その日のダニエルは、最近では珍しく、ミヤグニ・サンの家に来ていた。初めて彼の家を訪れてからもう半年以上経つ。それは7か月という実際の期間以上に昔のことのように思われた。なにしろこの半年間、彼にとって楽しいことが多すぎた
もっと読む永慶の作品
テレパスキッド 4
『イの壱』の技法は、対象となる相手へ、コードのような『氣の道』を繋いで、いつでも相手の行動や思考、感情や記憶まで干渉出来るようにする。それは『氣』で人に影響を与える技術の中の基本であり、究極とも言えるような、大事な技法だ
もっと読むテレパスキッド 3
「思ったよりも早く来たのう。私のことなど忘れて、2、3カ月は遊び呆けるとばかり、思っておった」 ミヤグニさんは、約1カ月ぶりに自分の家を訪れたダニエルを見て、微笑むような、あるいは単に顔の皺を伸ばすような、見ていて
もっと読むテレパスキッド 2
想像した通り、その日の授業時間はずっと、ダニエルにとって、「期待に胸を膨らませる天国」と、「最高のご馳走を焦らされる地獄」との往復のような時間になっていた。ステファニーと同じクラスで受ける授業の間、彼女はチラチラとダニ
もっと読むテレパスキッド 1
「向こうに見える丘に、とっても気持ちの良い公園があるらしいわよ。海も見えるんだって。ベッツィーが言っていたの。今度、皆でランチボックスを持って行きましょう」 助手席に座るママ、ルシールの声は明るい。 「それは良
もっと読むDRAW 後編
第三部 ズィ・アナザー・ワールド ダイスッ、ルームッ! アァーーンド、アナザーワールドッ!! 丁屋蝶人が受け取ったサイコロは彼の運命を大きく変えた。脱童貞っ。初の複数プレイッ。街角でナンパをして、道行くオン
もっと読むDRAW 前編
序章 奇妙な冒険のはじまり その男、丁屋蝶人(25歳)が、夜の街を徘徊していたのは、季節としては春とはいえ、まだ風の冷たい、花冷えする夜のことだった。丁屋蝶人はその珍しい名前と、人並外れて濃い顔立ち以外は、取り立て
もっと読むスパイラルトラベラーズ 3
その日の結沙たちは、いつものように崇泉院学園高校の文化サークル棟に足を運ぶと、部室のお掃除を始める。結沙たちが通う聖クララ女学院の授業が終わってから、バスに乗ってここまで来ているのだが、さすが崇泉院は偏差値の高さと歴史
もっと読むスパイラルトラベラーズ 2
学園祭の季節から3ヵ月もたった頃、結沙たち4人は、すっかり新しい生活のリズムにも、慣れつつあった。部活動といえば、『スパイラルサークル』のサポート活動。吉沢結沙にとっては、部員の男子たちに玩具のように弄ばれる、嫌な時間
もっと読むスパイラルトラベラーズ 1
「………結沙ちゃん、…………結沙ちゃんってば、聞いてる?」 親友である城崎野乃の声で、吉沢結沙は急に現実に引き戻される。今、彼女は崇泉院学園から家への帰り道。仲良しの野乃、梨々香、咲良との4人でバス停へと歩いている
もっと読むスパイラルサークル 第5話
本当は学校に来て、朝一番に親友たちと話をしたかった。けれど結沙が教室に着いたのが始業ギリギリというタイミングだったので、1時限目が終わってからの休み時間まで、4人での状況確認はお預けになってしまった。遅刻しなかっただけ
もっと読むスパイラルサークル 第4話
ガチャン、ガチャン、ギギー、ガチャン。 結沙の頭の中には、自分が手を振るたび、足を上げるたびに、錆びかけた金属のたてる音が鳴り響いている。結沙と他の3体のブリキの兵隊は今、意気揚々と文化サークル棟へ向かう小湊弘太
もっと読むスパイラルサークル 第3話
「ではせっかくですから咲良ちゃんに負けないように、皆、順番にラウンドガールになってもらいましょう。咲良ちゃんとは幼馴染みらしいです、城崎野乃ちゃん、ご起立くださーい」 右手を拝むように顔の前に出して、ひらひらと振り
