7. 星漣女学園第2学生寮「さざなみ寮」は、第1学生寮である正星館(しょうせいかん)に比べれば普通の建築物である。通りがかった人にどこかの国の大使館に間違われることも無いし、地元民に市役所よりも敷地が広く立派だからって
もっと読むカテゴリ:BLACK DESIRE
「……ど、かな?」
「……ん?」
「思い出せた?」
その質問で、僕はようやくこの行為の意味を思い出した。口の中で笑いを噛み殺す。
そう仕向けたのは僕だとはいえ……本当に、信じ込んでいるのか。
BLACK DESIRE #24-4
6. 2つのグラウンドで行われていた最終戦2試合が終了し、ソフトボールの順位が決定すると僕たち運営委員会関係者はにわかに慌ただしくなった。この後授業時間を延長し、順位発表と表彰、MVP選手の選出を行わなければならないか
もっと読むBLACK DESIRE #24-3
4. 翌日、今日も今日とて昼休みを潰してソフトボール第2戦の準備をしていると、スマホがメールの着信を知らせてきた。誰だ、学校中にメールなんかしてくる奴は、と自分の事を棚に上げて確認すると。 『来い 屋上』 「ごめ
もっと読むBLACK DESIRE #24-2
2. 星漣学園体育祭の第2部、球技の部は3日間かけて行われる。学年合同縦割組4組の選抜メンバーによる球技は毎年種目が変わり、今年はソフトボール。総当たり戦だから時間もかかり月から木までの4日間の午後5・6・7時間目が予
もっと読むBLACK DESIRE #24-1
0. 週が明け、新しい月曜日の朝が来た。僕は朝早く薄暗い頃から星漣学園に登校すると、正門から入ってすぐの桜の木の幹に寄りかかって生徒達の登校の様子を眺めていた。木陰に居るとは言え、目立つ星漣の白い制服姿にみんな即座に僕
もっと読むBLACK DESIRE #23-3
6. 「水上騎馬戦キャットファイト!」の得点計算は予定通りに大盛り上がりだった。バルーンが抜けずに四苦八苦する選手と役員と応援する観客達、そして抜けた後の大拡張して開きっぱなしの卑猥過ぎるお尻の穴。モニター越しだけの映
もっと読むBLACK DESIRE #23-2
3. 僕が宮子を伴って検査道具の入ったバッグ片手に男子更衣室に向かうと、そこにはもう須藤茜が不機嫌そうな顔で待っていた。水泳帽と水中眼鏡は外し、耳が隠れるくらいの茶色いショートカットから水がぽたぽた垂れている。眉はしか
もっと読むBLACK DESIRE #23-1
0. 体育祭開催日の朝は、見事な秋晴れとなった。高く澄み渡った空と特徴的なうろこ雲の下、早朝から選抜メンバーを集めて会場設営を実施する。 「このぶんなら、予定通り外で開会式出来そうですね」 「うん。体育館でやるとプール
もっと読むBLACK DESIRE #22-3
7. 成り行きで宮子を抱く事を承知したけど、改めて裸で浴槽の中に立って微笑んでいる少女を前に、僕はすっかり腰が引けていた。だって、その表情は少し赤らんではいるけどいつも僕に向けられていた親しみのある笑い顔で、その裸身は
もっと読むBLACK DESIRE #22-2
4. 翌日、僕はいろいろ思うところが有ってなかなか寝付けなかったにも関わらず、幎に起こされるより前に目が覚めた。窓のカーテン越しの屋外から全く光が射しておらず、まだ暗闇と思われたのでもう1眠りしようかと寝返りを打ったが
もっと読むBLACK DESIRE #22-1
0. ごろんごろん、ごろんごろごろ、ごろろんごろん。 頭の中を、ボウリングの球ぐらいの黒い鉄球が転がっている。僕の脳内は酷く整備不良で、山奥の国道ぐらいに凸凹の石くれだらけで鉄球はドカンボコンと跳ね回って頭蓋をめちゃ
もっと読むBLACK DESIRE #21-3
5. 教室を出た後、僕らはいったん受付に寄ってリヤカーを借りた。10キロくらいあるウォータージャグをえっちらおっちら運ぶのは骨が折れるし、先に行ったユニフォームの箱もある。有る物は有効活用しないと。校舎の裏口に回してき
