後編 <火曜> 「桃花、起きなさい。」 ベッドの上から、指図する声。桃花の両目は不自然なほどパッチリと瞬時に開く。即座に眠りから覚まされていた。 「あれ・・・。お、おはようございます。ご主人様。今日も一日、よろしくお願
もっと読む「特異体質」
ノマドさんちの1週間 前編
前編 <日曜夜> 朝比奈家はその日、夕食は早めに軽く済ませて、家族みんなでコンサートに行く予定だった。朝比奈桃花も、母に言われて、よそいきの服に着替えて食卓についていた。父、母、2人の姉。みんなクラシックに親しんでいた
もっと読む中2の血脈 後編
後編 ダブルデートでプールに来るというのは、水島日菜子の提案ではなかった。彼氏の和馬と親友の亜里沙に、強引に約束させられてしまったのだ。日菜子と亜里沙は都立高校で男子バスケ部のマネージャーをしている。彼氏の和馬とキャプ
もっと読む中2の血脈 中編
中編 真っ白な背景の部屋で、悠生は女の人を裸にして、抱きしめていた。オッパイに吸いついて、もう片方のオッパイを手で強く掴む。柔らかくて白い肌は、昨日の「母」、悠美の体の感触。その裸の女の人も、悠生に触られることを嫌がっ
もっと読む中2の血脈 前編
前編 「ソー? ・・・ホワッドュユーセイ?」 「ワッデューセイ?」 「ワデューセイ?」 ラッパーでもないのに、一生懸命鏡の前で、ネイティブっぽい発音を口真似しながら、何度も繰り返す。学習机に置いた鏡に向かって、自分の発
もっと読む僕の変性期 第6話
第6話 駅の西口前にある、レコードショップに掲げられた大画面テレビ。その下のプロモーション用のブースに、今日はなぜか素人っぽい中学生の男の子が上がっていた。それでも周囲は黒山の人だかりになっている。まるでアイドルグルー
もっと読む僕の変性期 第5話
第5話 昼休み前の時間になると、焼きたてのロールパンが大人気のパン屋さん、「メープル」の前にはいつも、若い女の子の行列が出来る。今日も、中学生のカップルが近くを通り過ぎるまでは、いつも通りの行列だった。 最初に異変に
もっと読む僕の変性期 第4話
第4話 通学のバスに揺られながら音楽を聴いていた安達若葉は、曲が途切れた数秒の間、自分と同年代ぐらいの男女がモメている声に気がついた。いや、モメているというよりも・・・、一方的に女の子が叱りつけてる? 「アンタもう、い
もっと読む僕の変性期 第3話
第3話 「ミーオちゃんっ。機嫌直してよ。そんなに嫌だったんなら、パンツの件は謝るからさ。」 天井まで届く本棚に囲まれたテーブルで、拓海が甘えたような声を出す。澪は無視して分厚い郷土資料の本をめくり続けていた。別に研究課
もっと読む僕の変性期 第2話
第2話 蜂屋拓海が、音楽の授業中に喉を痛めて早退してから2日。彼は学校を欠席した。 「声変わりの症状なので過度に心配する必要はないけれど、少し症状が重いので大事を取って安静しています。皆さんも成長期には色々と体調を崩し
もっと読む僕の変性期 第1話
第1話 考えてみると、園池澪が蜂屋拓海の家を訪れるのはずいぶん久しぶりになる。 (中学に入ってから、すっかり来てないかも・・・。幼馴染みなんてそんなものかな?) 蔦を這わせた赤レンガの門灯。幼稚園の頃には、近所に住ん
もっと読むさよならポコチン先生
<2年6組ポコチン先生> 高い声、低い声の交じり合う際限ないお喋り。椅子の足が床と擦れて立てる音。ひっきりなしに開かれては閉じられる扉の音。朝の透明な日差しが差し込む教室は、今日も音の洪水でごった返している。 園山修
もっと読むガールハント 2008
「ちぇっ。なんか今日は、やっぱり、瘴気が濃いような気がすんだよなー・・・」 伊川隆仁がボヤく。駅前の大通りで唐突に立ち止まった彼に対して、後ろを歩いていたサラリーマンは、小さく舌打ちをして彼を追い越していく。 寒空の
もっと読む闇の脱走者 第八話 支配する者
第八話 支配する者 「あああああああああっ」 彩の声が部屋に響く。 彩の部屋では狂宴が繰り広げられていた。 彩が律子の上へとのしかかり、律子の膣に指を這わす。 「ああ・・・・そこがいいの・・・・唯咲さん・・・・」
もっと読む闇の脱走者 第七話 堕ちし者
第七話 堕ちし者 ゴポ・・・・ゴポポ・・・・・・ 円柱状の水槽の底から気泡が上がる。 その水槽には無色透明の液体が満たされ、その中には裸の小野 七緒がいた。 浮力と重力の均衡した点なのか水槽の真ん中に七緒は浮かび
もっと読む闇の脱走者 第六話 産みし者
第六話 産みし者 しかし、まずいことになった。 とりあえず、0070に簡単な処理をしたが、いつ解けるかもわからない。 今はまだ、俺がここにいることは知られていないが、それも時間の問題だ。 一刻も早く手を打たなけれ
もっと読む闇の脱走者 第五話 狙いし者
