(1) 「うん。この辺がいいかな」 芝生を踏みしめながら、男は周囲を見渡して言った。眩しげに両目を細めていた。 遠方で鳴く野鳥の声が響いてきた。広々と開けた空間を、暖かい春の風が通り過ぎていた。 『N市総合運動公園
もっと読む平らな針の作品
シチュエーション・チェンジ
(1) 「じいちゃん。朝めしだよー」 食事を乗せたトレイを手に、僕はガレージの扉を開けながら言った。エプロン姿だ。裸ではないぞ。 トレイの上では、モヤシしか具が無いみそ汁からモヤシ臭い湯気が立ち上っていた。 我が家
もっと読む部屋の中の人形
(1) 不愉快な一日だった。 汗が滴り落ちるような暑い日、というだけではない。そんな日に限って、血の匂いの充満した部屋に足を踏み入れなければならなかったからだ。時間が経って黒ずんだ血溜りは、大きく床に広がっていた。避
もっと読むクリスタルの中庭 第四話
第四話 (14) 夜、珍しく家の電話が鳴った。この屋敷の番号を知る者は、数えるほどしかいない。 「もしもし。私だ」 それはあの催眠術師の声だった。僕にこの生活をもたらした、あの男だ。 「入金を確認した。一言、お礼が言
もっと読むクリスタルの中庭 第三話
第三話 (10) 「ねえ。日奈ちゃん」 日奈の口に二度目の精を放った後、僕は口を開いた。日奈はザーメンを、喉を鳴らせて飲んでいた。 「ン…なあに?ご主人様」 「もしさ。僕が日奈ちゃんを抱きたいと言ったら、どうする?」
もっと読むクリスタルの中庭 第二話
第二話 (7) ベッドの中の葉月は、体を毛布で隠しながら僕を睨んでいた。睨みつつも、手を伸ばして自分が着るべきメイド服を要求していた。僕は天にも上る気持ちだった。憧れ続けた葉月と、その妹を手に入れたのだ。僕専用のメイド
もっと読むクリスタルの中庭 第一話
第一話 (1) ガシャン。 背丈の倍ほどもある大きな鉄の扉を、僕は閉じた。僕の家の正門だ。その先には、木立に囲まれた屋敷の屋根が見えている。人の気配は無い。当然だ。今この家の住人は、僕一人なのだから。見送る人もなく、
もっと読む真夜中のオンライン レベル2
レベル 2 (1) 「さてと。昨日の続きをしようかな」 夜、部屋で宿題を済ませた後、詩織は椅子に座ったまま背伸びをして言った。毎週欠かさず見ていたドラマが始まる時間だったが、それよりもゲームの続きがしたかった。 ゲー
もっと読む真夜中のオンライン レベル1
レベル 1 (1) 「キャラクターを選択してください」 詩織の目の前に、キャラクター選択画面が表示される。このゲームでは、人間やホビットといった種族。それに性別や年齢、顔のタイプや髪型を選択する事で、自分の分身であるキ
もっと読む真夜中のオンライン レベル0
レベル 0 (1) 「うーん。これだとバランスが悪いかな」 ノートにシャープペンを走らせながら、僕は呟いていた。書いているのは街の地図。しかし、どこにも存在しない街のものだ。 「おーい、麻野。何書いているんだ?」 ク
もっと読む傀儡の舞 2-1
第二章 蔵本双葉 (1) 自然が残る郊外の広い敷地に、長い伝統を誇るその学校はあった。私立緑心学園。 美人が多いと評判の学校だった。ここの制服に憧れ、受験する者は後を絶たない。 この女子校は、新体操に力を入れて
もっと読む傀儡の舞 1-4
(31) アップテンポの曲が、フロアの上に響いていた。音楽に合わせて、女子部員の体が躍動する。一瞬一瞬で描かれては消えていく、花火にも似た刹那的な美しさが、そこにあった。 レオタードに身を包んだ五人の女の子達の一糸乱れ
もっと読む806 後編
後編 (16) 「ああ…ああ…いい……」 千秋は全裸になり、ベッドの上で喘いでいた。 「私…私ぃ…悪い子になっちゃった……」 自己嫌悪にとらわれる。オーナーと清香の情事の翌日、結局学校には行かなかった。真面目な千