もっと読むBLACK DESIRE #21-2
3. 翌10月1日の水曜日は、僕の心中はさておき見事な秋晴れであった。水曜の1時間目はミサの時間だから、全校生徒は午前8時の10分前には礼拝堂に集まって到着順に前から詰めて座っていく。 僕は礼拝堂に時間ぎりぎりに入っ
もっと読むBLACK DESIRE #21-1
0. 「草……薙……」 飛び出してきた名前に、僕は絶句した。それは半ば忘れかけていた、そして忘れてはならない、僕が星漣学園に転校する切っ掛けを作った人物の名前だったからだ。 約4ヶ月前、僕は親父の失踪を知って数年ぶり
もっと読むBLACK DESIRE #20-2
2. 放課後、三繰と校舎裏の渡り廊下で落ち合った僕は、連れだって東の星漣学園文化系エリアに向かった。冬月から哉潟家の能力で情報を聞き出すにしても、できるだけ人目に付かない場所が良い。昼休みの時点で七魅とともに現れた三繰
もっと読むBLACK DESIRE #20-1
0. 火曜日朝6時50分のウィルヘルム時計塔、その館部分の1階会議室に僕を含め十余名の星漣学園生徒達が集まっていた。いずれもこの学園における役職持ちの権力者達。彼女らがこんな早朝から集まって行おうとしているのは、学園の
もっと読むBLACK DESIRE #19-3
5. 結局のところ、立華が来てくれてほぼ2日と半分で体育祭関連の書類作成は完了してしまった。これは驚異的な速度である。実際に側で立ち会った春原も早坂も、立華の処理能力に驚いていた。 立華はただ単にタイピングが速いだけ
もっと読むBLACK DESIRE #19-2
3. 週が開け、いよいよ9月の最終週がやってきた。10月はすぐそこ、そして体育祭の開催期間まではあと2週間しかない。 藍子のよこしてくれた立華は僕の想像以上に優秀で、ほとんどの文書業務を1人でこなしてくれた。既に実施
もっと読むBLACK DESIRE #19-1
0. 3年椿組9月最後の体育は、生徒達の希望もあって体育祭での水泳競技に備えての水泳となった。それなりに泳げる人間は少しでもクラスの得点に貢献できるように得意種目を練習し、あまり得意でない者もお遊び系種目で頑張れるよう
もっと読むBLACK DESIRE #18-2
2. 春原との契約に成功した僕は、早速彼女の契約者としての性能を確認した。黒い本の彼女のページに記載された内容は、「統制権:13 恒常発動:有効」とある。それを見てニヤリと笑う。よし、思った通り。 春原が僕に対してど
もっと読むBLACK DESIRE #18-1
0. 数日前からニュースで騒がれていた台風もあっさりと日本海に抜け、首都圏は今日も平和であくせくとした朝を迎えた。予想進路をコーナーいっぱいに使って高速で列島を横断し、いつの間にか熱帯低気圧に変わっていたその台風の末路
もっと読むBLACK DESIRE #17-10
10. ……夢を見ていた。 それが夢だと気が付いたのは、夢の中の僕は僕では無い、誰か別の人物だったからだ。 夢の中の主人公である僕は今よりちょっとだけ歳を重ねた青年で、黒髪であることは同じだけどその両目は見たことも
もっと読むBLACK DESIRE #17-9
9. いったいどれだけの時間と労力が費やされたのだろう。 幎の、七魅の、それぞれの意志が、そして偶然のもたらした様々なヒントが、今のこの状況を作り出した。 エアリアとの距離はほんの4mくらい。魔女は僕のことを完全に
もっと読むBLACK DESIRE #17-7
7. 日没が迫っていた。オレンジ色に染まりつつある湖に、南方の河川沿いに赤い光を引いて黒い影が突入してくる。 「見えたぞ! あれがウィルヘルム魔法学園だ!」 「……あそこです!」 黒猫の言葉に、幎もそこに建つ細長い構
もっと読むBLACK DESIRE #17-8
8. 塔の内側はだだっ広い吹き抜けの空間だった。学園の時刻を知らせる大鐘とその作動機構が埋め込まれたフロアを抜けると、後はひたすら最上階まで塔の内壁に沿った階段が上へ上へと延びている。窓は無く外の様子は見えないが、途中