第五話 狙いし者 「すていつ・・・・アメリカ?」 「はい。私はThe United States・・・日本ではアメリカ合衆国というのでしたね、アメリカで開発された合成人間です」 イヴは淡々と俺に告げる。 イヴの話によ
もっと読む闇の脱走者 第四話 渡ってきた者
第四話 渡ってきた者 ザワザワと生徒達が喧噪を作り出す。だが、生徒達は机から離れず、近くの席の相手とこそこそと話をしていた。 「ほーら、静かにしろー」 担任が一喝する。だが、そんなものは全く効果がなかった。転入生が来
もっと読む闇の脱走者 第三話 愛する者
第三話 愛する者 ざわざわとざわめく室内。そのある一点に人口が集中している。その中心に俺はいた。 「前はどこにいたの?」 「分からない場所教えてあげようか?」 「趣味何?」 そのうざったい質問攻めに一つ一つ答えながら
もっと読む闇の脱走者 第二話 従わせる者
第二話 従わせる者 「んはぁっ、あんっ、はぁんっ」 彩が俺の上で体を揺らす。それに伴い胸や髪が動き回り、彩はさらに乱れていく。 下から手を伸ばし、彩の胸を揉み上げる。適度に柔らかく、弾力もある。あまり大きくない事を除
もっと読む闇の脱走者 第一話 脱走せし者
第一話 脱走せし者 ブゥゥゥゥゥゥン 人の気配のない部屋に機械の駆動音が響き渡る。 俺は閉じていた目を開く。回りに液体があるにもかかわらず、水槽の外が見える。 この液体は極めて特殊な物でこの中でも肺呼吸ができる代
もっと読む幻市 付章(その③)
付章(その③) 4.倉田(その②) 倉田が離婚したのは3年前だった。離婚にさしたる理由はない。妻の晴代とは実業団の現役サッカー選手時代に結婚したのだが、倉田の体重が増えるのに比例して感情がすれ違いを始め、結局、3年前に
もっと読む幻市 付章(その②)
付章(その②) 木曜日の11:00。ホテル・アルフォンヌのスイートでランチオンインタビュー。・・・OK。 倉田は受話器を置いた。今日は火曜日。明日一日準備に使える。倉田は早速メモを出して水曜日一日を使ってできる事を検
もっと読む幻市 第九章、付章(その①)
第九章 この数日間の練習で僕は「波動砲」をかなり上手に扱えるようになっていた。強い波動砲、鋭い波動砲、長距離波動砲・・・と使い分けられる。 「ごめんなさい。イヤな事、訊いちゃった?」 「エッ?・・・いや、構わんですよ」
もっと読む幻市 第八章
第八章 よしっ、そのままこっちに来て・・・。 そこでクルッとターン。そうだ、綺麗だよ、美紀。いいよ、微笑んで・・・うん、素敵だ。純白のウェディングドレス。君に城のドレスがこんなに似合うなんて知らなかった。 床に座っ
もっと読む幻市 第七章
第七章 さあ、ここまで《シンイチ》と《てん》の話をしてきたんだけど、美紀ちゃん、理解できた? これから話すのは《シンイチ》と《てん》が融合した日の事。僕の感覚で言うと《てん》としての自我はそのまま残っていたから《てん
もっと読む幻市 第六章
第六章 雨の日曜日。金沢はこれからのシーズン、太陽を見ることはぐっと少なくなる。11月から3月にかけて重苦しい曇りの日が続く。 いつもであれば少々の雨ならレインウェアを着て走り込みをする《シンイチ》だが、期末試験も近
もっと読む幻市 第五章
第五章 《シンイチ》が性欲を身につけるのと反比例して《てん》の活動は納まりつつあった。 《てん》は《シンイチ》の性欲の目覚めと自慰によって慰められ、靄(もや)の中から《シンイチ》を眺める生活に戻った。 このころの僕
もっと読む幻市 第四章
第四章 さあ、どこまで話したっけ。 そうそう、友達が来てるさなか、僕が発作を起こしたんだったよね。大事な所なんだ。このあたりから大きな距離のあった《シンイチ》と《てん》の間が急速に近づき始める。 《てん》に感情が芽
もっと読む幻市 第三章
第三章 《シンイチ》は自分自身を恐れていた。彼自身事態を正確に把握できていたわけではなかったけれど、いくつか彼が推定したことがある。 一つ、時々自分は性的衝動を抑えられなくなって暴行魔になってしまうことがある(覚えてい
もっと読む幻市 第二章
第二章 《シンイチ》は2日間、寝込むことになった。 病院からも、警察からも何の連絡もなかったけれど、野杖医師に対しておこなった行為が何の咎めもなしに済まされるとは思えず、《シンイチ》は怯えていた。 滅多に寝付いたこ
もっと読む幻市 第一章
[編集部注] 本稿はKなる人物により当編集部に持ち込まれた音声テープを文字起こししたものである。Kは自称フリーターであり、このテープはKにより仕掛けられた盗聴器により盗聴された物との事である。 当編集部はKが行った盗
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