10 旅支度と言ってもたいしたものではない。着替えと日用品をバッグに入れればお終いだった。 雄大に別れの挨拶をして隼人は家を出た。でも、どうしたらいいのかわからなかった。空腹に気づき駅前にあるマクドナルドに入った。ビ
もっと読む「ファンタジー」
サイの血族 2
7 「休学?」 「はい。父の手紙も持って来ました」 職員室の一角。長谷川恭子の机の前で隼人は手紙を差し出した。 「いつから?」 「今日からです。家庭の事情があって」 「ずいぶん急なのね。事情って・・・」 長谷川恭子は
もっと読むサイの血族 1
0 姉である葉月の焦点を結んでいない眼を見ながら隼人は脇の下に汗が流れるのを感じていた。 「うん、初めてにしては力は強そうだな」 隼人に手をかざしながら、父親の斎部雄大が満足そうに言う。 「ほ・・・ほんとに・・・」
もっと読む黄金の日々 第1部 第3話 後編
第1部 第3話 後編 猫は、本来この世の生き物ではない。こことは違う、どこか別世界から来た生き物である。 そういう考えが生まれたのはいつ頃であったのか、もはや判然としない。 この物語の時代よりもずっと後に書かれた聖
もっと読む黄金の日々 第1部 第3話 前編
第1部 第3話 前編 「都に、ですか?」 唐突に、都に行くと言い出したシトリーに、アンナは訝しげな表情を浮かべる。 「そうだ。ついでに、この村の人間には囮として本物の邪教徒になってもらう。お前にも手伝ってもらうぞ、アン
もっと読む黄金の日々 第1部 第2話
第1部 第2話 「そんな、何でエルがここに?」 一階の入り口近くに立つ、栗色の髪の女騎士の姿を見下ろしながら、半ば呟くようにアンナが言う。 「あの女を知っているのか、アンナ?」 「はい。エル、エルフリーデは、私の幼なじ
もっと読む黄金の日々 第1部 第1話
第1部 第1話 主が、アンナのもとに来た日の夜。 え?これは? アンナは、またあの夢の中にいる自分に気付く。 目の前には、いつもの、穏やかな光を湛えた金色の瞳。 私のもとに来て下さったというのに、夢の中にも現れ
もっと読む黄金の日々 第1部 プロローグ
第1部 プロローグ ここは、大陸でも最古の歴史を誇るヘルウェティア王国。その国境付近、山岳地帯の中腹にある閑静な農村キエーザ。200軒近くの家が集まる集落の周囲には放牧地が広がり、おそらく、季節さえ良ければ淡い緑に覆わ
もっと読むダンジョンマスターの日記帳 8ページ
8ページ 「お、お願いします!わ、私はどうなってもかまいません。ですが、む、息子だけには……ひい!」 邪悪な魔導師に対し、縛られながらも息子の助命を願い出る母親。しかし魔導師――エロルはまったく慈悲を見せず、彼女の眼を
もっと読むダンジョンマスターの日記帳 7ページ
7ページ 俺は少しは名の知れた剣士だ。 いくつもの国から士官の誘いを受けている。 しかし腹黒い貴族どもの相手が嫌なことと、もう少し自分の腕を磨いてみたいんで、丁重にお断りを続けている。 俺がここまで強くなったのは
もっと読む金の双星 プロローグ
プロローグ 物語、伝説、昔話。人々の語る話はたくさんある。その中の1つにこんなものがあった。 「森に囲まれた土地にある、古城に住む美しい姫君と傷だらけの魔法使いの話」 一見して正反対の姿をした2人が優しく幸せに満ちた
もっと読むへたれ悪魔と七英雄 へたれ悪魔、大森林に突撃する
「……凶兆についてはあれからどう? マグダレーネ」 一通りの近況報告、各セクションの進捗状況などの確認が済んだあと、紅茶を飲みながらさりげなくイリーナが尋ねる。 しかし、マグダレーネはゆっくり首を振る。ついでにずり落
もっと読むへたれ悪魔と七英雄 へたれ悪魔、執務室で痛い目に遭う
俺が教会を制圧するのに三日掛かった。……いや、この言い方は違うな。 俺が教会を自分の望み通りの環境にするのに、三日掛かったと言うべきか。 あれから昼は教会の洗脳の強化、夜はソフィーヤを抱きまくる、とやる事が一杯あっ
