願はくは 花の下にて 春死なむ その如月の 望月のころ 西行法師 其の三 鬼が復活して、さらに二ヶ月近くが過ぎ……。 ――太政大臣・藤原良房の邸宅にて。 「兄上、叡山に、相応(そうおう)という僧がおります
もっと読む「オフィスもの」
愛欲の鬼 其のニ
今は昔、東の方より、栄爵(えいじゃく)尋ねて買わむと思いて、京に上りたる者有けり。 其の妻も、「かかるついでに京をも見ん」と云いて、夫に具して上りたりけるに、宿所の違いて無かりければ、忽ちに可行宿き(ゆきやどるべき)
もっと読む愛欲の鬼 其の一
而る間、此の鬼の魂、后を惚らし狂はし奉りければ、后いと吉く取り繕い給ひて、打ち笑て、扇を差し隠して、御帳の内に入り給ひて、鬼と二人臥させ給ひにけり。 女房など聞ければ、只日頃恋しく侘しかりつる事共をぞ鬼申しける。后も
もっと読む愛欲の鬼 序
今は昔、染殿后(そめどののきさき)と申すは、文徳天皇の御母也。良房(よしふさ)の太政大臣と申しける関白の御娘也。形ち美麗なる事、殊に微妙(めでた)かりけり。 而るに、此の后、常に物の気に煩(わずら)ひ給ければ、様々の
もっと読むドールメイカー・カンパニー3 第2幕(9)
(9)長い長い一日の始まり 翌朝は、前日とはうって変わって快晴だった。 木之下達3人は早々とホテルを後にすると、放射冷却で凍える町へと車を走らせた。 行き先は蘭子のアジトである。 “きつね”くん達の居たマンション
もっと読むドールメイカー・カンパニー3 第2幕(8)
(8)下克上 川瀬が火照った体にバスローブを纏い風呂から出て行くと、ベッドの上では木之下がうつ伏せの美咲の体に圧し掛かっているところだった。 「どぉだぁ、木之下ぁ?貫通式は無事終了かぁ?」 備え付けの冷蔵庫から缶ビー
もっと読むドールメイカー・カンパニー3 第2幕(7)
(7)美咲の奸計(後編) 「チッ、チーフッ!ちょっと、やめて下さいっ!冗談じゃないっすよっ、銃を向けるなんてっ!」 木之下が必死に呼びかけた。 けれどそれに答える美咲の言葉は、2人に衝撃を与えた。 「誰が冗談などと言
もっと読むドールメイカー・カンパニー3 第2幕(6)
(6)美咲の奸計(前編) 暗い県道を1台のランクルが疾走していた。 運転しているのは美咲の部下、川瀬である。 尾行を気にしながら進路を小刻みに変えている。 しかしミラーに映るヘッドライトが完全に消え去ると、やがて
もっと読むドールメイカー・カンパニー3 第2幕(5)
(5)奪還 “きつね”くんは美咲の言葉を聞いて、すぐに諒子を振り返った。 すると時計を見上げていた諒子はワンテンポ置いて片手を広げる。 50分という意味だろう。 つまり美咲の仲間の突入までもう10分程度ということ
もっと読むドールメイカー・カンパニー3 第2幕(4)
(4)美咲の誤算(後編) 「わっ・・・凄いっ。もう効いてきたよっ」 若い男のその声が、美咲が最初に耳にした言葉だった。 ボンヤリしていたのはホンの一瞬である。 すぐに事態を思い出すと、美咲はパッと目を見開いた。 「
もっと読むドールメイカー・カンパニー3 第2幕(3)
(3)美咲の誤算(前編) 早々と夜の帳が降りた冬の街を、いつもどおりの騒音をまき散らしながらその電車は走り抜けていく。 夕方のラッシュで混み合うこの電車に、美咲は独りで乗り込んでいた。 けれど地味なコートを纏ったそ
もっと読むドールメイカー・カンパニー3 第2幕(2)
(2)渦中へ まるで蘭子の足跡をなぞるように、1台のランクルが高速を北上していた。 運転しているのは川瀬、助手席には木之下が座っている。 そして美咲はセカンドシートに独りでゆっくりと腰掛けながら、愛用のPCで蘭子の
もっと読むドールメイカー・カンパニー3 第2幕(1)
(1)サルベージ 白神は目の前で繰り広げられる実験の進行を静かに見守っていた。 マジックミラー越しに見える部屋は、実験室というより保健室といった方が近い内装である。 そして白い清潔そうなシーツが敷かれた堅そうなベッ