もっと読むBLACK DESIRE #17-6
6. ランファ=ランカ少尉はアイドルである。 それは21小隊のアイドルと言う意味ではない。彼女はアイドルとしてのパーソナリティを与えられたホムンクルスなのだ。 戦争が長引くに従って、年々ホムンクルス兵の役割は多様化
もっと読むBLACK DESIRE #17-5
5. 峡谷の一番奥まった場所に、奇妙な光景が広がっていた。高い崖に囲まれた河川を上りきり、急激に開けた直径5kmほどの湖。その周囲は恐ろしく切り立っており、所々から300mは落差がある糸のような滝がその湖になだれ落ちて
もっと読むBLACK DESIRE #17-4
4. 王国領東方第11区域……俗に極東と呼ばれる東は海、陸は急峻な山脈に覆われている地区である。この区域の中央よりやや北にずれた位置、南部の広い高原を川沿いに僅かに下った場所にある数キロ四方のエリアに、陸軍第21機甲化
もっと読むBLACK DESIRE #17-3
3. 金属で出来た通路を2つの影が進んでいく。しかし、その2つは特に慎重に音を出さぬように抜き足差し足をしている訳でもないのに、歩く音が響かない。それはその1つが進化の過程で肉食獣が獲得した気配を消す身体的特徴を持って
もっと読むBLACK DESIRE #17-2
2. 会議室はゆっくりと左右に揺らいでいた。 もちろん、それは比喩ではない。特殊な強化魔法や防護魔法、後は防諜魔法を付与された壁に囲まれたこの会議室自体が、それを内包する巨大建造物ごと揺られているのだ。何に、と問われ
もっと読むBLACK DESIRE #17-1
0. 人類は最初から敗北していたのだ。 戦いが始まり10年を過ぎた頃から、人々は終わり無き大戦に対して悟った。この戦いは、勝利するためのものではなく……ただ、絶滅を免れる為の時間稼ぎでしかなかったのだ。 かつて地上
もっと読むBLACK DESIRE #16-2
5. 七魅にとって翌日の登校は憂鬱なものとなった。郁太は昨日の出来事を何処まで覚えていて、そしてどれくらい記憶を補完したのだろう? いっその事全部忘れていてくれればやり直しも効くのに、とため息をつく。 「……言っておく
もっと読むBLACK DESIRE #16-2
3. 達巳郁太に黒い本を拾わせる。 それをいかに自然に少年に行わせるか、七魅はその演出に頭を捻った。以前、少年からはあの黒い本を手に入れた経緯を、「偶然」拾ったのだと説明されている。ならば、出来るだけそれに沿って実行
もっと読むBLACK DESIRE #16-3
7. その日の放課後、達巳郁太が下校の為に人気の無くなった通路を歩いていると、突然頭からばさっと何か袋のような物が被せられた。 「!??!?!?」 そして次の瞬間、どこか顎の辺りからぷしゅっと空気の抜ける音がして、唐
もっと読むBLACK DESIRE #16-1
0. 星漣女学園の生徒達に聞きました。 (Q.1) 現在、特定の男性とお付き合いしてしていますか? 〔A.1〕 はい……3.7% / いいえ……95.0% / その他……1.3% (Q.2) 現在、意中の男性はいますか
もっと読むBLACK DESIRE #15-3
6. 翌日の昼休み、校舎の西側の桜通りから少し外れた場所にあるベンチに、1人の少女と1匹の黒猫の姿があった。 「上出来じゃないか」 ベンチに座った少女の膝の上で丸くなった黒猫は、背中を撫でられながら上機嫌で言った。喉
もっと読むBLACK DESIRE #15-2
3. 星漣学園の敷地内には多数の花壇が設置してあるが、それらの管理は各クラスの生徒達に任されている。星漣学園の制度では生き物係のようなクラス役職が無いため、たいていの場合は各クラスの委員長か風紀委員が何名かのクラスメイ
もっと読むBLACK DESIRE #15-1