もっと読むへたれ悪魔と七英雄 へたれ悪魔、大聖堂で対決する
……俺の前には現在世界最強であろう女の一人がいる。 しかもその女が烈火の如く怒っている。 この威圧感、絶望感は味わった者にしか分からないと思う。 目の前に居るまだ20そこそこの綺麗な女がドラゴンより強いと言われて
もっと読むへたれ悪魔と七英雄 へたれ悪魔、隠れ家で仲魔に出会う
白く輝く不落の城、ケテル城。世界を救った英雄達の居城。謁見の大広間は豪奢な細工を施された大理石の円柱が立ち並び、中央には金縁の刺繍も美しい、幅広の赤いカーペットが敷かれている。部屋を直線状に縦断するカーペットはゆるやか
もっと読むへたれ悪魔と七英雄 へたれ悪魔、水車小屋で決意する
ポンポンと情けない音を上げて花火が次々に打ち上げられる。昼の最中に見る花火はマヌケ以外の何ものでもない。 抜けるような青空の下、わずかな煙を吐き出しすぐに消えていく人間の文明の利器とやらを眺めながら、俺は忌々しげに溜
もっと読む魔王と聖女と三王女 最終話
第十五話 漆黒の石材で造られた魔王城の玉座の間。闇が満ちるその空間に、二つの人影が対峙していた。禍々しさを持つ闇の玉座にもたれかかる屈強な魔人と、それに向かい合うように立つ魔術師のローブに身を包んだ人族の青年。人族の青
もっと読む魔王と聖女と三王女 第十四話
十四話 魔王城の中庭には、下草すら生えていない。ただ、奇怪に身を捻る魔界の植物が、片隅に茂っているだけだ。そこに人界から帰還した三王女と、魔界へ連れられた聖女がいる。我は、四人の様子を中庭の入り口から眺めていた。 魔
もっと読む魔王と聖女と三王女 第十三話
第十三話 (魔王様……魔王様……) 玉座に力なく寄りかかる我は、精神に直接呼びかける声で意識を取り戻した。どうやら、フィオの声らしい。玉座の周囲には、蛇の下半身を持った娘と、蜘蛛の脚の娘、タコの触手をはやした娘が一人ず
もっと読む魔王と聖女と三王女 第十二話
第十二話 「エレノア王女殿下……いま、なんと申されましたか?」 白いひげを蓄えた、老魔術師が円卓の向かいから尋ねる。 「良く聞こえなかったの? 聖都アルターレに侵攻しましょう、と言っているのよ」 エレノアがさも当然と
もっと読む魔王と聖女と三王女 第十一話
第十一話 サヴェリア王室での戦いから、人界の時間で丸一日ほど経っただろうか。我は、幾度もリーゼの精神とつながろうと試みた。しかし、リーゼは意識を失っているのか、その視覚は闇に閉ざされていた。ただ、その耳からは、かすかに
もっと読む魔王と聖女と三王女 第十話
第十話 冷たい風が、リーゼの頬をなでる。頭上の空は透き通るほどに青く、それでいて浮かぶ雲は驚くほど近い。リーゼは、数名の従者を引き連れ、山間の細い道を騎馬にまたがり進んでいた。従者たちは防寒着に身を包み、リーゼ自身も厚
もっと読む魔王と聖女と三王女 第九話
第九話 フィオの感覚を求め、つなぎ合わせる。ソル=シエル国の女王の姿に変じたフィオは、エレノアに言われたとおりに、女王の身代わりを務めていた。豪華絢爛な衣装に身を包み、華々しい装飾のほどこされた女王の自室で、ただ気だる
もっと読む魔王と聖女と三王女 第八話
第八話 我は、なん時とも変わらぬように、魔王城の玉座の間に腰をかけている。周囲には、かつて母親がそうしたのを真似するように、三王女の仔供たちが控えている。口を開くものがいない静寂の大広間で、我は静かに目を閉じ、三人の下
もっと読む魔王と聖女と三王女 第七話
第七話 三王女が我の仔を産み落とし、魔物の母として生まれ変わってから、人界にして半年ほどの時間が流れた。あれから三王女は幾度かの出産を繰り返して、今日に至る。産まれてきたものは、すべて娘。さらに、魔物の仔の生育は早い。
