たち 第2話
第2話 この大陸の人々の心のよりどころである、アールマティ聖教。 人々は誰もが光の神アールマティを信仰し、一生に一度はその聖地・アールマティ大聖堂を訪れたいと思っている。この大聖堂の中心人物である法王といえば、世俗の
もっと読む星辰の巫女たち 第1話
第1話 かつて、人間がまだ生まれて間もなく、世界がまだ混沌に包まれていたころ、光の神と闇の神の戦いがあった。 光の神をアールマティ。闇の神をタローマティという。 アールマティは天使たちを率いて戦った。タローマティは
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