0. 「――ねえ、知ってる?」 「あの噂?」 「そう……放課後の幽霊」 「聞いた聞いた! もう何人も見てるんだってね」 「それ、私も聞いたよ。白い男の子で、夕方に1人でいると出るんでしょ?」 「ううん、3人でいた時に見た
もっと読むBLACK DESIRE #14-2
3. 星漣怪奇倶楽部はまだ歴史の浅い同好会である。その発足は今年度の4月で、1年生3人が自己紹介の時に意気投合し、勝手にクラブを名乗り始めたのが最初であった。構成メンバーはその時から変わっておらず、1年柊組の竹内笹菜(
もっと読むBLACK DESIRE #14-1
0. 自分では夏休みの影は引きずっていないつもりだったが、一ヶ月以上もある休暇の影響は体内時計に微妙なズレをちゃんと残していたようだ。一ノ宮榧子(いちのみやかやこ)は2学期3日目にしてさっそく寝坊し、いつも使っている電
もっと読むBLACK DESIRE #13
0. とても意外な事かもしれないが、悪魔メイドの幎(とばり)も人と同じように夜はベッドで瞼を閉じ、眠る。 しかし、それは必要に駆られてでは無く、彼女の主人の要望によってである。 以前彼女の主人である達巳郁太(たつみ
もっと読むBLACK DESIRE #12-2
7. 4日目の朝、僕は珍しく誰にも起こされること無く目を覚ました。というか、ワクワクとした期待に胸を一杯にしてベッドから飛び起きた。 すぐさま窓を開け、朝の空気を肺の中に思いっ切り吸い込む。そして手早く衣類を身に付け
もっと読むBLACK DESIRE #12-1
0. ブラックデザイアを開くと、表紙の裏と最初のページには「HOW TO USE(使い方)」が書かれている。 この2ページは本に魔力が蓄積される毎に自動的に更新されていく様で、僕が初めてこの本を拾った時には左側の上3
もっと読むBLACK DESIRE #11-2
5. 朝顔を連れて別荘に戻ると(ちゃんと水着は着せてやった)、もう夕食の準備は出来ていた。急いで部屋に戻ってシャワーを浴びて汗を流し、新しいシャツとズボンで階下に降りてテーブルに着く。 今日の夕食は、昨日のが何だった
もっと読むBLACK DESIRE #11-1
0. 「……い……せんぱい……」 遠くから、僕を呼ぶ少女の声。 少し自信の無さそうな、ちょっと遠慮がちな小さな声。 「先輩……朝ですよ……ご飯です、先輩……」 うーん、ご飯か……。今日は何だろう、味噌汁はわかめの入
もっと読むBLACK DESIRE #10
0. 強い潮風が前方から吹き付けている。 僅かに塩気の混じった空気は、僕の耳の側をビュウビュウと音を立ててすり抜けていく。 日差しは強く、気温は30度を超えている。だが、海の上にも関わらず空気はからっとしていて、風
もっと読むBLACK DESIRE #9
0. 新聞部の朝は早い。 朝一の号外を生徒達が登校するまでに刷り上げなくてはならないのだ。だから、ネタのある日はたいてい正門が開く時刻と同時に、そして時にはこっそりとそれ以前に裏ルートで不法入門する事になる。自称「星
もっと読むBLACK DESIRE #8-4
8. 全てのコトが終わった後、虚脱状態の僕を七魅が送ってくれることになった。三繰は「ふーん」と見た目は特に不満もなく、迎えに来たもう一台の車に乗り込んだ。僕と七魅は来たとき乗ったロールスロイスに対角線に距離をとって座り
もっと読むBLACK DESIRE #8-3
5. さざなみ寮は東西に広いほぼ長方形の敷地に大きく分けて3つの建造物から成り立っている。 門から入り、直ぐ正面にそびえる2階建ての旅館に見える建物が本館であり、玄関の引き戸の横には達筆で「さざなみ」と書かれた木製の
もっと読むBLACK DESIRE #8-2
2. そうこうする内、あっと言う間に日は過ぎた。僕とハル達は選挙に向けて毎日をそれこそ1秒も無駄にしないように駆けずり周り、気が付けばもう今週は終わろうとしていた。 放課後、その週の最後のお茶会を終えた僕はハル達に後
もっと読む