僕の変性期 第6話

第6話  駅の西口前にある、レコードショップに掲げられた大画面テレビ。その下のプロモーション用のブースに、今日はなぜか素人っぽい中学生の男の子が上がっていた。それでも周囲は黒山の人だかりになっている。まるでアイドルグルー

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僕の変性期 第5話

第5話  昼休み前の時間になると、焼きたてのロールパンが大人気のパン屋さん、「メープル」の前にはいつも、若い女の子の行列が出来る。今日も、中学生のカップルが近くを通り過ぎるまでは、いつも通りの行列だった。  最初に異変に

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僕の変性期 第4話

第4話  通学のバスに揺られながら音楽を聴いていた安達若葉は、曲が途切れた数秒の間、自分と同年代ぐらいの男女がモメている声に気がついた。いや、モメているというよりも・・・、一方的に女の子が叱りつけてる? 「アンタもう、い

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僕の変性期 第3話

第3話 「ミーオちゃんっ。機嫌直してよ。そんなに嫌だったんなら、パンツの件は謝るからさ。」  天井まで届く本棚に囲まれたテーブルで、拓海が甘えたような声を出す。澪は無視して分厚い郷土資料の本をめくり続けていた。別に研究課

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僕の変性期 第2話

第2話  蜂屋拓海が、音楽の授業中に喉を痛めて早退してから2日。彼は学校を欠席した。 「声変わりの症状なので過度に心配する必要はないけれど、少し症状が重いので大事を取って安静しています。皆さんも成長期には色々と体調を崩し

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僕の変性期 第1話

第1話  考えてみると、園池澪が蜂屋拓海の家を訪れるのはずいぶん久しぶりになる。 (中学に入ってから、すっかり来てないかも・・・。幼馴染みなんてそんなものかな?)  蔦を這わせた赤レンガの門灯。幼稚園の頃には、近所に住ん

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五色髪 姉編

姉 編  私、広幡瑠美子が藤宮淑恵にちょっと意地悪く言ってやったのは、金曜のお昼休み、社食でのことです。 「あ~ら、藤宮さん、金曜の夜に予定がないなんて、寂しくない? 貴方、美人なのに一人ぼっちだなんて、やっぱり性格が暗

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五色髪 妹編

妹 編  おっ、今、目があった・・・?  あ、すぐ逸らされちゃった。  更紗はまるで拒絶するみたいに首を振って、教科書につっ伏しちゃう。  駄目か・・・、絶望的。  僕もうなだれるように机につっ伏して、大きなため息をつい

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The Galactic Chasing

『ティナ、繰り返すよ。これ以上の追跡は危険。  流星群のうちのどれかにヒットしてグシャグシャになっちゃう。  腐れ縁の旧型プラネット・ホッパーも今日でスクラップだってば!』 「うるさいっ。ダニーボーイは突入傾斜角の計算に

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ジェリー・フィッシュの事件簿もしくはボヤキ 第1話

第1話 「テレパス」  こないだ俺が相手にした奴はまあ厄介な奴だった。労多くして得るモノがあんまりない。あんな仕事ばっかりだったら俺だって転職を考えるんだがな。厄介って言っても、結果から言うと大して危険な仕事じゃなかった

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ジェリー・フィッシュの事件簿もしくはボヤキ プロローグ

プロローグ  例えばここに、手の込んだ帆船の模型があると思ってくれ。暇な金持ちのキャビネットなんかにあるだろ?瓶の中にはいった、えらく手の込んだやつだ。こいつをめちゃめちゃにぶっ壊すのは簡単だ。床に落としてやればいいだけ

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Be My Baby

「せんせい、おはよーございます。」 「はい、麻実ちゃん、おはようございます。」  にっこりほほえんで、麻実ちゃんに朝のあいさつをしているやさしそうなお姉さんは、よしずみみどり先生です。仲良しほいくえんの、チューリップぐみ

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氷河期の微熱

24。これまで、佐山美沙が受けた面接の数である。0。今までに美沙の取った内定の数だ。あまり履きなれない靴の中で、靴擦れしている左足に小さな痛みを感じながら、美沙はオフィス街から地下鉄の駅へと向かっていた。その歩き方は、ま

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