BLACK DESIRE #17-5

5.  峡谷の一番奥まった場所に、奇妙な光景が広がっていた。高い崖に囲まれた河川を上りきり、急激に開けた直径5kmほどの湖。その周囲は恐ろしく切り立っており、所々から300mは落差がある糸のような滝がその湖になだれ落ちて

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BLACK DESIRE #17-4

4.  王国領東方第11区域……俗に極東と呼ばれる東は海、陸は急峻な山脈に覆われている地区である。この区域の中央よりやや北にずれた位置、南部の広い高原を川沿いに僅かに下った場所にある数キロ四方のエリアに、陸軍第21機甲化

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BLACK DESIRE #17-3

3.  金属で出来た通路を2つの影が進んでいく。しかし、その2つは特に慎重に音を出さぬように抜き足差し足をしている訳でもないのに、歩く音が響かない。それはその1つが進化の過程で肉食獣が獲得した気配を消す身体的特徴を持って

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BLACK DESIRE #17-2

2.  会議室はゆっくりと左右に揺らいでいた。  もちろん、それは比喩ではない。特殊な強化魔法や防護魔法、後は防諜魔法を付与された壁に囲まれたこの会議室自体が、それを内包する巨大建造物ごと揺られているのだ。何に、と問われ

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BLACK DESIRE #17-1

0.  人類は最初から敗北していたのだ。  戦いが始まり10年を過ぎた頃から、人々は終わり無き大戦に対して悟った。この戦いは、勝利するためのものではなく……ただ、絶滅を免れる為の時間稼ぎでしかなかったのだ。  かつて地上

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本当はえむしーだったシンデレラ 黒幕は王子様ver.

~黒幕は王子様ver.~  むかし、あるところにシンデレラという女の子がおりました。  シンデレラは小さい頃にお母さんを亡くしていたので、お父さんの再婚相手と、その連れ子の義理のお姉さんふたりと一緒に暮らしていました。

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本当はえむしーだったシンデレラ ツンデレラver.

~ツンデレラver.~  むかし、あるところにシンデレラという女の子がおりました。  シンデレラは小さい頃にお母さんを亡くしていたので、お父さんの再婚相手と、その連れ子の義理のお姉さんふたりと一緒に暮らしていました。  

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BLACK DESIRE #16-2

5.  七魅にとって翌日の登校は憂鬱なものとなった。郁太は昨日の出来事を何処まで覚えていて、そしてどれくらい記憶を補完したのだろう? いっその事全部忘れていてくれればやり直しも効くのに、とため息をつく。 「……言っておく

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BLACK DESIRE #16-3

7.  その日の放課後、達巳郁太が下校の為に人気の無くなった通路を歩いていると、突然頭からばさっと何か袋のような物が被せられた。 「!??!?!?」  そして次の瞬間、どこか顎の辺りからぷしゅっと空気の抜ける音がして、唐

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BLACK DESIRE #16-2

3.  達巳郁太に黒い本を拾わせる。  それをいかに自然に少年に行わせるか、七魅はその演出に頭を捻った。以前、少年からはあの黒い本を手に入れた経緯を、「偶然」拾ったのだと説明されている。ならば、出来るだけそれに沿って実行

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BLACK DESIRE #16-1

0.  星漣女学園の生徒達に聞きました。 (Q.1) 現在、特定の男性とお付き合いしてしていますか? 〔A.1〕 はい……3.7% / いいえ……95.0% / その他……1.3% (Q.2) 現在、意中の男性はいますか

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BLACK DESIRE #15-3

6.  翌日の昼休み、校舎の西側の桜通りから少し外れた場所にあるベンチに、1人の少女と1匹の黒猫の姿があった。 「上出来じゃないか」  ベンチに座った少女の膝の上で丸くなった黒猫は、背中を撫でられながら上機嫌で言った。喉

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BLACK DESIRE #15-2

3.  星漣学園の敷地内には多数の花壇が設置してあるが、それらの管理は各クラスの生徒達に任されている。星漣学園の制度では生き物係のようなクラス役職が無いため、たいていの場合は各クラスの委員長か風紀委員が何名かのクラスメイ

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BLACK DESIRE #15-1

0. 「――ねえ、知ってる?」 「あの噂?」 「そう……放課後の幽霊」 「聞いた聞いた! もう何人も見てるんだってね」 「それ、私も聞いたよ。白い男の子で、夕方に1人でいると出るんでしょ?」 「ううん、3人でいた時に見た

