その日のダニエルは、最近では珍しく、ミヤグニ・サンの家に来ていた。初めて彼の家を訪れてからもう半年以上経つ。それは7か月という実際の期間以上に昔のことのように思われた。なにしろこの半年間、彼にとって楽しいことが多すぎた
もっと読む「妖術」
テレパスキッド 4
『イの壱』の技法は、対象となる相手へ、コードのような『氣の道』を繋いで、いつでも相手の行動や思考、感情や記憶まで干渉出来るようにする。それは『氣』で人に影響を与える技術の中の基本であり、究極とも言えるような、大事な技法だ
もっと読むテレパスキッド 3
「思ったよりも早く来たのう。私のことなど忘れて、2、3カ月は遊び呆けるとばかり、思っておった」 ミヤグニさんは、約1カ月ぶりに自分の家を訪れたダニエルを見て、微笑むような、あるいは単に顔の皺を伸ばすような、見ていて
もっと読むテレパスキッド 2
想像した通り、その日の授業時間はずっと、ダニエルにとって、「期待に胸を膨らませる天国」と、「最高のご馳走を焦らされる地獄」との往復のような時間になっていた。ステファニーと同じクラスで受ける授業の間、彼女はチラチラとダニ
もっと読むテレパスキッド 1
「向こうに見える丘に、とっても気持ちの良い公園があるらしいわよ。海も見えるんだって。ベッツィーが言っていたの。今度、皆でランチボックスを持って行きましょう」 助手席に座るママ、ルシールの声は明るい。 「それは良
もっと読むMC三都物語 神戸編 後編
神戸編:後編 赤い靴はいてた女の子 「んふうっ……はうんっ、んっ……んんんっ……」 「あんっ、あっ、あんっ、んっ、あんっ、はんっ!」 「あむ……ぴちゃ、ちゅる……ん、んふう、ちゅぽ……」 薄暗い広間のあちこちで、女の
もっと読むMC三都物語 神戸編 中編
神戸編:中編 刑事純子 「あら、こんな所にも異人館があったのね……」 北野の異人館街の一角で、私は足を止めた。 高い石壁の連なる路地裏で、開いた門から白い洋館が見える。 「ここは、観光客向けではないわね。じゃあ、生
もっと読むMC三都物語 神戸編 前編
神戸編:前編 異人館にて 「あっ、恋ちゃん!こっちこっち!」 改札の向こう、エスカレーターを降りた恋ちゃんが少し小さめのトランクを引いてくる姿を見つけて、私は大声を上げて手を振る。 恋ちゃんに会うのは久しぶりやけどす
もっと読むMC三都物語 大阪編 後編
大阪編:後編 オーサカ・アンダーグラウンド 「これが先月の上がりか……」 田村の報告してきた金額はおよそ480万円ほど。 その数字を睨みながら俺は腕を組む。 上からの指示で東京から出てきて1年あまり。 少しずつ伸
もっと読むMC三都物語 大阪編 前編
大阪編:前編 すぐそこに潜む闇 その日も、チャイムが鳴って退屈な授業が終わった。 あたしは、すぐ後ろの席のサッちゃんに声をかける。 「なぁなぁサッちゃん、一緒に帰らへん?」 「ごめん!今日はこれから塾やからあかんねん
もっと読むMC三都物語 京都編 後編
京都編:後編 闇の蠢く街で 8.夏の虫 四条の駅で降りて階段を上ると、すぐそこの四条大橋のたもとに立っているツインテールに髪を結った姿が目に飛び込んできた。 まだ約束の10時まで15分あるっていうのに、もう由那ちゃん
もっと読むMC三都物語 京都編 中編
京都編:中編 巫女姉妹 4.布石 「はんっ、ああっ、あんっ、サトル様ああああっ!」 はだけた巫女装束からこぼれ出た胸を、サトル様の口が吸う。 それだけで、全身に電気が走る。 いや、さっきから電気はずっと走りっぱなし
もっと読むMC三都物語 京都編 前編
京都編:前編 鬼の棲む社 1.継承 親父が、病に倒れた。 俺、鬼無聡(きなし さとる)の生家は、京都の街の、昔でいえば洛中に当たる、古い町屋の並ぶ通りの奥にある小さな神社だった。 町屋と言えば聞こえはいいが、特に景
もっと読むサイの血族2 スピンオフ・もうひとりの隼人
1 「隼人君! なにやってるの!」 「あっ・・・ひろみせんせい・・・えっと、お医者さんごっこだよ・・・」 園の裏手にあるベンチにパンツを脱いだ美菜がしゃがんでいて隼人が局部を覗き込んでいた。 「そんなことしちゃダメ!
