第六話 朝日 誰かが部屋をノックする音で、俺は眠りから覚醒させられた。 「う……」 顔を顰めなから上半身を起こす。カーテンが朝日を遮っており、室内全体は薄暗い。乱暴に頭をがしがしと掻いて、しばらくそのままの姿勢でぼー
もっと読む「精神操作」
Tommorow is another -人物紹介-
人物紹介 山崎 拓真(やまざき たくま) 主人公。桜ノ宮校生。 173センチ 短髪。運動神経良し。人相やや悪し。成績中の中。 髪型には頓着せず、床屋に行って2ヶ月もすればボサボサになっている。 趣味はスポーツ
もっと読むTomorrow is another 第五話 観点
第五話 観点 「ん……」 目蓋を開き、その行為によって、自分が眠っていたことを知る。 見覚えのある風景に、自分のいる場所が、保健室のベッドの上だということをすぐに察した。 白いカーテンの眩しさに目を細めながらも、ど
もっと読むTomorrow is another 第四話 編入
第四話 編入 タッ、タッ、タッ、タッ、タッ、タッ、タッ、タッ―― 「ふっふっ、はっはっ、ふっふっ、はっはっ――」 早朝の街路に響くのは、雀の鳴き声と、新聞配達中であろうのカブの排気音と、俺の足音と呼吸音。 あと、た
もっと読むTomorrow is another 第三話 入館
第三話 入館 意識が浮上していく感覚。 まだ目覚ましも鳴る前の時間。瞼も閉じているにも関わらず、意識がはっきりと覚醒していくのが手に取るようにわかった。 昨日は色々あって、結局布団に入ったのは日付変更してからだ。そ
もっと読む十億分の一 ~ Puppet ~
~ Puppet ~ 「あっ……くぅん……」 日曜日、誰もいないはずの教室からくぐもった声が聞こえる。 ぼくは、廊下からその声を聞いている。 今回もプログラムは完璧のようだ。 (そろそろ、かな?) がらっ。 ぼ
もっと読むTomorrow is another 第二話 傷跡
第二話 傷跡 ――チャラ ポケットから、金属プレートのキーホルダー付きの鍵を取り出し、家の鍵を開けた。 ドアを開き、玄関に入ると同時にドアが閉まる。 「……ん?」 背後に誰もいないことを不思議に思いドアを開けると
もっと読むTomorrow is another 第一話 風景
第一話 風景 「くあ……」 大きな欠伸を一つ。 どうにも、俺は朝の電車に弱い。人のざわめきと、一定のリズムで揺れる車内と、ガタンゴトンと耳朶を打つ響きが、熟睡へと誘っているとしか考えられない。 「くすくす……」 隣
もっと読む十億分の一 ~ Queen Bee ~
~ Queen Bee ~ ……うっとおしい。 うっとおしいだけで何の役にも立たない弟。だが、ようやくお前の存在する理由ができた。 お前の役目はさながら働き蜂のように俺のために獲物を運び、何かがあれば戦い、スケープ
もっと読む催淫師 妖染 崩山(4)
妖染 ─ 崩山(4) ─ 柏山大附属高校の運動場では、体育の授業でラクロスが行われていた。赤と白のどちらのチームの選手も全員下着姿であった。そして二チームが対戦している間、他の生徒達は腰を下ろして見学していた。 「ゴー
もっと読む催淫師 妖染 崩山(3)
妖染 ─ 崩山(3) ─ 三人は時間が止まった教室を出た。授業が始まっている為、当然廊下には誰もいない。 「どこへ行くの?」 真弓が尋ねても啓人は答えず、どんどん先へ歩いていく。やがて立ち止まると、二人の方を向いた。
もっと読む悪代官
この部屋には壁が無い。 いや!壁が無いという表現は間違いにあたるかもしれない。 有るには有るのだが壁という壁全部が書物で覆い尽くされているのだ。 それはどれもこれも最初の数ページで頭が痛くなってきそうな書物ばかり
もっと読む十億分の一 ~ Hunter ~