もっと読むスパイラルサークル 第2話
「あ、アー、アー。皆さん、聞こえますね。………それではこれから、崇泉祭毎年恒例の、僕らスパイラル・サークルによる催眠術ショーを開催します。諸注意とか例年と同じなんですけど…………1年生の子たちとか、撮影厳禁でお願いします
もっと読むスパイラルサークル 第1話
「ホントに行くんだね? 近くまで来て、やっぱりやめようとか、無しだからね?」 吉沢結沙がしつこく念を押すと、クラスメイトで親友の城崎野乃は、少しだけ顔を俯かせて、唇を噛んだ。決心を捻りだそうとしている時の、彼女の癖
もっと読むはじまりの頃 第3話
<<第3話>> 和泉亨 27歳 会社員 「優芽ちゃーん、ほら、お歌うたってるよ。アーイアイ、アーイアイ」 妻の智世が、歯磨きのあとでまだグズッている娘の優芽に、録画してある歌番組を見せてご機嫌を取る。智世は夕飯の後に
もっと読むはじまりの頃 第2話
<<第2話>> 高辻智世 15歳 中学3年生 「どうかな? …………智世さん、だいぶ暑くなってきてるんじゃない?」 トオル君に言われた智世は首をブンブンを左右に振る。その瞬間、少しだけ涼しい空気が体に当たったような気
もっと読むはじまりの頃 第1話
<<プロローグ>> 和泉智世 27歳 主婦 智世が夢うつつの浅い睡眠状態から覚めたのは、リビングでのゴソッという物音を聞いた時だった。本能的に腕で娘の体を探す。長女の優芽(ゆめ)の柔らかい体は、智世のすぐそばにあった
もっと読むフィンガーパペッツ 後編
購入した商品:フィンガーパペッツシリーズ スタンダード版『現代のお仕事』 評価者:五つ星主婦 レビューカテゴリー:短文 評価:☆☆☆☆☆ このレビューが役に立ったと思う人: 58人 こちらのレビューサイトのユ
もっと読むフィンガーパペッツ 前編
購入した商品:フィンガーパペッツシリーズ 中世のお仕事 評価者:TRPG好き レビューカテゴリー:超長文 評価:☆☆☆☆ このレビューが役に立ったと思う人: 78人 吉祥寺にあるボードゲーム屋でこの商品を偶然
もっと読む僕らの発信基地 最終話
「先生からの連絡事項は以上です。………何か皆さんから、このホームルームの時間を使って、共有したいことはありますか?」 棚倉先生が問いかけると、おずおずと手を挙げる女子が何人かいる。学級委員の松倉侑李と、図書委員の青砥聖
もっと読む僕らの発信基地 5話
2年3組の学級委員、松倉侑李には最近、気になることがいくつかあった。学校にいる時は変だとも思わないのだが、放課後、塾に行くと気がつくことがある。他校の生徒と同じ塾のクラスにいると、自分たちの学校の授業の進度が少しずつ遅
もっと読む僕らの発信基地 4話
『双シン壱号』であれこれ遊ぶようになって、シュントはこれまでに知らなかったことを、沢山、発見したり、理解するようになっている。例えば女の子のことだ。シュントは小学校の低学年の頃はクラスの女子とも割と普通に仲良く出来ていた
もっと読む僕らの発信基地 3話
水曜日の午後、サヤカの家に、親友のカナエとヒトミが遊びに来た。家の玄関、他のクラスメイトや友だちがいないところでヒトミと顔を合わせた時に、サヤカの脳裏に恥ずかしくもスリリングな、週末の思い出が蘇ってきた。2人して、急に
もっと読む僕らの発信基地 2話
次の日の日曜日、シュントはツトムの家に、画板と紐で作った、首掛けタイプの自作「操縦機台」を持っていった。昔の映画やアニメに出て来る、駅のホームで駅弁を売っている人が運んでいる首掛けの駅弁箱(「ばんじゅう」と言うらしい)
もっと読む僕らの発信基地 1話
