key 終章

終章  佐乃は心を読まずとも更に成長したのが分かり、華南は見た目が少し変わっていたが、その微笑みは俺の知るものだった。  夜鷹は―――半分、生き返った。  閂 梓鶴との戦いで相打ちとなって果てたものの、しろがねの許可を得

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key 第三章の3

第三章の3  雁屋の肥満体からくり出される一撃一撃はどれも緩慢だったが、重さの乗った実にいい一撃と評するしかなかった。 「はっはァッ! 佐乃たんはどれだけ剣道をやってきたの?  たった1日、いや、0日のボクに負けそうだよ

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key 第三章の2

第三章の2 「心が…聞こえない―――?」  愕然とした。  今まで聞こえていた他人の思考が全く入ってこない。それは同時に俺に不信をもたらす。  そう、絶対的な不信―――指輪を失い、ダンタリオンとの契約が解けた状態でダンタ

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key 第三章の1

第三章の1  ―――夢を見た。  俺が玉座に座り、うつろな目で見下ろしていた。  71柱の魔王を始めとして、籠絡した相手や下してきた敗北者達、ほとんどの顔が鮮明に映る中、ただ一組、最も近くなのに最もぼやけている横にいる人

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key 第二章の17

第二章の17  昼前、誰にも気づかせずマンションを出て約束の場所に行こうと歩くこと5分。後ろに気配を感じた。 「…しろがね、付いてくるな」  勝敗なんざ後から分かることだろう。 「言ったでしょ。ボクを待っている相手が、く

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key 第二章の16

第二章の16 ※以降、大変申し訳無いのですが諸事情によりHシーンを割愛した状態で掲載して頂いております。  完成し次第、修正稿を掲載させて頂く予定です。 「せっか、指輪を渡してくれ」 「―――え?」 「さっき、夜鷹から呼

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key 第二章の15

第二章の15  学園祭の翌々日―――つまりは夏休み2日目、午前中に学園祭の後片付けをした俺たちは昼過ぎに街中―――九頭ビル前に集まっていた。  学園祭の期間中は指環使いとしてのイベントは特に何もなかった。  あえて言うな

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key 第二章の14

第二章の14 「ふああぁぁ…ん?」  珍しく自分で目が覚める。と、なんか肩口が重い。  というか、巨乳だった。 「………おぉ」  そういやそうだった。  俺は一人で納得すると体を起こし、カーテンを開ける。  北東から見る

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石のチカラ おとずれ

おとずれ  ペンダントを渡された翌日、はるかはいつもの通勤電車で会社に向かっている。 真っ白に洗ってアイロンをかけられたシャツの胸元には、当たり前のようにペンダントが揺れている。 昔からつけていたかのように。  電車の中

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key 第二章の13

第二章の13 「そろそろ出発の時間ですよ」  いつものカーテンの開ける音と共にそんな声で眼が覚めた。 「ふあぁ…朝メシは?」  上半身を起こしながら呟く。それほど寝てないが疲れはとれている。 「こちらに」  そう言うとエ

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key 第二章の12

第二章の12  くいなの指輪で探知した所、部屋に満たされたこの鉄の厚さは7メートルもある。 「くいな―――」 「えぇと…この部屋で間違いないはずなんですけど…」  自信なさ気にくいなが呟く。  …おそらく、くいなは間違っ

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key 第二章の11

第二章の11 「御主人さま、朝ですよ」 「あ、あぁ…」  聞き馴れない声が俺の横でした。  …誰だ?  こらんとした頭がようやく回転しだすと状況を把握した。  先にシャワーでも浴びたのだろう。ふわりと独特の整髪料の匂いが

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BB 第2話

 少し前、まだ物語の語り部が存在しない頃の話。  その時にはまだ見る事ができず、私の中では、音が世界の全てを構成していた。  徐々に、徐々に。  視界を得るためには、贄が必要だ―――。 「――――――まあ簡単なものですし

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key 第二章の10

第二章の10  目を覚ますと全員が固唾を飲む中、俺は自分のベッドの上に横になっていた。  その傍らには唯一、他者に対する回復手段を手にしたばかりの妹が額に汗を浮かべて祈るように腕を組んでいた。  全員が俺の部屋にいる。そ

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key 第二章の9

第二章の9  あれからマンションに帰るのは徒歩にした。  初夏は日が昇るのが早い。結局、家に帰れたのは夜が明けてからだった。  マンションの入り口には竹箒を持った華南と千鳥がいた。 「…おまえ、その格好でそこにいたのか?