もっと読む806 前編
前編 (1) 平日の昼間。電車の中は、余り混んではいなかった。春の暖かい日差しの中ゆったりした雰囲気が漂う車内で、手にした資料を見つめる親子がいた。 「やっぱりどこも高いわね。東京のお部屋って」 母親がため息交じりに
もっと読む傀儡の舞 1-3
(21) 夕方ホームルームが終わると、鈴菜はすぐに教室を出ようとする。 「鈴菜ぁ、今日もリハビリか?」 まだ部活が始まるまで、少し時間があった。早夜子は自分の席に座ったまま、クラスメイトと雑談していた。そのまま首を伸
もっと読む傀儡の舞 1-2
(11) 鈴菜はそっと自分の体を抱きしめた。伝わってくる感触に、何の違和感もない。 そろそろ消燈の時間だった。白いチェック柄のパジャマ姿のまま、自室のベッドに腰掛けていた。どうしても、休む気になれなかった。 朝にな
もっと読む傀儡の舞 1-1
プロローグ 座席の前の液晶パネルが、飛行機の現在位置を知らせてくる。まだアラスカ辺りだ。日本に到着するまで、まだまだ時間がありそうだ。こんな時は眠るに限るのだが、どうしても眠れない。四年ぶりの帰国に、どうも俺の神経は昂
もっと読む成田離婚 後編
後編 (10) 若菜の股間からは、崎野の精液がポタポタと漏れていた。若菜は半失神していた。その顔は、天国を散歩しているかのように幸せそうだ。若菜の子宮はあまりに気持ち良かった。名器と言っていい。精も根も搾り取られて、崎
もっと読む成田離婚 中編
中編 (5) 「妻の、若菜さんの様子はどうでしょうか?」 やれやれ、まだ自分の嫁にさん付けか。 崎野は、浩太郎からの国際電話に苦笑した。 浩太郎は今ハワイにいた。一人、新婚旅行のアリバイ作りをする手はずになっていた
もっと読む成田離婚 前編
前編 プロローグ 珍しく晴天に恵まれた六月の朝、一台の高級外車が、高速道路を疾走していた。 エンジン音は快調そのもの。車内は揺れもしない。 「すごいなぁ。キャディラックなんて初めて乗ったよ」 革張りの豪勢な後部座席
もっと読むダークブレス (3) お兄ちゃん・・・
(3) お兄ちゃん・・・ 染みだらけの天井が、赤い炎に揺らめいて見えた。ズキンと鈍い痛みが後頭部を襲う。次第に意識がはっきりしてくる。確か、殴られて意識を失ったはずだ。 俺は床に転がされていた。体を起こそうとして、縛
もっと読むダークブレス (2) まごころ
(2) まごころ 扉を開けると、ピアノの調べが溢れ出た。 部屋の中央にはグランドピアノが置かれている。ピアノを弾いていたのは結菜だった。細く長い指が、巧みなタッチで鍵盤を叩いていく。 虹華が部屋に入ってきた。演奏の
もっと読むダークブレス (1) 漆黒の少女
(1) 漆黒の少女 『まったくガラじゃないんだよな・・・』 俺は欠伸をかみ殺しながら、心の中でブツブツと恨み節を呟いていた。 俺の名前は宮本正樹。大学生だ。 久しぶりにバイトも休みだった。大学もようやく冬休みに入っ
もっと読む恵の先生
「お久しぶりです。春野先輩」 その女の子は喫茶店に入ってくると、目当ての人物を見つけるなり駆け寄ってそう言った。 「恵(めぐみ)さんも元気そうね」 「それだけが取り柄ですから」 恵と呼ばれたその女性は、可愛らしく舌を
もっと読むトラップ
「天地気功道場・・・?」 A4サイズのチラシの一番上に、大きな文字でそう書いてあった。 『人生が変わる!』 『病は気から。がんも治る!!』 その下には怪しげな宣伝文句が続いている。 風間紫春(かざま むつき)は、チ
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