眞知田シュントが悪ガキ仲間の葛城ツトムの家で、亡くなったジーチャンの家から持ち出してきた機械を見せると、ツトムとミツルはガッカリした表情を隠そうともしなかった。アンティークなのかガラクタなのか、良くわからない骨董品のよ
もっと読むオカルトオアカルト 7話
<オカルト> 東屋蓮 高校生 その朝も、蓮は彼女の国枝清香ちゃんと一緒に登校した。例の部室に足を運ぼうと、旧サークル棟へと向かっているところで、ヒョロッとした体型の男子生徒に出会う。蓬田誠吾先輩だった。この時間帯に蓬田
もっと読むオカルトオアカルト 6話
<オカルト> 東屋蓮 高校生 「………そんな訳で、まだほとんど見学しかしてないような状況なのに、自分で新しいオマジナイかその使い方を考えて、先輩たちの前で披露しろって言われてるんだよ。………最初は冗談かと思ったけど、マジ
もっと読むオカルトオアカルト 5話
<オカルト? > 東屋蓮 高校1年生 朝、目が覚めて、自分の部屋と違う天井や壁の模様を、不思議な思いで眺める。そして、頭が少しずつハッキリしてくるなかで、自分が、自分の部屋で寝ていなかったことに気がついて、ビクッと飛び
もっと読むオカルトオアカルト 4話
<オカルト? > 服部麻帆 高校2年生 放課後、席の近い男女のクラスメイトでお喋りをしていると、教室に入ってくる2人の男子の影があった。一人は麻帆の良く知っている、ヒョロっと背の高い先輩。3年生の蓬田誠吾先輩だ。麻帆は
もっと読むオカルトオアカルト 3話
<カルト? > 園原文乃 大学3年生 まるで波打ち際で穏やかな波を見ている間に、ジワジワと自分の足元の砂がさらわれていくような感覚。気がつくと、園原文乃の意識は、自分が立っている場所の15センチくらい上へ、僅かに浮き上
もっと読むオカルトオアカルト 2話
<オカルト? > 東屋蓮 高校1年生 東屋蓮が国枝清香と付き合い始めた日。2人は下校の途中で電信柱の陰に隠れて、初めてキスをした。すでに2人で初体験を済ませてしまったあとだったので、少しだけ儀礼的なプロセスになってしま
もっと読むオカルトオアカルト 1話
<オカルト? > 東屋蓮 高校1年生 東屋蓮が、何かに呼ばれたような気がして振り返ったのは、その日の授業が全て終わって、宿題替わりに渡されたプリントをまとめ、下校の準備を終えた時のことだった。何かが彼を呼んでいる。とに
もっと読むプリマ 最終話
『若園芳乃香の、ふれあい人生ニューページ』は、3ヶ月後にリニューアルをした。若園芳乃香さんは一旦、卒業というかたちになったので、個人名が外れて、『ふれあい人生ニューページ』と番組タイトルが短くなったのだ。今は4人の新しい
もっと読むプリマ 第6話
<<フリーアナウンサーになった若園芳乃香の意外な再浮上がネットで話題沸騰>> かつて全国ネット局のホープで、夜のニュース番組のキャスターも務めた美人女子アナが、フリーになって地方ケーブル&ネット配信番組でキワドイお宝シ
もっと読むプリマ 第5話
撮影の翌日、仮編集版をロケ班スタッフ皆で確認した。キューさんのセンスは皆良く理解しているので、通常この作業はほとんど形だけの追認作業になる。けれど今回は揉めた。珍しく、一番立場が下であるADのマサキが異議を唱えたからだ
もっと読むプリマ 第4話
コン………コンコン。 マサキが若園芳乃香さんの控え部屋のドアをノックする。緊張して待っていると、1週間ぶりの芳乃香さんの顔は、少し曇っていた。AD新藤マサキの不安が増す。微妙な愛想笑いを浮かべている自分に気がついた。
もっと読むプリマ 第3話
部屋の湿度とシャンプーの匂いで、芳乃香さんがまだシャワーから出てきたばかりだということがわかる。ドアを開けたまま立ち尽くす若園アナは白いバスローブ身にまとって、まだ湿っている髪を両肩の先へ広げていた。化粧台にはヘアドラ