~ Hunter ~ (プログラミングが面倒くさいなぁ……この場合はこう分岐して、と……) ぼくはプログラミングを一時中断してパソコンに繋がれたビンに入っている透明な液体を見つめた。 これはただの水ではない。人の脳に
もっと読む催淫師 妖染 崩山(2)
妖染 ─ 崩山(2) ─ 「もう良いぞ」 啓人は不意に、腰を引いた。 「あ・・・」 一心不乱に舐めていた真梨江は、不満げな顔をした。それを見た啓人は、例の笑みを浮かべた。 「そんなに気に入ったのか?」 からかう言葉
もっと読む催淫師 妖染 崩山(1)
妖染 ─ 崩山(1) ─ 「えー・・・最後に言いたい事がある」 担任の男性教師はここで言葉を切り、教室全体を見回した。今はSHRが行われているのである。勿体ぶって咳払いを一つすると、担任は口を開いた。 「最近、物騒にな
もっと読むムジョウノカゼ
「ね、姉さん・・・」 我ながら、声に力がない。 細くなった手を、目の前の姉さんへと伸ばした。 「ハルミラ!しっかりしなさい!」 ギュッと手が握り締められた。 「私は・・・大丈夫だから・・・」 大好きな姉さんを、心
もっと読む催淫師 暗躍編(6)
暗躍編(6) 「此処ね」 廉霞はとある町にある、空き家の前に立っていた。何やらおかしな連中が住み着いて、近隣の者に被害が出ている、警察の手にもおえないから何とかして欲しいという要請を受けての事である。 (確かに妖気を感
もっと読む催淫師 暗躍編(5)
暗躍編(5) ピシャッという音が、始まりの合図だった。 「あっ・・・うんっ・・・」 清華は男を玄関で受け入れ、仰け反った。 「んくっ・・・はっ・・・」 啓人は浅く、ゆっくりと動き出す。清華はその啓人に、しがみついた
もっと読む催淫師 暗躍編(4)
暗躍編(4) 二人が入ったのは、六畳の和室であった。そこには机が一つあるだけで、片付いているというよりは他に何もなかった。 「ここは・・・?」 尋ねる啓人の声にも、不思議そうな響きが含まれている。ゴミどころか、塵一つ
もっと読む優等生からの転落 明日香篇
明日香篇 私は放課後の教室でひとり勉強をしていた。もうすぐテストがある。別にテストは難しくないけど、私の視線は目の前のテストよりも1年後の大学受験にあった。今のうちからどんな難解な内容も解けるようになっていた方が後で楽
もっと読む満員電車で会いましょう 満員電車で会いましょう ~松田カナ~
~松田カナ~ プゥウオ~~~~・・・・ガタン、ガタン・・・ガタン、ガタン・・・・・ 早朝の満員電車。 (ふう・・・朝の電車は人でいっぱい・・・私はいつもホームに早く並んで座れてるからいいけど、立ってる人って大変ねぇ・
もっと読む優等生からの転落 和也篇
和也篇 俺は和也、高*2年生、大して面白い高*生活は送っていない。もてるわけじゃないから彼女もいない。一応は地域で一番の進学校に通っているものの、まぐれで入ったようなものだし、成績にしても留年するかしないかのところをさ
もっと読む聖域の中の日常
ちゅんちゅん……。 カーテンから漏れる朝日で私 ― 岡部美緒 ― は目を覚ました。 美緒とお兄ちゃんは裸で抱き合ったまま眠るの。兄妹だから当然でしょ? いつもの日課、ねぼすけのお兄ちゃんを起こさなくっちゃ。 布
もっと読む催淫師 暗躍編(3)
暗躍編(3) 今は昼休み。転校生はヒーローという図式が見事に当てはまっている啓人は、他の生徒の勧誘や質問責めから逃れ、屋上にいた。 「ふう・・・やれやれだ」 さしもの啓人も、あの圧倒的なパワーにはてこずった。力をまだ
もっと読む満員電車で会いましょう 満員電車で会いましょう ~山田リィナ~