もっと読むドールメイカー・カンパニー3 第2幕プロローグ
第2幕 奈落 プロローグ 瞳の奥の罠 タン・・・タン・・・タン・・・ テーブルの下で男の足が微かにリズムを刻んでいる。 向いに座る女の耳にもその音は届いていたが、しかしそれが意識にのぼる事は無かった。 まるで
もっと読むドールメイカー・カンパニー3 (6)
(6)取引 部屋の真ん中で生臭い匂いを発散させながら、5人の男達が絡み合っている。 蘭子は目の前で開始されたその狂態をチラッとだけ見ると、すぐにプイッと視線を逸らした。 ヤクザ達には相応しい復讐だったが、その光景は
もっと読むドールメイカー・カンパニー3 (5)
(5)復活! 道を行く軽トラックの音・・・ 蘭子がふと目を覚ますと、最初に耳に飛び込んできたのがそれだった。 ゆっくりと視線を巡らす。 すると薄暗い部屋の天井が見えた。 もうすっかり見慣れた監禁部屋の天井である
もっと読むドールメイカー・カンパニー3 (4)
(4)女衒 あの日から、一体何日経ったのだろう・・・ 蘭子はベッドの上で気が付くと、ボンヤリとそう思った。 しかし、疾うに日にちを数えることを諦めてしまっている蘭子には、もうその答えを探ることは出来なかった。 荒
もっと読むドールメイカー・カンパニー3 (3)
(3)調教 事務所のある市街地から車で1時間ほど北上したところにその村はあった。 山沿いの集落で、今は僅かな老人を除いて殆ど暮らす者もいない典型的な過疎の村である。 その村の中でも一番の山沿い、最も外れにある1軒の
もっと読むドールメイカー・カンパニー3 (2)
(2)罠 1台の真っ赤なセラが高速を北上していた。 冬とはいえウィークディの昼下がり、さすがにスキーやボードを載せた車はあまり目につかない。 代わりに見かけるのは荷物を満載したトラックや観光バスばかりであり、その可
もっと読むドールメイカー・カンパニー3 (1)
(1)プライド その町の中心もやはり官庁街だった。 県庁舎を中心にオフィス・ビルが立ち並び、最寄の駅の周りには、デパートとシティホテルがどこかで見たような配置で聳え立っている。 どんよりと曇った冬のある朝、多くのサ
もっと読むドールメイカー・カンパニー3 プロローグ
第1幕 魔女の屈辱 プロローグ 契約締結 シティホテルのカンファレンス・ルーム・・・ その中の一番小さな一室で、今6人の男たちが会議テーブルに着いていた。 3人ずつ、2組に分かれ向き合っている。 しかし、どうにも
もっと読むドールメイカー・カンパニー2 (32)
(32)気の荒い女神達 暖かな日差しが射し込む豪華な個室の病室で怜はベッドに腰を掛けていた。 1ヶ月あまり過ごしていた入院着やパジャマ姿ではなく、今はコットンシャツにジーンズの格好になっている。 つい先ほど主治医の
もっと読むドールメイカー・カンパニー2 (31)
(31)初対決 「あ・・・何か来る」 広大な庭を囲う3メートル以上もあるフェンスの向こう側を、何かが凄い勢いで駆け抜けていることに“きつね”くんは気付いた。 おそらく未舗装の道を行く車だろう。 フェンスの上部から舞
もっと読むドールメイカー・カンパニー2 (30)
(30)決着・・・そして 「うわあっ!」 男の声で絶叫が上がった。 「ひゃあっ」 「きつねさまぁっ!」 その突然の出来事に“くらうん”は腰を抜かし、諒子は“きつね”くんの前に身体を割り込ませた。 そして“きつね”く
もっと読むドールメイカー・カンパニー2 (29)
(29)逆転の罠 軽いクラクションの音で振り返ると、そこに見覚えのある車が止まっていた。 「こっち、こっちっ」 冴えない中年の男にそう呼ばれてもちっとも嬉しくないのだが、“きつね”くんはちょっと肩を竦めてから素直にそ
もっと読むドールメイカー・カンパニー2 (28)