もっと読むプリマ 第2話
ロケバスでの移動中、マサキは限られた時間を使って、Youtubeの催眠術ショー動画を漁るように見ていた。少しでも多くの、愉快な画を撮るためのヒントが欲しかった。結局のところ、撮影が始まってしまえば、芳乃香さんの反応を見
もっと読むプリマ 第1話
その日の収録も、当初スケジュールと比べて40分近く遅れていた。ADの新藤正樹は、頭の中でこの後の予定を思い描きながら設営を手伝う。今日のロケは泊りなので、機材やバスなどの返却時間は気にしなくて良い。この後のインタビュー
もっと読むおるすばん その4
3年生のいる階に上がる。ここはアキミチさんと同学年。一緒に過ごしてきた時間が長いから、催眠暗示への反応も、グッと高くなる。かなりの無茶が効く先輩たちだ。授業中の教室に無神経に上がりこんでも、「あ、僕、透明人間です」と一
もっと読むおるすばん その3
「昨日から、アキミチさんいないんだよな………。好きにすればいいって、言われたけど………。そう言われると、かえって何にも思い浮かばなかったりして………」 笹川ケイトは、学校へ向かうバスを降りたところでも、まだ今日のスケジ
もっと読むおるすばん その2
次の日、クルミは昨日よりも迷いなく、ケイトと放課後に美術準備室で待ち合わせることに応じてくれた。 「昨日ね、家で英語の勉強してみたの。いつもの2倍とか3倍とかスラスラ読めた気がして、学校の復習どころか、次の次の単元まで
もっと読む明るい奴隷生活のすすめ 後編
後編 はい皆さん、全員とても大人しく、時間前にお席に戻ることが出来ましたね。 今年の奴隷訓練生たちはとても優秀だと思います。意外と早く到達することになるかもしれないのが、これから説明する、後期洗脳工程です。 ここま
もっと読む明るい奴隷生活のすすめ 中編
中編 さて皆さん、お待ちかね、中期洗脳工程のご説明です。 おや? ………お待ちかねでは、ないですか? もうお腹いっぱいという表情の方もおられますね。 でも、皆さんもご自身で期工程を修了すると、きっと晴れやかな気持
もっと読むおるすばん その1
「じゃ、そういうことで。………色々あるかもしれないけど、基本、ケイトの思うように対処してよ。緊急でなければ、さっきのノートに書いて置いてもらえれば後で読むし。よっぽどヤバそうだったら、メールちょうだい」 アキミチさんは
もっと読む明るい奴隷生活のすすめ 前編
皆さん、初めまして。志岐明穂と申します。 まだ頭がボンヤリしている方、考えがまとまらない方、体が重くて動けないという方、沢山いらっしゃると思います。そのまま、楽な姿勢でお聞きください。そして気分が悪くなった方は、お手
もっと読む共振 第6話
第6話 この人たち、ニューエイジ・スピリチュアルコミュニケーションなんて大げさな言い方をして、毎週会合のように集まって、現代の科学で解明しきれていない謎の力を習得して、ただヤラシイことしているだけじゃないか。 芽衣は
もっと読む共振 第5話
第5話 月曜日の青蘭学園高校、3年D組の教室には甘い雰囲気が漂う。クラス1のイケメン、白川陸都の隣に、こちらも指折りの美少女、吉住芽衣が体を預けるように寄りかかって座っている。芽衣の表情はリラックスそのものといった様子
もっと読む共振 第4話
第4話 「え………全ライド、ファーストパス使いたい状態………」 いつも温和な雰囲気の大雅マスターの表情が曇った。 「はい………。私も、他の人たちを待たせて、私たちだけ優先的に何回もっていうのは、良くないんじゃないかって
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