~山田リィナ~ 山田リィナは今日もいつものように満員電車に乗っての登校。 『う~・・・相変わらずやだな~~このギュウギュウ電車・・・・』 さわさわ 「あっ!!」 『え~ん(T_T)今日もまた誰か私のお尻触ってるよ~~
もっと読む催淫師 暗躍編(2)
暗躍編(2) 白笠は二人の仲間と共に歩いていた。 「ち・・・何でこんなに催淫蟲がうるさいんだ?」 「連中が言ってる事、正しいんじゃないのか?」 仲間の一人がたしなめるように言う。 「別に俺は反対してるわけじゃないぜ。
もっと読む催淫師 暗躍編(1)
暗躍編(1) 日曜日、全員揃うと同時に啓人が宣言した。 「今日皆で出掛けるぞ。但し!魅矢は留守番!」 「え?何処へ?」 「山登り♪」 ハテナマークを飛ばす理乃だったが、 「さっさと用意しろ」 と急かされ、慌てて着替
もっと読む催淫師 始動編(2)
始動編(2) 冴草啓人は雨桶市内のとある高級マンションの部屋にいた。部屋の住人である美女はベットの上で荒い息をしていた。己の欲望をあと一歩で満たせるという段階に至っても啓人は少しも悠然とした態度を崩さない。目の前にとび
もっと読む催淫師外伝 その1 前編
その1(前編) 土曜日の午後六時半。人通りもまばらになってきても男はそこから動こうとしなかった。 身長は百八十センチ前後で何故かベレー帽とサングラスを身につけた、体格の立派な人物である。サングラスの奥からは陰険な目付
もっと読む催淫師 始動編(1)
始動編(1) 割と格好良い一人の少年が市役所の建物を見上げていた。彼は昨日この雨桶市にやってきたばかりなのである。だからと言って、別に住民登録をしに来たという訳ではない。 「思ってたよりも・・・大きいな」 その少年、
もっと読む催淫師 序章(改)
四月も終わる金曜日の夜、雨桶市外にある霧に包まれた古い洋館の前に、一台のトラックが止まり、三人の人間が降りて来た。 「あんた達、本当にあそこに・・・あの‘悪霊の館’に住むのかい?」 まず口を開いたのは、三十代後半と思
もっと読むマリオネット 後編
後編 「うえっ………ぐすっ………」 俺の部屋に響き渡る幼い泣き声。 「あか……茜……ちゃん………」 俺のベッドに横たわり、もはや動かなくなった茜の身体にすがり付いて泣く、葵の声。 「いやだぁ………いやだぁ…っ」 そ
もっと読むマリオネット 前編
前編 ごうごう ごうごうと――― 吹き荒れる、その風自身すら凍らせるような北風が、山の斜面を滑り降りる。 ざわざわ ざわざわと――― その場にそびえる杉の木々が、その風から身を守るように、お互いの幹を寄せ合い
もっと読む幽体離脱
「・・・」 今の状態をどう表現すればいいのか・・・いわゆる今、俺、氏堂 幽一は・・・ ・・・幽霊になっている ・・・完 「じゃねぇぇっ」 がばっと体を起こし・・そのままくらっともう一度地面へ、固いアスファルトのベッド
もっと読む幻市 付章(その③)
付章(その③) 4.倉田(その②) 倉田が離婚したのは3年前だった。離婚にさしたる理由はない。妻の晴代とは実業団の現役サッカー選手時代に結婚したのだが、倉田の体重が増えるのに比例して感情がすれ違いを始め、結局、3年前に
もっと読む幻市 付章(その②)
付章(その②) 木曜日の11:00。ホテル・アルフォンヌのスイートでランチオンインタビュー。・・・OK。 倉田は受話器を置いた。今日は火曜日。明日一日準備に使える。倉田は早速メモを出して水曜日一日を使ってできる事を検
もっと読む幻市 第九章、付章(その①)
第九章 この数日間の練習で僕は「波動砲」をかなり上手に扱えるようになっていた。強い波動砲、鋭い波動砲、長距離波動砲・・・と使い分けられる。 「ごめんなさい。イヤな事、訊いちゃった?」 「エッ?・・・いや、構わんですよ」
もっと読む幻市 第八章