(28)再生 そこには闇が居座っていた・・・ 小春日和の暖かな日差しが部屋を明るく照らしているのに、京子には健志の座る一角だけはまるで照度が落ちているかのように暗く感じられた。 まるで闇の結界が張られているようだっ
もっと読むドールメイカー・カンパニー2 (27)
(27)健志の罠 穏やかな新春の日差しに照らされたその神社は、多くの参拝客で賑わっていた。 坂田勇作はそんな人ごみからようやく抜け出すと、近くのコーヒーショップでどうにか席を確保し、一息ついていた。 「ふぃ~・・・疲
もっと読むドールメイカー・カンパニー2 (26)
(26)それぞれのラスト・ディ ドアがガラッと開いた。 入って来たのは石田諒子だった。 学校の授業でよく着ていたグレイのスーツ姿で、ヒールを履いている。そして片手には出席簿のような黒いファイルとプリントを抱えていた
もっと読むドールメイカー・カンパニー2 (25)
(25)封印 コンコン・・・ 部屋の扉がノックされた。 既に時計の針は深夜0時を指そうとしている時刻だ。 無論、部屋の明かりは落とされ、微かに枕もとのランプだけが淡い光を灯している。 最上階に位置するこの部屋の
もっと読むドールメイカー・カンパニー2 (24)
(24)潜伏と雌伏 懐かしい場所だった・・・ 昔、二人で歩いたことがある道だった。 『そうだったよね?』 『ええ。そうね』 その低めの落ち着いた声も耳に残っている。 そっと手を伸ばせば、暖かい掌の感触もハッキ
もっと読むドールメイカー・カンパニー2 (23)
(23)約束の日(後編) 健志は自分の下腹部に押し付けていた諒子の顔をゆっくりと引き離した。 すると口の中から諒子の唾液と自らが分泌した粘液でテカテカと光った肉棒がぞろりと引き出されていった。 「諒子ぉ・・・へへへっ
もっと読むドールメイカー・カンパニー2 (22)
(22)約束の日(前編) 諒子はその日、いつに無くゆっくりと起床した。 いつもは休日でも8時には目を覚ましているのだが、今日はふと目を開けると枕もとの時計が10時を指していたのだ。 「う~んっ、良く寝たわぁ」 布団
もっと読むドールメイカー・カンパニー2 (21)
(21)チェイス! 車が出発して5分も経った頃か・・・ 「あっ・・・ちょっと、止めて」 後部座席に諒子と美紀に挟まれて座っていた“きつね”くんが急に目を開けると運転手にそう言った。 「なんだ?“きつね”」 助手席の
もっと読むドールメイカー・カンパニー2 (20)
(20)後始末 「こ・・・こりゃぁ・・・ひでぇ」 2階から駆け下りた“あらいぐま”は真っ先に武道場に降り立つと、怜のもとに駆けつけその惨状を目の当たりにした。 怜は気を失って倒れ伏していた。 ジーンズの裾から無防備
もっと読むドールメイカー・カンパニー2 (19)
(19)心の折れる時(後編) その少年に誰よりも早く気付いたのは、“あらいぐま”ではなく怜だった。 二人の対峙を真横から見ていた怜は、5人の見学者達が居る2階席の真下にある扉が開いたのを目撃した。 訝しむように視線
もっと読むドールメイカー・カンパニー2 (18)
(18)心の折れる時(前編) 「さぁ~てっ・・・いよいよクライマックスですかぁ?」 2階席から固唾をのんで事態の進行を見詰めていた“くらうん”は誰にとも無くそう言った。 「あの野郎・・・大丈夫なんかぁ?ちょっとあの女の
もっと読むドールメイカー・カンパニー2 (17)
(17)諒子の決意 はあ、はあ、はあっ・・・ 月明りに照らされた階段を勇作は一心不乱に駆け抜けていた。 (バカだ、バカだ、バカだっ!俺は何てバカなんだっ。時間が無いのに何てことだっ!) 図書館で時間を潰していた勇
もっと読むドールメイカー・カンパニー2 (16)
(16)公開調教 冬の日暮れは早い。 夕方5時にはスッカリ辺りは闇に覆われていた。 私立栄国学園高校も校舎にポツポツと明りが見える他は、野球部のグラウンドの照明も落された今、街灯から洩れる僅かな明りしか無かった。