もっと読む戦国くノ一 胡蝶伝
時は戦国、乱世の時代。 幕府による太平の世は既に過去のものとなり、身分の貴賎に関わりなく、力ある者が力無き者を打ち倒しのし上がって行く、そのような時代。 馬渕国(まぶちのくに)の豪族である黒田龍禅は、その強大なる兵
もっと読むまいごのおまわりさん 第二話
第二話~雨足の夜想曲(1)~ 「見つけたぞ。裏切り者」 アルフィリア=ウェーバーが裏切り者である男の執務室で、小さな少女と共にいるその男を見つけたのはもう何年も前の事である。 その男は自らを裏切り者と呼ばれても何も反
もっと読むまいごのおまわりさん 第一話
第一話~翼とルル~ 錬金術―――。 卑金属から金属を造り出す術。 現在の化学の基礎となった化学技術。 無から生物を造り出す生態技術。 不老不死を手に入れる秘術。 そんな、錬金術を研究した者たちを、人は総じて錬
もっと読むまいごのおまわりさん プロローグII
【プロローグII ~オモイツタエテ~】 その指輪は、欲望を実現させる道具であった。 かつて、盗賊はその力を使い、金銀財宝を手に入れた。 かつて、王侯はその加護を得、平和と名声を授かった。 かつて、軍閥はその威を振
もっと読むまいごのおまわりさん プロローグI
【プロローグI ~マイゴノマイゴノ・・・~】 ―――どうしたん…―― 「………」 ―――えっ!?まっ、まよった?でっ、でもここは……―― 「………」 ―――あぁっ!?わっ、わかったからなかないで…―― 「………」 ―――
もっと読む催淫師 嵐前
─ 嵐前 ─ 雨桶市全域にかかった霧は、朝日に照らされ緑色に光っている。道行く人々はその不自然さに疑問を表すこともなく、歩を進めている。 「ああっ・・・」 不意に一人の女性が喘いだ。彼女の顔は上気し、口の端からは涎が
もっと読む煉牙の門 第一話(改)
第一話 組織 暗い部屋。 そこは、暗い部屋だった。 頼りになるものは、空中に漂う蝋燭の光。 蝋燭の光を部屋の中心とするなら、その部屋はかなり大きいことが見てとれた。 蝋燭の光量が足りていないせいで、部屋の全体像
もっと読む煉牙の門 プロローグ(改)
プロローグ 「そろそろ出てきたらどうだ?」 闇夜に響く男の声。 まるで、これから起こることを純粋に期待する少年のような声色。 「いえ、あなたと正面きって争うことは不本意なんですけど」 答えるは、幼い少女の声。 そ
もっと読む催淫師 妖染 崩山(4)
妖染 ─ 崩山(4) ─ 柏山大附属高校の運動場では、体育の授業でラクロスが行われていた。赤と白のどちらのチームの選手も全員下着姿であった。そして二チームが対戦している間、他の生徒達は腰を下ろして見学していた。 「ゴー
もっと読む催淫師 妖染 崩山(3)
妖染 ─ 崩山(3) ─ 三人は時間が止まった教室を出た。授業が始まっている為、当然廊下には誰もいない。 「どこへ行くの?」 真弓が尋ねても啓人は答えず、どんどん先へ歩いていく。やがて立ち止まると、二人の方を向いた。
もっと読む催淫師 妖染 崩山(2)
妖染 ─ 崩山(2) ─ 「もう良いぞ」 啓人は不意に、腰を引いた。 「あ・・・」 一心不乱に舐めていた真梨江は、不満げな顔をした。それを見た啓人は、例の笑みを浮かべた。 「そんなに気に入ったのか?」 からかう言葉
もっと読む催淫師 妖染 崩山(1)
妖染 ─ 崩山(1) ─ 「えー・・・最後に言いたい事がある」 担任の男性教師はここで言葉を切り、教室全体を見回した。今はSHRが行われているのである。勿体ぶって咳払いを一つすると、担任は口を開いた。 「最近、物騒にな