第八章 よしっ、そのままこっちに来て・・・。 そこでクルッとターン。そうだ、綺麗だよ、美紀。いいよ、微笑んで・・・うん、素敵だ。純白のウェディングドレス。君に城のドレスがこんなに似合うなんて知らなかった。 床に座っ
もっと読むマリオネット 第9話
第9話 「あ~…だり~」 カリカリという、ノートにペンを走らせる音が教室に響く。 期末テストも近づくこの時期、誰もがいつ、教師の口からテストのポイントが告げられるかもわからないと、聞き漏らしの無いようにと必死に授業に
もっと読むマリオネット 第8話
第8話 マンションの見慣れたドアノブに、鍵を差込みひねる。 カチャリ、と言う音が響き、鍵が外れた。 俺は鍵をポケットにしまうと、抱きかかえていた葵を持ち直しドアノブをひねる。 葵は、すでにその身体に合わなくなって
もっと読むマリオネット 第7話
第7話 砕かれた葵の青いベールが、まるでダイヤモンドダストのように宙を舞う。 それは、光りを撒き散らす、青い輝きの透き通ったスクリーンとなった。 俺の目の前に広がる、幻想的な青い光のスクリーン、それは儚さをまとい、
もっと読むマリオネット 第6話
第6話 痛みを感じる。 本当は存在するのに空虚のような。 空虚なのに確実に存在するような。 そんな痛み。 へし折られた指からの痛みでも、生爪を剥がされた指先からくる痛みでもない。 この全身で感じているそれは―
もっと読むマリオネット 第5話
第5話 茜の全身から、冷や汗が流れているのがわかる。 ソファーに縛り付けられた滑らかな裸体が、細かく震えている。 今の今まで、官能の渦に溺れかかり、赤く火照っていたその身体は、まるでその事を忘れてしまったように青ざ
もっと読むマリオネット 第4話
第4話 額から電気が走ったような、そんな感覚が俺を襲う。 それは、身体の末端神経まで到達し、ほんの一瞬、全身を硬直させる。 俺は身体をよろけさせ、後ろの窓のサッシにもたれかかった。 そうか、糸を打ち込まれた瞬間っ
もっと読むマリオネット 第3話
第3話 朝日が、細いカーテンの隙間から差込んでくる。 闇を払拭する、爽快な太陽光を浴びると、それまでのすべての事がリセットされ、昨日までとはちがう、また新たな事が起こりそうな、そんな気がする。 鳥の声が聞こえる。
もっと読むマリオネット 第2話
第2話 冬の空――― 頭上に宿る星々が、すべての季節の中で一番華やかに天空を彩る時。 冬の澄み切った空気が、その輝きを躍らせている。 月――――― 冬の透明な風の中、青白く輝くそれは、天に留まる巨大な氷のように
もっと読むマリオネット 第1話
第1話 月明かりに照らされる立ち昇る白煙。 漂うオイルの匂い。 木に留まる猛禽類が、興味深そうにその事態を眺める。 男のうなり声がした。 男はアスファルトに貼りついた顔を懸命に持ち上げる。 運転席から身体半分
もっと読む幻市 第七章
第七章 さあ、ここまで《シンイチ》と《てん》の話をしてきたんだけど、美紀ちゃん、理解できた? これから話すのは《シンイチ》と《てん》が融合した日の事。僕の感覚で言うと《てん》としての自我はそのまま残っていたから《てん
もっと読む幻市 第六章
第六章 雨の日曜日。金沢はこれからのシーズン、太陽を見ることはぐっと少なくなる。11月から3月にかけて重苦しい曇りの日が続く。 いつもであれば少々の雨ならレインウェアを着て走り込みをする《シンイチ》だが、期末試験も近
もっと読む幻市 第五章
第五章 《シンイチ》が性欲を身につけるのと反比例して《てん》の活動は納まりつつあった。 《てん》は《シンイチ》の性欲の目覚めと自慰によって慰められ、靄(もや)の中から《シンイチ》を眺める生活に戻った。 このころの僕
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