もっと読むドールメイカー・カンパニー2 (15)
(15)運命の交差 坂田勇作は、少し焦っていた。 そしてその原因は諒子先生にあった。 勇作は諒子の国語の授業をいつも楽しみにしていた。 ハッキリいって諒子の授業はとても厳しいものである。 しかし・・・ モデル
もっと読むドールメイカー・カンパニー2 (14)
(14)踏み外した一歩 翌朝、“きつね”くんが怜を伴い社長室の扉を開けると、“くらうん”はパッと顔を輝かせた。 「おはよう、“きつね”くん。随分眠そうですね」 “くらうん”はそう言って“きつね”くんに話し掛けながらも
もっと読むドールメイカー・カンパニー2 (13)
(13)美紀、陥落 指定された駅前の雑踏に佇む美紀は、もういい加減ウンザリした気分で溜息を吐いていた。 いつもの事なのだが、美紀は引っ切り無しにナンパされまくっていた。 ちょっと勝気そうな美少女が制服姿で人待ち顔で
もっと読むドールメイカー・カンパニー2 (12)
(12)小さな亀裂(後編) ドタドタ、ドドドドドドドッ! 先ほどの“あらいぐま”の再現のように“きつね”くんも廊下を全速力で駆け抜け社長室の扉に飛びついた。 しかし鍵のかかった扉はあっさりと軽量級の“きつね”くんを
もっと読むドールメイカー・カンパニー2 (11)
(11)小さな亀裂(前編) ドタドタ、ドドドドッ! 『だっ、だ~っずげでぇ~~っ!!』 次のターゲットの資料に目を通していると、部屋の前の通路を物凄い地響きと、妙に汚らしい悲鳴がとんでもないスピードで通り過ぎて行った
もっと読むドールメイカー・カンパニー2 (10)
(10)Bモード 外出先から戻った“あらいぐま”は残業していたOL達と雑談をしていたのだが、偶々居合わせた静からその事を聞くと、血相を変えて部屋を飛び出していった。 「勘弁しろよなぁ、ったく俺に断わりも無くっ」 “あ
もっと読むドールメイカー・カンパニー2 (9)
(9)鎧袖一触 朝の定例の捜査会議が終わり、相棒の先輩刑事と早速外回りに出ようとしていた怜は、背後から声を掛けられて出ばなをくじかれた。 「なんでしょうか?」 ウンザリした表情を隠さずに怜は振り向いた。 「ちょっと、
もっと読むドールメイカー・カンパニー2 (8)
(8)始動 「経緯は大体こんなところですよ」 “くらうん”は社長室のソファに座り、テーブルを挟んで向かい側に腰掛けている“きつね”くんにそう言いながら契約書やターゲットの写真を手渡した。 「はい、OKです。大体わかりま
もっと読むドールメイカー・カンパニー2 (7)
(7)呼び出し とあるマンション、その7階の1室での出来事だった・・・ この部屋の住人、山下絵理は食卓にドンと音を立てて大皿を置いた。 「ふぅ~、お待たせぇ!重かったわぁ。夕ご飯の出来上がりよ」 夫の真一はその言葉
もっと読むドールメイカー・カンパニー2 (6)
(6)暗闇の台頭 怜はマンションの階段をリズミカルに駆け下りていた。特に急ぐ用事など無いのだが、のんびりとエレベータが上がって来るのを待っている気分ではなかったのだ。 久しぶりに会った諒子のテンションが怜を刺激してい
もっと読むドールメイカー・カンパニー2 (5)
(5)連鎖 「お姉ちゃん、誰?警察の知り合いって」 京子との電話を切ると、美紀が不思議そうに訊いてきた。 「え?あぁ・・・」 美紀の何気ない問い掛けに、珍しく諒子の歯切れが悪くなった。 「なに?どうしたの?まさかデマ
もっと読むドールメイカー・カンパニー2 (4)
(4)屈辱 その日、諒子は帰宅するなり、何か違和感を覚えた。 学校では殆ど教職員全員を敵に回しての激論を戦わせてきたところだった。 ようやく健志と連絡がとれた学年主任達は直ぐに諒子を引き連れて謝りに行こうとしたのだ
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