もっと読む魔王と聖女と三王女 第六話
第六話 三王女が我の手中に堕ちてから、我は入れ替わりで三人を犯した。フィオはすぐに、その胎に魔物の仔を宿し、エレノアとリーゼも負けじと身重の体を押して、我の精を求めた。フィオの腹は日に日に膨れ、数日でエレノアとリーゼに
もっと読む魔王と聖女と三王女 第五話
第五話 エレノアとリーゼに種付けをしてから、さらに数日が経った。我は、居室で二人の身体を楽しんだ後、玉座の間に向かって闇に満ちた回廊を歩いている。いつものようにエレノアは我が腕に抱きつき、リーゼは一歩引いたところから付
もっと読む魔王と聖女と三王女 第四話
第四話 いつものように、我は玉座に腰掛け、何を考えるでもなく虚空を見つめていた。三王女のうちの二人、エレノアとリーゼを堕としたあとも、最後の一人はいまだ黒い蕾に閉じ込めたままにしてある。最後の一人は、聖女ティアナ……人
もっと読む魔王と聖女と三王女 第三話
第三話 魔王城の一角に、我の居室がある。寝台と戸棚と机があるだけの、小さな部屋だ。すべてが黒い石材で作られ、寝台の敷布までもが闇の色であることを除けば、ごく普通の人間が使う部屋と大差もないだろう。我は、寝台から身を起こ
もっと読む魔王と聖女と三王女 第二話
第二話 我は、目を覚ました。玉座に座ったまま、眠っていたようだ。人界の時間で三日ほどだろうか。だが、昼夜の区別のない魔界、ましてや千年の時を生きてきた我にとって、そのような時間は何の意味もなさないものだ。我は、玉座から
もっと読む魔王と聖女と三王女 第一話
第一話 我は、魔王だ。人界と対になる魔界の主にして、人間どもの永遠の仇敵である魔族の王だ。我は、磨き抜かれた黒大理石の玉座に座り、闇に包まれた魔界の王の間の虚空を見つめている。この広大な部屋に、我以外の人影はいない。い
もっと読むダンジョンマスターの日記帳 6ページ
6ページ 「またかい」 レッドソニアは迷宮の壁に書き込まれた模様を見つけた。 これで何度目だろう。 最近エロルは迷宮のあちらこちらに六芒星の魔方陣を書き込んでばかりいる。 「一体何のまじないかねえ」 (でもまあ、き
もっと読むダンジョンマスターの日記帳 5ページ
5ページ 「ここは?」 意識を取り戻したとき、プリスは自分が囚われの身であることを悟った。 鉱山のあとであろうか、自然石の洞窟に鉄格子の扉が取り付けてある牢の中だ。 「あ、シスター・プリス、気がついたかい」 声がし
もっと読む霧と太陽のジュネス 世界の章
“世界の章” 保健室での微睡みは、いつも温かくて心地よかった。 「ゆっくり……そう、ゆっくり力を抜いて。目を閉じて。どんどん楽になっていくから。ワタシの声しか聞こえない。あなたとワタシの二人っきり。とても幸せよね?」
もっと読む霧と太陽のジュネス 社会科準備室の章
“社会科準備室の章” 「来て…タイヨウ…」 マナが僕の前で足を開き、濡れたアソコをあらわにする。 トロトロになった彼女のアソコは、いつ見ても可愛い。僕は彼女の求めに応じて、熱い蜜壷に腰を沈めていく。 「んっ」 狭い
もっと読む霧と太陽のジュネス 保健室の章
“保健室の章” 行為を終えた僕らは、小さなテーブルに向かい合って、マナの買ってきた弁当を食べる。 でも今日も、最後まで食べきらないうちに、僕の胃は苦しくなってくる。 「ごちそうさま?」 マナが覗き込むように顔を近づ
もっと読む霧と太陽のジュネス 生徒会室の章
“生徒会室の章” こうして僕は、無投票で生徒会長に当確した。 「そんな気はしてたけどな」 キリヤは、今日から僕が主となった生徒会室で、最近お気に入りの1年生にしゃぶらせながら、大きなアクビした。 「……神聖な生徒会室
もっと読む霧と太陽のジュネス 教室の章
“教室の章” 大破したベンツから僕は降りる。 頭がクラクラして、足元がよく見えない。 でも、やるべきことは全て頭に入っていた。 先日廃業したばかりのファミレスの窓は無惨にも粉々になり、衝突のすさまじさを物語る。