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BB 第1話

第1話  不純物が入ったかのように身体が重い。  昨日は飲みすぎた……いや、それ以前からの体調不良だ。  朝から憂鬱な気分になりながらも、なんとか体を起こしベッドから這い出す。  いつまでたっても目が像を結ばないのでよう

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key 第二章の8

第二章の8 「あらあら、これは掃除のやりがいがありそうですねぇ…と、みなさーん、朝ですよー」  穏やかな透き通った声がかけられる。  この声は……華南か。 「さぁさぁ、早く起きないとご主人様に嫌われちゃいますよ~」  す

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BB 第0.5話

第0.5話 「―――もしもし。吉野だ」 「手紙は届いたぞ。……というより届いたからこそこの番号にかけたんだが」 「実験などと称して、結局君が楽しいだけだろうに」 「まあ、こっちも丁度いい女がいて……おいおい、そんなの持ち

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key 第二章の7

第二章の7 「もしもし、僕です、2―B、出席番号6番のカラス―――烏十字です。  学園祭の件で担任の海鵜先生に…はい、そうです…  …  ……  ………あぁ、千歳か?俺だ。白鷺はもう学校にきてるか?そうだ。[漆黒の王の命

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key 番外編2

番外編2 (注・この話はKey2章の6、7のネタバレが含まれます。読み進める上では6>番外編2(コレ)>7の順番で読まれるとよろしいかと思われます)  その日、ボクはカミサマに逢った。  不幸なボクをカミサマは選んでくれ

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key 第二章の6

第二章の6  あれから2日が経った。なんのことは無い。佐乃との戦いでの負傷が原因だ。  あの後、やはりというか自業自得というべきか丸一日、意識不明の重体に陥り、遼燕寺家かかりつけの闇医に世話になっていた。  その後、意識

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key 第二章の5

第二章の5 「―――マルコシアス公、卿に伝授してもらった剣技を使い、いざ推して参る」  そう言って指輪をはめた遼燕寺が俺に向けたのは背に負っていた一降りの木刀。  場の緊張感が一気に臨海に達する。 「…[黒の王の命令]、

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key 第二章の4

第二章の4 「お兄ちゃんっ、はやくはやくっ!」 「あら、ご主人様にせっかちゃん、おはようございます」  そこには竹ホウキをもってエントランスを掃いている新たな住人、華南がいた。  服装も昨日のチャイナドレスとはうって変わ

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key 第二章の3

第二章の3 ―――久しぶりにあの夢を見た。  誰かと寝た夜には見ていなかったのでもう見れないものかと思っていたが幸い一人で眠った時には見れるようだ、まだ見れた。  あんな戦いが始まった以上、夢にも変化がないの確認してみた

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key 第二章の2

第二章の2 「………」  初めて自分以外の指環使いと相対したというのに焦りはなかった。  そこにはあったのは自分と同じ、狂気の世界に足を突っ込んだ相手に対する昂揚感。  さっきまで浸かっていたぬるま湯が瞬時に沸騰し、湯気

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key 第二章の1

第二章の1  あれから数日が経った。 「―――ん、あぁ……」  下半身に違和感を覚えて眼がさめた。  天井は俺が長年見てきたツキ板の張られた木目の天井ではなく―――そろそろ見慣れてもいいハズの、白。  あれから俺は見知ら

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AA 第四話

 朝から不良に絡まれるなんてのは、運勢が最悪な象徴だ。  その度に、もう朝の占いなんて信じないと固く誓う。  普通の人にとっては。    不良達が静止している、奇妙な情景。  中心の少年は服についた砂をパンパンとはらって

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AA 第三話

「瑛一・・・昨日はサボりか?」 「いや・・・違うけど・・・お前痩せた?てかクラス全員ぐったりしてるような・・・」 「お前がサボったせいでな・・・鬼頭さんの授業が・・・10kmってレベルじゃ・・・ねー・・・」  清清しい朝

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AA 第二話

「御機嫌ですね」 「そうかい?」  明かりの一切無い暗い部屋。ビルの最上階窓からは、眠ることの無い大都市の夜景が見える。  窓際にあるデスクには、闇に溶け込みそうな格好の男が一人。 「一年ほど、そのような顔は見てませんで

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AA 第一話

 昔、交通事故があった。  雨の日の夕暮れ時。山道でのありがちなスリップ事故。  家族4人が崖下に転落し、両親と兄が死亡、弟が重傷を負う悲惨なものだった。  生き残った少年は頭を強く打ち、意識不明。  その後、数週間に渡

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発情 後編

後編  翌朝、いつも通り定時一分前に登校した俺。廊下から教室の様子を眺める。  鈴は…、何やら眠そうで、目が心持ち充血している感じだった。  教室に入ると、鈴は一瞬こちらを見るなり、ハッとしたように目をそらした。  席に

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発情 前編

前編 「ふあーっ」  大きくあくびをする。窓の方を見れば、五月の太陽も沈んでもう真っ暗。  …どうやら教室で机に突っ伏したまま、ずっと寝ていたらしい。 「…はぁ、やっと起きたのね」  見れば二つ前の席で、この教室にただ一

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