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BLACK DESIRE #14-2

3.  星漣怪奇倶楽部はまだ歴史の浅い同好会である。その発足は今年度の4月で、1年生3人が自己紹介の時に意気投合し、勝手にクラブを名乗り始めたのが最初であった。構成メンバーはその時から変わっておらず、1年柊組の竹内笹菜(

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BLACK DESIRE #14-1

0.  自分では夏休みの影は引きずっていないつもりだったが、一ヶ月以上もある休暇の影響は体内時計に微妙なズレをちゃんと残していたようだ。一ノ宮榧子(いちのみやかやこ)は2学期3日目にしてさっそく寝坊し、いつも使っている電

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BLACK DESIRE #13

0.  とても意外な事かもしれないが、悪魔メイドの幎(とばり)も人と同じように夜はベッドで瞼を閉じ、眠る。  しかし、それは必要に駆られてでは無く、彼女の主人の要望によってである。  以前彼女の主人である達巳郁太(たつみ

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BLACK DESIRE #12-2

7.  4日目の朝、僕は珍しく誰にも起こされること無く目を覚ました。というか、ワクワクとした期待に胸を一杯にしてベッドから飛び起きた。  すぐさま窓を開け、朝の空気を肺の中に思いっ切り吸い込む。そして手早く衣類を身に付け

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BLACK DESIRE #12-1

0.  ブラックデザイアを開くと、表紙の裏と最初のページには「HOW TO USE(使い方)」が書かれている。  この2ページは本に魔力が蓄積される毎に自動的に更新されていく様で、僕が初めてこの本を拾った時には左側の上3

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BLACK DESIRE #11-2

5.  朝顔を連れて別荘に戻ると(ちゃんと水着は着せてやった)、もう夕食の準備は出来ていた。急いで部屋に戻ってシャワーを浴びて汗を流し、新しいシャツとズボンで階下に降りてテーブルに着く。  今日の夕食は、昨日のが何だった

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BLACK DESIRE #11-1

0. 「……い……せんぱい……」  遠くから、僕を呼ぶ少女の声。  少し自信の無さそうな、ちょっと遠慮がちな小さな声。 「先輩……朝ですよ……ご飯です、先輩……」  うーん、ご飯か……。今日は何だろう、味噌汁はわかめの入

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BLACK DESIRE #10

0.  強い潮風が前方から吹き付けている。  僅かに塩気の混じった空気は、僕の耳の側をビュウビュウと音を立ててすり抜けていく。  日差しは強く、気温は30度を超えている。だが、海の上にも関わらず空気はからっとしていて、風

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BLACK DESIRE #9

0.  新聞部の朝は早い。  朝一の号外を生徒達が登校するまでに刷り上げなくてはならないのだ。だから、ネタのある日はたいてい正門が開く時刻と同時に、そして時にはこっそりとそれ以前に裏ルートで不法入門する事になる。自称「星

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BLACK DESIRE #8-4

8.  全てのコトが終わった後、虚脱状態の僕を七魅が送ってくれることになった。三繰は「ふーん」と見た目は特に不満もなく、迎えに来たもう一台の車に乗り込んだ。僕と七魅は来たとき乗ったロールスロイスに対角線に距離をとって座り

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BLACK DESIRE #8-3

5.  さざなみ寮は東西に広いほぼ長方形の敷地に大きく分けて3つの建造物から成り立っている。  門から入り、直ぐ正面にそびえる2階建ての旅館に見える建物が本館であり、玄関の引き戸の横には達筆で「さざなみ」と書かれた木製の

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BLACK DESIRE #8-2

2.  そうこうする内、あっと言う間に日は過ぎた。僕とハル達は選挙に向けて毎日をそれこそ1秒も無駄にしないように駆けずり周り、気が付けばもう今週は終わろうとしていた。  放課後、その週の最後のお茶会を終えた僕はハル達に後

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BLACK DESIRE #8-1

0.  その日の夕食後、僕は家の居間でぼぉっとしていた。靴を脱いでソファに寝そべり、足を肘掛けに乗せている。あまり行儀が良いとは言えない。  厨房はこの部屋から遠い。通路を挟み、食堂の奥の扉の向こうだ。だから、この屋敷の

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