もっと読む霧と太陽のジュネス 図書室の章
“図書室の章” 「もしも世界を好きなように操れるとしたら、お前ならどうする?」 放課後の図書室で、ハードカバーの冒険小説を読んでいたら、いきなり魔法使いみたいな謎かけをぶつけられた。 びっくりして顔を上げると、同じク
もっと読むダンジョンマスターの日記帳 4ページ
4ページ 獅子の月 24の日 古人曰く、勝利欲する者、敵を見よ、己を見よ、天を見よ、地を見よ。 簡単に言えば、勝ちたいならすべての情報を集めよということだ。 目的の村を、ガービィを使って偵察する。 面白い者を見つ
もっと読むダンジョンマスターの日記帳 3ページ
3ページ 獅子の月 19の日 今回の狩はなかなか有意義であった。 まず、別荘。 近くに野生馬の群れがいる草原があるので、食糧問題も大幅に改善される。 うちに帰って早速、“空間連結”の儀式を行い、すぐに行き来が出来
もっと読むダンジョンマスターの日記帳 2ページ
2ページ レッドソニアは、いらいらしながら牢内を歩き回っていた。 あの憎むべき魔道士が、自分を捉え連日にわたり陵辱を加えていたあの男が、食料調達に行くといって鎖をはずしたきり、顔を見せないのだ。 一日目は疲労と心労
もっと読むダンジョンマスターの日記帳 1ページ
1ページ 獅子の月4の日 地下迷宮一応完成。 まだまだ細かいところに手を加える必要はあろうが、当分はこれでよい。 これで私も一国一城の主、ダンジョンマスターだ。 これを機に日記をつけることにする。 明日は奴隷の
もっと読む星辰の巫女たち 第22話
第22話 法王は王宮の一室をあてがわれた。幸い部屋は広く、十分な食事もあり、聖典を所望したらあっさり受け入れられた。 彼女はロザリオを肌身離さず、聖典を読み返して時間を過ごすことにする。 1日目。 「――ふ、ふざけ
もっと読む星辰の巫女たち 第21話
第21話 法王は驚いて玉座から立ち上がった。 爆発音がした。もしや、敵襲? 法王の間で彼女は固唾を飲んで待つ。 と、法王の間の扉の前のベルが鳴った。 「ステラ=マリです。猊下、ただいま戻りました」 「!」 ステ
もっと読む星辰の巫女たち 第20話
第20話 アールマティ大聖堂。その上層にあたしの部屋はある。 あたしはテーブルの上に顔を伏せ、うなだれていた。 はぁ。 どうしてあたしばっかりこんな役回りなのよ。 あたしの気だるくて色っぽい溜息が漏れた。 こ
もっと読む星辰の巫女たち 第19話
第19話 エルフは森の中でひっそりと暮らす種族だ。レン西方の大森林最深部には、大陸最大のエルフの隠れ里がある。 が、なくなった。 魔物の軍勢が現れ、一夜にしてこの里を蹂躙尽くしたのだった。 光の術に長けたエルフた
もっと読む星辰の巫女たち 第18話
第18話 空は、いつの間にか暗雲に包まれていた。 レン首都の町はずれ。リーゼロッテは長年慣れ親しんだ生家の庭で、敵と対峙していた。 「タローマティだと……!」 目の前に現れた悪魔が名乗った名に、彼女は驚きを隠せない
もっと読む神様のアドレス帳 後編
後編 (思った以上の効果だ。これは・・・、いよいよ本当に、神様のアドレス帳なんじゃないか?) 今朝から徐々にメールの効果を確かめてはいるつもりでも、生駒さんは中條課長の変貌振りにはひっくり返ってしまった。 今、生駒さ
もっと読む神様のアドレス帳 前編
前編 生駒課長補佐はここ数ヶ月、悩みを抱えていた。 職場に馴染めない。新しい環境に適応出来ない。 それは社会人にとって決して珍しい悩みではない。むしろ、よくある悩みと言える。 しかしだからといって、生駒課長補佐の
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