もっと読む催淫師 暗躍編(6)
暗躍編(6) 「此処ね」 廉霞はとある町にある、空き家の前に立っていた。何やらおかしな連中が住み着いて、近隣の者に被害が出ている、警察の手にもおえないから何とかして欲しいという要請を受けての事である。 (確かに妖気を感
もっと読む催淫師 暗躍編(5)
暗躍編(5) ピシャッという音が、始まりの合図だった。 「あっ・・・うんっ・・・」 清華は男を玄関で受け入れ、仰け反った。 「んくっ・・・はっ・・・」 啓人は浅く、ゆっくりと動き出す。清華はその啓人に、しがみついた
もっと読む催淫師 暗躍編(4)
暗躍編(4) 二人が入ったのは、六畳の和室であった。そこには机が一つあるだけで、片付いているというよりは他に何もなかった。 「ここは・・・?」 尋ねる啓人の声にも、不思議そうな響きが含まれている。ゴミどころか、塵一つ
もっと読む催淫師 暗躍編(3)
暗躍編(3) 今は昼休み。転校生はヒーローという図式が見事に当てはまっている啓人は、他の生徒の勧誘や質問責めから逃れ、屋上にいた。 「ふう・・・やれやれだ」 さしもの啓人も、あの圧倒的なパワーにはてこずった。力をまだ
もっと読むボーダーライン
僕は二流の大学に通う、平凡な男だ。 外見も、頭も趣味も。 でも趣味に関してはあまり大きな声じゃ言えない。 僕の趣味は写真撮影。 それだけなら、平凡だろ? でも僕が撮るのは綺麗なもの・・・特に女の人。 まあ世
もっと読む催淫師 暗躍編(2)
暗躍編(2) 白笠は二人の仲間と共に歩いていた。 「ち・・・何でこんなに催淫蟲がうるさいんだ?」 「連中が言ってる事、正しいんじゃないのか?」 仲間の一人がたしなめるように言う。 「別に俺は反対してるわけじゃないぜ。
もっと読む催淫師 暗躍編(1)
暗躍編(1) 日曜日、全員揃うと同時に啓人が宣言した。 「今日皆で出掛けるぞ。但し!魅矢は留守番!」 「え?何処へ?」 「山登り♪」 ハテナマークを飛ばす理乃だったが、 「さっさと用意しろ」 と急かされ、慌てて着替
もっと読む催淫師 始動編(2)
始動編(2) 冴草啓人は雨桶市内のとある高級マンションの部屋にいた。部屋の住人である美女はベットの上で荒い息をしていた。己の欲望をあと一歩で満たせるという段階に至っても啓人は少しも悠然とした態度を崩さない。目の前にとび
もっと読む催淫師外伝 その1 前編
その1(前編) 土曜日の午後六時半。人通りもまばらになってきても男はそこから動こうとしなかった。 身長は百八十センチ前後で何故かベレー帽とサングラスを身につけた、体格の立派な人物である。サングラスの奥からは陰険な目付
もっと読む催淫師 始動編(1)
始動編(1) 割と格好良い一人の少年が市役所の建物を見上げていた。彼は昨日この雨桶市にやってきたばかりなのである。だからと言って、別に住民登録をしに来たという訳ではない。 「思ってたよりも・・・大きいな」 その少年、
もっと読む催淫師 序章(改)
四月も終わる金曜日の夜、雨桶市外にある霧に包まれた古い洋館の前に、一台のトラックが止まり、三人の人間が降りて来た。 「あんた達、本当にあそこに・・・あの‘悪霊の館’に住むのかい?」 まず口を開いたのは、三十代後半と思
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